ピロリ菌の検査、尿素呼気試験とはどのような検査なのか

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、私たちの胃に感染して様々な疾患を引き起こします。

衛生環境の改善に伴い、近年日本人のピロリ菌感染者は少なくなっていますが、いまだ感染者は多く、おおよそ3600万人の日本人がピロリ菌に感染していると報告されています。

胃にピロリ菌が住み着いた状態が続くと、胃癌のような命に関わる疾患が生じる事もあります。

そのためピロリ菌に感染している方は、出来るだけ早期にピロリ菌感染に気付き、除菌する必要があります。

ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる簡単な検査として、「尿素呼気試験(UBT)」という検方法があります。

胃カメラなどを行わなくても、外来で簡単に行え、またある程度の精度を持つ優れた検査です。

尿素呼気試験とは、どのような試験なのでしょうか。

ここでは尿素呼気試験について詳しく紹介します。

1.尿素呼気試験とは

尿素呼気試験(UBT:Urea Breath Test)とは、どのように検査方法なのでしょうか。

尿素呼気試験は、特殊な標識をされている尿素を服用してもらい、一定時間経ってから息を吐いて、その息に標識された二酸化炭素が含まれているかどうかを見る検査になります。

標識された二酸化炭素が検出されれば検査結果は陽性となり、ピロリ菌感染の可能性が高くなります。

これはどのような機序なのでしょうか。

ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を持っており、この酵素を分泌するという特徴があります。そして尿素呼気試験はピロリ菌がウレアーゼを分泌する事を着目した試験です。

ウレアーゼがどのような酵素なのかというと、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素です。ピロリ菌は胃に存在する尿素からアルカリ性のアンモニアを作り出す事で、酸性の胃酸を中和し、酸性環境下の胃でも生き続ける事が出来ます。

という事は胃にピロリ菌がいるのであれば、尿素を投与すればアンモニアと二酸化炭素が作られるわけで、特殊に標識した尿素を服用した後、その標識を持つ二酸化炭素が出てくれば、ピロリ菌が存在する可能性は高いという事が出来ます。

ここを利用したのが尿素呼気試験です。

尿素呼気試験では、試験前に「ユービット錠」というお薬を服用します。ユービットは尿素なのですが、尿素中の炭素(C)が標識されています(13-C)。

ユービットを服用した後、しばらくして息を吐き、その息に含まれる二酸化炭素を調べます。

もしピロリ菌が存在するのであれば、ユービットに含まれる尿素が分解されて二酸化炭素が出来ますから、標識された炭素(13-C)を含んだ二酸化炭素が出てくるはずです。

これが尿素呼気試験の機序になります。

ちなみに口の中にもウレアーゼを分泌する細菌は存在しているため、普通に尿素を服用すると、これら口腔内の細菌が尿素を分解してしまうのですが、ユービットは口腔内では溶けず、胃の中に入って初めて溶ける構造をしているため、口の中の細菌のせいで検査結果がおかしくなってしまう事はありません。

ピロリ菌の検査にはいくつかの方法があります。尿素呼気試験の他にも、

  • 血液検査
  • 内視鏡(胃カメラ)検査

などが代表的です。

この中で尿素呼気試験の位置づけはどのようになっているのでしょうか。

尿素呼気試験は、

  • 外来で簡単に行えて
  • 精度もある程度高い

というバランスの良い検査方法であり、このため臨床でも良く用いられています。

もっとも精度が高い検査はやはり内視鏡検査です。胃カメラで直接胃をみて、胃粘膜の一部を採取し、ピロリ菌がいるかどうか調べる。これが一番精度が高い事は間違いありませんが、胃カメラは患者さんへの負担も大きく、また胃カメラを常備しているクリニック・病院でないと受ける事が出来ません。

対して尿素呼気試験は外来で簡単に受ける事が出来る検査なのです。

ユービットを用いた尿素呼気試験の精度については、

  • 感度 97.7%
  • 特異度 98.4%
  • 正診率 98.0%

と報告されており、高い精度を持ちます。

感度とは「ピロリ菌が存在する場合に、陽性と判定する率」の事で、特異度は「ピロリ菌が存在しない場合に、陰性と判定する率」の事です。

2.尿素呼気試験のやり方

尿素呼気試験は内科外来で簡単に行う事が出来ます。

検査時間はすべてを入れて30分ほどかかります。クリニックに分析装置があれば即日で結果が分かりますが、外注しているクリニックの場合は結果が出るまでに数日かかる事もあります。

