乾皮症(老人性乾皮症)の原因と治療法

乾皮症(senile xerosis)は、皮膚が乾燥している状態に対して付けられている疾患名になります。皮脂の分泌が少なくなる高齢者に生じやすいため「老人性乾皮症」と呼ばれる事もあります。

乾皮症は激しい症状は認めないものの、皮膚にかゆみや炎症などが生じてしまい生活の質を低下させてしまいます。日常のちょっとした工夫や投薬によって症状を改善させる事ができますので、疾患を正しく理解して正しく対応していく事が大切です。

ここでは乾皮症という疾患について、その原因や治療法などを詳しく紹介していきます。

1.乾皮症とは

乾皮症(senile xerosis)は、皮膚が乾燥している状態に対して付けられている疾患名です。

私たちの皮膚は身体の中に異物が入らないように防御するバリアの役割があったり、触感や温度などの感覚を感じるセンサーのような役割があります。皮膚細胞がこれらの機能を十分に発揮するには、皮膚細胞が十分に潤っている必要があります。細胞に適度な水分がないと、皮膚表面の角質が壊れてしまい、これらのはたらきが十分に行えなくなってしまうのです。

そして皮膚を潤わせる、つまり「保湿」をするために重要なはたらきをしているのが「皮脂」になります。

私たちの皮膚表面は、皮脂腺から出た皮脂というあぶらで覆われていますが、この皮脂は水分を皮膚に閉じ込めておくはたらきがあります。脂と水ははじきあうため、皮膚表面が脂で覆われていれば皮膚表面から水分が蒸発しにくくなるのです。

皮脂は何かと悪者にされがちですが、実はこのように皮膚を適度に保湿するために大切な役割を担っているのです。

しかし皮脂の分泌は40代をピークに減少していく事が知られており、高齢になると十分な皮脂が分泌されなくなります。

皮膚に十分な皮脂が分泌されないと、皮膚表面の水分はどんどん蒸発してしまいます。すると皮膚表面が乾燥しやすくなってしまい乾皮症が発症しやすくなるというわけです。

特に冬場には皮脂の分泌量が減り、また暖房などによって乾燥しやすくなるため、乾皮症も発症しやすくなります。

また乾皮症は体幹よりも四肢(手足)に生じやすく、屈側よりも伸側に生じやすい傾向があります(屈側:手足の曲がる方向に面している側。伸側:手足の伸びる方向に面している側)。

このような傾向から乾皮症は特に高齢者の下腿伸側(スネのあたり)が好発部位になります。

皮膚が乾燥すると、些細な刺激に対して敏感になってしまいます。その結果、些細な刺激でかゆみや炎症が生じやすくなり、患者さんの生活の質を下げてしまいます。

2.乾皮症の原因とは

乾皮症はどのような原因で生じるのでしょうか。

乾皮症の原因は「皮膚の乾燥」です。そして皮膚の乾燥は、皮膚の水分が失われ過ぎている事え生じます。

では皮膚の水分が失われやすくなってしまう原因にはどのようなものがあるでしょうか。

患者さんの個体要因としては、

  • 皮脂の分泌量が少ない(高齢者など)
  • 皮脂をふき取りすぎている
  • 水分摂取量が少ない

などが挙げられます。

皮脂は皮膚表面に分泌される脂(あぶら)ですが、水分を皮膚に閉じ込めるはたらきがあります。皮脂が少なくなれば、水分が閉じ込められずにすぐ蒸発してしまうため皮膚が乾燥しやすくなります。

例えば高齢者の方は皮脂の分泌量が少ないため、乾皮症を生じやすくなります。皮脂の分泌は思春期に増え始め、40代をピークにその後は減少していきます。そのため思春期の方が乾皮症を発症する事はほとんどありません。

高齢でなくても、頻回に顔を洗ったりあぶら取り紙で顔を拭き過ぎてしまうと皮脂が足りなくなり、乾皮症が生じる事があります。

また水分摂取量が少ないと身体全体が脱水状態になり、皮膚も乾燥傾向となります。高齢の方は水分摂取量が少なくなってしまう事があり、このような脱水によって乾皮症が生じている事も少なくありません。

