強い日差しで生じる日光皮膚炎の対策と治療法

日光皮膚炎(にっこうひふえん:Solar Dermatitis)は、紫外線によって皮膚が炎症を起こしてしまう疾患です。特に日差し(紫外線)の強い夏に多く認められます。

軽い日光皮膚炎であれば自然と治る事もあります。しかし紫外線によって重度の皮膚炎が生じてしまうと表皮が破れてしまったり(表皮剥離)、水膨れ(水泡)ができたり、痛みが生じたり感染症の原因にもなってしまいます。

ここでは日光皮膚炎について、日光(紫外線)が皮膚炎を引き起こすメカニズムと、その対策・治療法について詳しく説明させて頂きます。

1.日光皮膚炎とは

日光皮膚炎とはどのような疾患なのでしょうか。

日光皮膚炎(にっこうひふえん)は皮膚疾患の一つで、その名の通り日光が原因で皮膚が炎症を起こしてしまう疾患です。

日光皮膚炎は日光によって皮膚が炎症を起こしてしまっている状態ですので、

  • 皮膚が赤くなり、痛む
  • 皮膚がめくれてしまい、浸出液が出てくる
  • 水泡(みずぶくれ)が出来てしまう

などの所見が認められます。

更に問題はこれだけではありません。

皮膚は、私たちの身体の中に異物が侵入してこないようにバリアのはたらきもしています。皮膚炎によってこのバリア機能が失われてしまうと、そこからばい菌が侵入してしまい、二次的に皮膚感染症を引き起こすリスクもあります。

日光には様々な波長の光が含まれていますが、そのすべての光が皮膚に炎症を引き起こすわけではありません。日光皮膚炎の原因になるのは、主に紫外線(UV:Ultra-Violet)と呼ばれる非常に短い波長の光になります。

紫外線は皮膚を障害する事で皮膚炎を生じさせます。また表皮細胞のDNAを損傷する事で皮膚がんなどを発症しやすくする事も指摘されています。

日光は日々降り注いでいるものですから、日光皮膚炎は何よりも予防が大切になります。必要以上に紫外線を浴びないように服や帽子、日傘などを利用するほか、サンスクリーン剤(いわゆる日焼け止め)を利用する事も効果的です。

日光皮膚炎が生じてしまった際の治療法は、皮膚炎の程度により異なります。

軽度の炎症が一部にのみ生じているのにであれば、患部を冷やす程度で改善が得られる事もありますが、炎症に程度によっては炎症を抑える作用を持つステロイド外用剤などが用いられる事もあります。

また表皮がめくれてしまったり、水泡ができて破れてしまったりという場合には、皮膚の形成を促すようなお薬を使用する事もありますし、そこから細菌などの病原体が侵入する可能性もありますので、抗生剤などを使って感染予防をする事もあります。

2.日焼けと日光皮膚炎は違うの?

日光皮膚炎と似ている状態に「日焼け」があります。両者を同じものだと思っている方も多いのではないでしょうか。

おおまかな意味合いとしては両者を同じだと考えても問題はありません。しかし正確に言うと日光皮膚炎と日焼けは異なります。

では両者はどのように異なるのでしょうか。

日光皮膚炎は日光によって皮膚が炎症を起こす事です。これは「サンバーン(Sun Burn)」と呼ばれます。

炎症というのは細胞が何らかの原因によってダメージを受ける事で、

  • 発赤(赤くなる)
  • 熱感(熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛む)

といった症状を引き起こす状態です。日光皮膚炎であれば紫外線が原因で表皮細胞にこのような症状が認められる事です。

対して日焼けは皮膚が黒く変色する事です。これは「サンタン(Sun Tan」」と呼ばれます。

日焼けは、日光の刺激によって表皮に存在するメラノサイト(色素細胞)がメラニンという黒い色素を生成する事で生じます。メラニンは紫外線を吸収するはたらきがありますので、表皮のメラニンが増えると紫外線が皮膚より奥に届きにくくなり、内臓が紫外線によってダメージを受けにくくなるのです。

日光を浴びると、「メラニンをたくさん作って身体を守らなくては!」と身体は考えるため、このような日焼け(サンタン)が生じるのです。そして、日焼け(サンタン)は必ずしも炎症は伴いません。

ちなみに紫外線には、波長の長いものからUVA、UVB、UVCの3種類があります。波長が短いほど地上にまで到達しにくくなりますが、身体に対するダメージは強くなります。

このうちUVCは波長が短すぎるため地上にまで届きませんので、私たちが受ける紫外線は主にUVAとUVBになります。

このうち日光皮膚炎(サンバーン)は主にUVBが原因で生じます。波長が短いため、表皮細胞に対する刺激が強く、炎症を引き起こしてしまうのです。

一方で日焼け(サンタン)は主にUVAが原因で生じます。波長が長いため炎症はあまり引き起こさないものの、メラノサイトを刺激するために日焼けを生じさせます。

3.日光皮膚炎の原因

日光皮膚炎はどのような原因で生じるのでしょうか。

日光皮膚炎は日光に含まれる「紫外線」によって皮膚が炎症を起こしてしまう疾患です。紫外線の中でもUVB(Ultra-Violet-B)が原因になります。

ではこの紫外線について詳しくみてみましょう。

日光には様々な波長の光が含まれています。波長の短いものから順に、

  • 紫外線(波長:~380nm)
  • 可視光線(波長:380~750nm)
  • 赤外線(波長:750nm~)

と呼ばれています。

可視光線(かしこうせん)は、私たちの目で見える波長の光です。可視光線を波長の短い順に並べると、

紫色:380~450nm
青色:450~495nm
緑色:495~570nm
黄色:570~590nm
橙色:590~620nm
赤色:620~750nm

となります。

紫外線というのは、可視光線の中でもっとも短い波長である「紫色」の外側にある波長だという意味になります。

反対に赤外線というのは、可視光線の中でもっとも長い波長である「赤色」の外側にある波長だという意味になります。

光線というのは波長が短いほど遠くまで届きにくく、かつ身体に対する害が大きいと考えられています。

例えば最近話題となっている「ブルーライト」がありますが、これは紫色光(380~450nm)・青色光(450~495nm)の可視光線の事です。紫外線と比べれば波長は長いものの、可視光線の中では波長は短い事が分かります。

ブルーライトは網膜にダメージを与えたり、睡眠・精神に悪影響をきたす事が報告されていますね。ここからも波長の短い光線は身体に害をきたしやすい事が分かります。

そして光線の中でもっとも身体に対して害が大きいのが「紫外線」です。

紫外線には、

  • UVC(Ultra-Violet-C):波長200~280nm
  • UVB(Ultra-Violet-B):波長280~315nm
  • UVA(Ultra-Violet-A):波長315~380nm

の3種類があります。ちなみにUVA、UVB、UVCは「近紫外線」と呼ばれており、更に波長が短いものは「遠紫外線」と呼ばれています。遠紫外線は身体に強い障害をもたらしますが、波長が極めて短いため地上には到達しませんので実際に問題となる事はありません。

近紫外線の中ではUVCがもっとも波長が短く身体に害が大きいのですが、UVCもほとんど地上にまで届きませんので実際は私たちに害を与える事はありません。

UVBは日差しの強い日だと地上に届きます。そのため日差しの強い夏に海などで服を着ずに過ごしているとUVBが皮膚細胞を刺激し、皮膚炎が生じてしまうのです。

ちなみにUVAは日差しの弱い日でも地上に届いており、激しい炎症は起こさないものの、日焼けやシミ、皮膚の老化の原因となります。女性が日差しに関わらずサンスクリーン剤(日焼け止め)を塗るのは、主にこのUVAをシャットアウトするためなのです。

【日光皮膚炎が生じる原因】
・紫外線の中のUVB(Ultra-Violet-B)が、皮膚細胞を刺激し、炎症を引き起こす事が原因

4.日光皮膚炎の症状

日光皮膚炎ではどのような症状が認められるのでしょうか。

日光皮膚炎は日光(紫外線)によって生じる皮膚炎です。原因は紫外線ですが、生じる症状としては皮膚炎になり、紫外線以外の原因で引き起こされる皮膚炎と共通しています。

皮膚炎とは皮膚の炎症です。

炎症というのは細胞がダメージを受ける事で、

  • 発赤(赤くなる)
  • 熱感(熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛む)

といった症状を引き起こす状態です。

そのため皮膚炎では、

  • 皮膚が赤くなる
  • 皮膚が熱くなる
  • 皮膚が腫れる
  • 皮膚がヒリヒリと痛む

といった症状が生じます。

更に炎症が強くなると熱傷(やけど)様になる事もあります。

すると、

  • 表皮が破壊されて剥がれる(表皮剥離)
  • 表皮が破壊される事で、その下の真皮が露出し浸出液が出る
  • 水ぶくれ(水疱)が出来る
  • 表皮のバリア機能が失われるため、細菌が皮膚内に侵入してしまう