その手順を紹介します。

Ⅰ.検査は空腹時に行う

検査は空腹時に行う必要があります。

これは胃に何もない状態の方が、正確に測定できるからです。検査前は喫煙なども控えるようにしましょう。

なお、水分を取るのは構いません。

Ⅱ.検査前の呼気を採取する

検査を始める前に、ビニールのような袋に息を吐き出してもらい、呼気を採取します。

検査後にも同様にビニールに息を吐いてもらうのですが、これと比較するためです。

Ⅱ.標識された尿素を服用する

標識された尿素を服用します。

ユービット錠がよく用いられ、水100mlとともに飲み込んでください。

口の中にもウレアーゼを分泌する細菌がいるため、ユービットは素早く飲み込む必要があります(添付文書的には「5秒以内に飲み込む」と書かれています)。

注意点としてユービットは口の中では溶けずに胃で溶けるようにコーティングされている錠剤のため、噛んではいけません。

Ⅲ.左側臥位で5分待ち、その後15分座って待つ

尿素を服用したら、左向きに5分間横になります。

その後は起き上がり、15分座位(椅子に座った姿勢)で待ちます。

これは向きを変える事で、胃全体に尿素がいきわたるようにするためです。

Ⅳ.服用20分後に呼気を採取する

Ⅱ.でも行った呼気の採取をもう一度行います。

ビニール袋のようなものに息を吐きだしてもらい、その息に含まれる二酸化炭素を調べます。

Ⅱ.とⅣ.の呼気中の二酸化炭素のうち、標識された二酸化炭素(13-CO2)の差を分析装置で測定します。

この差が大きい場合(2.5‰以上)は、ピロリ菌の感染が疑われます。

3.尿素呼気試験を行う際の注意点

尿素呼気試験は、外来で簡単に行える検査ですが、注意点がいくつかあります。

この注意点は検査前に医師から説明を受けると思いますが、一応自身でもチェックしておきましょう。

Ⅰ.空腹時に測定しましょう

病院に突然やってきて「ピロリ菌の検査をして下さい」という方もいらっしゃるのですが、尿素呼気検査は空腹時に行う事が推奨されています。

食後などに測定すると精度が落ちる可能性がありますので、食事を取らずに来院してください。

Ⅱ.胃薬・抗生剤などを服用している方は注意

プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる胃酸の分泌を抑えるお薬や抗生物質などを服用していると本来ピロリ菌がいても検査が陰性になってしまう事があります(これを偽陰性と呼びます)。

次のようなお薬を服用している場合は、これらのお薬を一旦中止してから尿素呼気試験をする必要があります。

出来ればお薬を中止して2週間以上経ってからの検査が推奨されています。

【プロトンポンプ阻害薬】

【抗生物質】

  • サワシリン(一般名:アモキシシリン水和物)
  • クラリス(一般名:クラリスロマイシン)
  • アクロマイシン(一般名:テトラサイクリン)

【その他】

4.尿素呼気試験で陽性になったら

尿素呼気試験で陽性と判定されたらどうすればいいでしょうか。

ピロリ菌感染の可能性が高い状態だと考えられますので消化器内科を受診し、内視鏡検査(胃カメラ)を行う必要があります。

これは内視鏡検査で再度ピロリ菌の感染の有無を再確認をすることと、現時点で胃に潰瘍やガンなどが発生していないかを確認する意味があります。

内視鏡検査の結果に応じて治療方針は異なりますが、いずれにせよ行われるのはピロリ菌の除菌になります。

除菌療法については別の記事で詳しく説明します。

4.尿素呼気試験はどのくらいの費用がかかるのか

尿素呼気試験を保険診療で行うとどれくらいの費用がかかるのでしょうか。

診療報酬は1点10円で計算されますが、

  • 尿素呼気試験検査料 70点
  • 微生物学的検査判断料 150点
  • ユービット錠100mg 2825.70円

で計5025.7円になります。

ただし、検査を行う前には必ず診察を受けなくてはいけません。

これに初診料あるいは再診料なども加わるため、計7,000~8,000円程度になりますが、保険適応となる場合は、この3割負担(高齢者は原則1割)になります。

尿素呼気試験は先に内視鏡検査を行ってピロリ菌の感染を確認していないと保険適応になりません。保険適応にならない場合は、自費になりますので、7,000~8,000円がそのままかかります。

ちなみに自宅でピロリ菌の検査を出来るキットも同じくらいの値段で販売されていますので、自費になってしまうような方は、このような検査キットを購入するのも一手です。

ちなみに自宅検査は尿素呼気試験ではなく、

  • 血液検査で判定する検査
  • 尿検査で判定する検査

になります。

これらは尿素呼気試験と比べるとやや精度は下がりますが、有効な検査法である事に変わりはありません。

▽ 自宅で血液検査でピロリ菌感染をチェックする

▽ 自宅で尿検査でピロリ菌感染をチェックする

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