環境的な要因としては、

  • 季節(冬)
  • 湿度が低い場所で過ごす事が多い(暖房の使い過ぎなど)

などが挙げられます。

皮脂の分泌は夏よりも冬の方が少なくなります。これは夏の方が身体の代謝が亢進するので皮脂の分泌も増えるためです。また暖房の使い過ぎなどで湿度が低い部屋に長時間いると水分が皮膚表面から蒸発しやすく、これも乾皮症の原因になります。

乾皮症はこのような原因によって生じます。

以上をまとめると、水分をあまり摂取せず部屋にこもっている事が多い高齢者が冬になると生じるというのが典型的な発症パターンになります。

3.乾皮症の症状はどのようなものがあるか

乾皮症では、どのような症状が認められるのでしょうか。

乾皮症では皮膚表面が乾燥してしまいます。皮膚の最も表面にあるのは「角質」という層ですが、乾燥すると角質層が破壊されやすくなってしまいます。

角質は皮膚を守るバリアのような役割をしているため、破壊されると皮膚の刺激性が亢進してしまいます。これはちょっとした刺激でも皮膚がダメージを受けてしまいやすくなるという事です。

刺激性が亢進する事で生じる、もっとも多い症状はかゆみになります。些細な刺激でかゆみが生じ、かゆみに対して掻く事で更にかゆみが生じるという悪循環が生じる事もあります。

また些細な刺激で皮膚に炎症が生じてしまう事もあります。皮脂が少ない事によって生じる皮膚炎を「皮脂欠乏性皮膚炎」と呼びますが、皮脂欠乏性皮膚炎が生じると皮膚が赤くなったり腫れたり、痛みを感じたりします。

また、皮膚のバリア機能が低下することで、ばい菌などが身体に侵入しやすくなり、感染もしやすくなります。

皮膚表面に生じる変化としては、水分が少ないためカサカサの状態になり、角質表面は剥がれ落ちるようにあります。これを専門的には「落屑(らくせつ)」と呼びます。

落屑(らくせつ)は皮膚が剥がれてしまう事です。古い皮膚が垢(あか)となり剥がれ落ちるのは自然の現象ですが、落屑はこれとは異なります。

落屑は皮膚が本来ならばまだ剥がれないような時期に剥がれてしまう現象なのです。そのため落屑が生じると不十分な皮膚が残る事になり、バリア機能の低下や刺激性の亢進が生じるのです。

4.乾皮症の治療法

乾皮症が生じてしまったら、どのように治療すれば良いでしょうか。

まず大切なのは予防で、皮膚が乾燥しないように注意して生活する事になります。

年を重ねると皮脂の分泌量が少なくなってしまうのは自然現象ですので仕方ありません。そのため足りなくなった皮脂は人工的に補ってあげても良いでしょう。

市販の保湿剤でも良いのですが、医療用の保湿剤としては、

などが保湿作用の高い外用剤になります。

生活の工夫としては、

  • 十分な水分を摂取する事
  • 部屋の湿度を適切に調節する事
  • 暖房を使い過ぎない事
  • 入浴時などに皮膚をこすりすぎない事

などが大切になります。

皮膚が乾燥すると、かゆみが生じます。かゆみが強いと我慢できずに掻いてしまい、掻いた刺激によってよりかゆみがひどくなってしまうという悪循環に陥る事があります。

このようにかゆみがひどい場合は、かゆみ止めのお薬を使う事もあります。かゆみ止めとしてよく用いられるお薬としては抗ヒスタミン薬があります。

具体的には、

などといった抗ヒスタミン薬が用いられます。ただし抗ヒスタミン薬はかゆみは抑えてくれますが、皮膚の乾燥を改善させるわけではない点は注意が必要です。

また、ステロイド外用剤もかゆみや炎症を抑えてくれる作用があるため症状によっては用いられる事があります。ただしステロイドは長期使用すると皮膚を薄くしてしまいかえって乾燥を強めてしまう事がありますので安易な使用は控えるべきです。

ステロイドを使う際は主治医と相談して適応を慎重に見極め、保湿剤と混合して使うなどの工夫をするようにしましょう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする