うっ血性皮膚炎(うっ滞性皮膚炎)の原因と治療法

うっ血性皮膚炎(stasis dermatitis)は、ある部位で血液の流れが停滞してしまう事で生じる皮膚炎で、「うっ滞性皮膚炎」とも呼ばれます。

うっ血性皮膚炎は下肢に生じる事がほとんどですが通常、心臓から拍出された血液は動脈を通って足の先端にまで行き、静脈を通って心臓に戻ってきます。この通路が何らかの理由で障害され、下肢に血液が溜まってしまうのがうっ血性皮膚炎です。

長期に渡って血液が下肢に停滞してしまうと、足がむくむだけでなく様々な症状が現れます。

ここではうっ血性皮膚炎という疾患について、その原因や治療法などを詳しく紹介させて頂きます。

1.うっ血性皮膚炎とは

うっ血性皮膚炎(stasis dermatitis)は、血液のうっ滞(うっ血)によって生じる皮膚炎です。

通常、血液は心臓から拍出されると動脈を通って四肢や頭部などの身体の先端に流れていき、先端まで行き各臓器に栄養を渡し終わると静脈を通って心臓に戻ってきます。

この血液の流れがどこかで障害されてしまうと、その部位にうっ滞が生じます。うっ滞というのは血液の流れが停滞してその部位に溜まってしまう事です。うっ滞は主に血流の遅い静脈で生じます。

特にうっ滞が生じやすいのが下肢です。下肢は心臓よりも下にあるため、下肢から心臓に血液が戻るためには重力の関係上、多くの力を必要とします。

そのため下肢はちょっとした事でうっ滞が生じやすいのです。

うっ滞は下肢の中でも特に、

  • 下腿の下側1/3
  • 内外の踝(くるぶし)の上

に生じやすい傾向があります。

また、うっ血性皮膚炎を生じやすい人というのも、

  • 立ち仕事が多い方
  • 肥満の方

など、血液が身体の下側に溜まりやすい素因のある方になります(これらの素因のある方ではなぜ血液が下に溜まりやすいのかは後述します)。

症状としては、下肢に血液が溜まるため、むくみ(浮腫)が発症し、これにより下肢が重くなったり冷たくなったりします。痛みを感じる事もあります。

うっ血が長期にわたると、皮膚に赤血球の成分が沈着してしまって褐色調・黒色調になったり、むくみで皮膚細胞が弱ってしまい、ばい菌に感染しやすくなったり、ちょっとした刺激で潰瘍ができてしまいやすい状態になってしまいます。

2.うっ血性皮膚炎の原因と生じやすい人

うっ血性皮膚炎はどのような原因で生じるのでしょうか。

うっ血性皮膚炎は、血液の流れが停滞してしまう事で生じます。では血液の流れが停滞してしまう原因にはどのようなものがあるでしょうか。

一番分かりやすいのが血栓が静脈で詰まってしまう事です。不整脈(心房細動)などで生じた血栓が飛んで静脈で詰まってしまうと、その部位にうっ血が生じます(このような状態を「静脈塞栓症」と呼びます)。

ただしこのような血栓で生じる急激な血液の停滞は、症状も激しいため、すぐに病院に搬送されて治療が始まります。また生じる頻度としても多くはありません。

日常でよく見かけるのは血栓のような急激な発症ではなく、緩やかに発症する血液の停滞になります。

うっ血性皮膚炎を生じる代表的な原因としては、

  • 下肢静脈瘤
  • 立ち仕事
  • 肥満
  • 妊婦さん

などが挙げられます。

下肢静脈瘤というのは、下肢に生じる静脈のコブのようなもので、下肢の静脈の血流が不良だと静脈に圧がかかって生じやすくなります。そして静脈瘤によってより血流が悪くなってしまいうっ血性皮膚炎もより生じやすくなってしまいます。

立ち仕事をしている時間が長い方もうっ血性皮膚炎を生じやすくなります。これは下肢が心臓よりも低い位置で過ごす時間が長いため、下肢の血液が心臓に戻りにくい状態が多くなるためです。

肥満の方もうっ滞性皮膚炎を生じやすくなります。これは体重が多い事で下肢にかかる圧力が高くなるのと、脂肪によって静脈が潰れやすくなってしまうためうっ滞のリスクが上がるためです。同様の理由で妊婦さんもうっ滞性皮膚炎を生じやすくなります。

また、元々むくみを生じやすいような疾患を持っている方もうっ血性皮膚炎を生じやすくなります。

具体的には、

  • 心不全
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害
  • 甲状腺機能低下症
  • 低栄養

などの疾患をお持ちの方が挙げられます。

心不全は心臓のはたらきが低下してしまう病態です。心臓は全身に血液を送り出すはたらきをしますが、心不全で十分に血液を送り出せなくなってしまうと、送り出されない血液は次第に静脈に停滞していく事になり、むくみの原因となります。

肝臓には門脈という静脈が入っていきますが、肝硬変などで肝臓が硬化してしまうと門脈に血液が入りずらくなります。すると同じく静脈に血液が停滞してしまいます。また肝臓はアルブミンというたんぱく質を作っているため肝臓の機能が低下するとアルブミンも作られにくくなります。たんぱく質が低下すると浸透圧の関係でむくみが生じやすくなるため、これもむくみの一因になります。