などが生じる事もあります。

これらの症状は紫外線を浴びてから徐々に出現し、約12~24時間後に症状はピークになります。その後徐々に落ち着き、数日経つと強い炎症所見はなくなっていきます。

【日光皮膚炎の症状】

・皮膚に炎症(発赤、熱感、腫脹、疼痛)が生じる
・更に表皮剥離や水疱形成などが生じる事もある
・表皮のバリア機能が失われると細菌などに感染しやすくなる

5.日光皮膚炎の予防・治療法

日光皮膚炎はどのように治療すれば良いのでしょうか。

まず、日光皮膚炎の場合何よりも大切なのは「予防」になります。

日光皮膚炎はその原因が明らかで、日光(紫外線)を浴びている事で発症しています。逆に言えば紫外線が皮膚に到達しなければ日光皮膚炎は生じないという事です。

過度に紫外線を浴びすぎないようにし、適度に日陰や屋内で休むようにしましょう。また日光を浴びる時も、出来る範囲で衣服や帽子、サンバイザー、サングラス、日傘など紫外線をカットするものを装着できると良いでしょう。

サンスクリーン剤(いわゆる日焼け止め)を皮膚に塗る事も有効で、紫外線が皮膚細胞を障害するのを防いでくれます。

サンスクリーン剤には「SPF」と「PA」という指標があります。このうち日光皮膚炎の原因になるUVBを遮断する作用を見るのはSPFになります。

SPFとは「Sun Protection Factor」の略で、日光(紫外線)を防御する効果を表しており、数値が高いほど効果も高いという事になります。

SPFは「皮膚が紫外線を浴びて赤くなるまでの時間を何倍遅らせる事が出来るか」という意味です。

通常、何もサンスクリーン剤をつけずに紫外線を浴びると、20分ほどで皮膚は赤くなってきます。SPFが5のサンスクリーン剤を塗るとこれが100分に伸びるという事です。

SPFは10~50ほどの商品が多く、日差しの状況に合わせて使いわけるようにします。

ちなみに、PAというのは「Protection Grade of UVA」の略で、こちらはUVAをどのくらい遮断できるかを表しておりUVBに対する指標ではありません。

サンスクリーン剤は日光皮膚炎の予防にとても有効ですが、汗などで剥がれてしまう事もありますので過信は禁物です。SPFが高いサンスクリーン剤だからといって油断せず、定期的に塗りなおすようにしましょう。

また実際に日光皮膚炎が生じてしまった際は、どのように治療は行われるのでしょうか。

これは程度によって異なります。

皮膚が少し赤みを帯びているくらいであれば、症状も強くはなく、少し経てば自然と改善しますので、このような場合は積極的な治療は必要ありません。患部を冷やす程度で十分でしょう。

炎症がある程度強く、熱感や痛みなどを生じている場合は、炎症を抑える外用剤が用いられる事もあります。

具体的にはステロイド外用剤が炎症を抑える作用を持つため、用いられます。ステロイドにも炎症を抑える強さが強いものから穏やかなものまで様々ありますので、皮膚炎の程度によって適切なものを選ぶ事が大切です。

強い皮膚炎によって表皮がめくれてしまったり、水泡ができて破れてしまったりという場合には、皮膚の形成を促すようなお薬を使用する事もあります。具体的には

  • プロスタンディン
  • アクトシン

などといった創傷治癒を促進するようなお薬が使われることもあります。

また、皮膚のバリア機能が低下しており、そこから細菌などの病原体が侵入する可能性がありそうな場合は抗生剤の外用剤を使って感染予防をする事もあります。

ちなみにこのように皮膚への感染リスクが高い時は上述のステロイド外用剤は用いてはいけません。ステロイドは炎症は抑えてくれますが、感染に弱くしてしまう副作用があるためです。

【日光皮膚炎の予防・治療法】

・日光をなるべく浴びないような工夫を
・服、帽子、サンバイザー、サングラス、日傘などを利用する
・サンスクリーン剤を利用する
・皮膚炎の程度が軽ければ患部冷却程度で良い
・皮膚炎の程度が強ければステロイド外用剤で炎症を抑える
・表皮の剥がれてしまっている場合は表皮の形成を促進するお薬を使う事も
・表皮のバリア機能が失われている時は抗生剤の外用剤を使う事も

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