腎臓は尿を作るはたらきがあります。腎臓のはたらきが低下すると尿を十分に作れなくなるため、身体に余分な水分が溜まってしまう事となり、これもむくみの原因となります。

甲状腺機能低下症は、代謝を亢進するホルモンである甲状腺ホルモンが低下してしまう疾患です。甲状腺機能低下症で生じるむくみは水分が原因ではありませんが、むくみによって静脈が圧迫されてしまうため、血液がうっ滞しやすくなります。

食事を十分とらなかったりと低栄養状態になると身体のたんぱく質が低下します。先ほども説明したようにたんぱく質が少なくなると浸透圧の関係でむくみが生じやすくなります。

3.うっ血性皮膚炎の症状

うっ血性皮膚炎では、どのような症状が認められるのでしょうか。

うっ血性皮膚炎は下肢で血液が停滞してしまう疾患です。血液はそのほとんどが水分ですので停滞すればその部位はむくみはじめます。

そのためまず生じる症状は「浮腫’(むくみ)」になります。

浮腫が生じると、

  • 足が重く感じる
  • 足が冷たく感じる
  • 足に痛みを感じる

などの症状も生じる事があります。

浮腫が続くと、その部位が水浸しになっている状態が続くため、その部位の皮膚細胞が十分に機能できなくなります。すると皮膚のバリア機能が失われ、感染しやすくなったり、ちょっとぶつけただけで潰瘍ができてしまったりするようになります。

また停滞している血液の成分が皮膚に沈着するため、皮膚が褐色調・黒色調になってしまったり皮膚表面がテカテカした感じになってしまう事もあります。

更に長期間うっ血性皮膚炎の状態が続くと、皮膚の免疫系(身体がばい菌と闘うためのシステム)が誤作動を起こし、アレルギー性皮膚炎に進行する事もあります。

4.うっ血性皮膚炎の治療法

うっ血性皮膚炎が生じてしまったら、どのように治療すれば良いでしょうか。

まず大切なのはうっ滞しやすい状態を作らない事になります。立ち仕事が多かったり肥満傾向であれば重力の関係上、下肢に血液が溜まりやすくなるのは自然の現象です。

そのため、このような方は、

  • ダイエットをする
  • こまめに休憩を取り足を挙げる

などといった生活の工夫をするようにしましょう。これだけでもむくみが大分改善します。そしてむくみが改善すればうっ血性皮膚炎の症状も良くなります。

また元々むくみやすい基礎疾患をお持ちの方(心不全、肝機能障害、腎機能障害、甲状腺機能低下症、低栄養など)は、原疾患の治療を行うことで改善が得られる場合もあります。

足の静脈の血流を良くするために、足を適度に締め付ける「弾性ストッキング」を着用する事も大切です。

下肢静脈瘤がうっ血の原因である場合には、これらに加えて静脈瘤に対する手術を行う事もあります(静脈瘤硬化術・結紮術・抜去術など)。

うっ血性皮膚炎を治療するお薬もあります。

使用されるお薬としては、

  • むくみを改善させるお薬
  • 皮膚炎を改善させるお薬

の2つがあります。

むくみを改善させるお薬は、外用剤と飲み薬があります。

外用薬(塗り薬)としては、血流を増やす作用のある塗り薬が使われる事があります。

例えば、

などが用いられる事があります。これらのお薬は皮膚に塗る事で皮膚近くを走っている血管の血流を改善させる作用があります。ただしその作用は穏やかですので、劇的な改善は望めません。

むくみがなかなか改善しない場合は、飲み薬として利尿剤を用いる事もあります。利尿剤は尿量を増やすお薬で、身体から水分を出すはたらきがあるため、うっ血を改善させる効果が期待できます。

ただしうっ血性皮膚炎に対しての利尿剤の使用は慎重に行うべきです。なぜならばうっ血性皮膚炎の場合、必ずしも身体の水分が多すぎて生じているわけではなく、血液の流れが悪いから生じている事が多いからです。

身体の水分量が多くないのに安易に利尿剤で水を引いてしまうと脱水になってしまうリスクもあります。

皮膚炎を改善させるお薬としては、

  • ステロイド外用剤

を用いる事があります。ステロイドには炎症を抑える作用があるため、炎症で生じている症状(発赤、熱感、腫脹、疼痛)を抑える事が出来ますので、皮膚の腫れや痛みを抑える事が期待できます。

またアレルギー性皮膚炎に進行してしまった際も、アレルギー反応を抑える作用も期待できます。

ただしステロイドはうっ血の原因そのものを治しているわけではなく、あくまでもうっ血の結果生じた皮膚炎を落ち着かせているにすぎない事は理解しておく必要があります。

根本のうっ血を治さずに漫然とステロイドを塗り続けていると、最初はいいのですが、次第にステロイドの副作用(ばい菌感染に弱くなる、皮膚が薄くなるなど)に苦しむ事になります。

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