赤ちゃんの赤いアザ「サーモンパッチ」の原因と対処法

生まれてきたばかりの赤ちゃんの顔を見ると、額(ひたい)や眼瞼(まぶた)に赤いアザがあることがあります。

赤ちゃんの顔のアザに気付くと、

「出産の時に顔を傷付けてしまったのではないか」
「このアザはずっと残ってしまうのか」
「このまま様子をみていてもいいものなのか」

と、親としては色々と心配になってしまうものです。

生まれたばかりの新生児に認められるこの赤いアザは「サーモンパッチ」と呼ばれています。

このサーモンパッチはなぜ生じるのでしょうか、そしてサーモンパッチはどのようなもので何か処置や治療は必要なものなのでしょうか。

ここではサーモンパッチについて詳しく紹介していきます。

1.サーモンパッチとは

まずはサーモンパッチについて、その全体像を説明していきます。

サーモンパッチ(Salmon Patch)は、新生児に認められる赤いアザです。顔の正中部(真ん中)に生じやすく、皮膚の盛り上がりはなく、赤みと正常皮膚との境界が不明瞭であるという特徴があります。

アザの色がサーモン(鮭)の切り身の色に似ていることから、サーモンパッチとも呼ばれていますが、正式な病名は「正中(部)母斑」になります。

母斑(ぼはん)というのは、いわゆる「アザ」の事で皮膚の一部の色調や形態に異常を来たしている状態の事です。

サーモンパッチは珍しいものではなく、新生児の20~30%ほどに認められます。顔の正中部に生じるのが特徴で、

  • 前額部(ひたい)
  • 上眼瞼(まぶた)
  • 眉間
  • 人中(唇と鼻の間の溝)

などが好発部位になります。

顔に赤いアザがあると目立つため、

「ぶつけたのではないか」
「出産の際に顔の皮膚を傷つけてしまったのではないか」

と心配になってしまうかもしれませんが、サーモンパッチの赤みは皮膚をぶつけた事による赤みではありません。

皮膚が赤くなっているのは、その部位の皮膚の毛細血管が増殖しているためです。血液は赤いため、血液が流れている毛細血管も赤く見えます。その毛細血管が顔の一部で増殖してしまっている事で赤いアザのように見えるのです。

そのためサーモンパッチは痛みや苦痛を感じるようなものではなく、自覚症状の全くないアザになります。「赤いアザがあるし、痛いんじゃないか」と心配される方もいらっしゃいますが、そのような症状は全く生じていません。

サーモンパッチは成長とともに自然と改善していく事がほとんどです。早い子だと数週間で消えてしまう事もありますし、遅くても1年も経てば消失します。

2.サーモンパッチが生じる原因とは

生まれたばかりの赤ちゃんの顔に認められる赤いアザを「サーモンパッチ」と呼びます。

このサーモンパッチはどのような原因で生じるのでしょうか。

サーモンパッチは顔面の毛細血管が一部の皮膚で増殖する事で生じます。毛細血管が増殖すればその部位には血液が多く流れるため、赤く見えるというわけです。

ではなぜ毛細血管が顔面皮膚の一部で増殖してしまうのでしょうか。

実はその原因について詳しい事は分かっていません。遺伝の影響や発達・成長の段階での何らかの異常も指摘されていますが、明確な原因は特定されていません。

顔の正中に生じる理由もはっきりしていませんが、このような発症部位の特徴からはやはり成長・発達の過程で何らかの異常が生じたのではないかと考える事が出来ます。

皮膚の毛細血管が増殖しても、大人であったり顔面以外に生じるのであれば、見た目的にはそこまで目立たないのですが、サーモンパッチは赤ちゃんの顔に生じるため赤みが目立ちやすいという面もあります。

顔面は皮膚が薄く、更に赤ちゃんは成人と比べて皮膚が薄いため、赤ちゃんの顔面というのは皮膚が非常に薄い部位になります。そのため皮膚の毛細血管が外から見えやすく、毛細血管が増殖してしまうと赤みが目立ちやすいという側面もあるのです。

【サーモンパッチが生じる原因】

・顔面皮膚の一部の毛細血管が増殖する事で赤みが生じる
・顔面皮膚の毛細血管が増殖する明確な原因については分かっていない
・赤ちゃんの顔の皮膚は非常に薄いため、毛細血管が目立ちやすいという側面もある

3.サーモンパッチはどのようなアザなのか

サーモンパッチは、どのような母斑(アザ)なのでしょうか。また何か困るような症状はあるのでしょうか。

前項でも説明したようにサーモンパッチは皮膚の毛細血管が増殖した結果、赤く見えているものです。毛細血管は身体のいたるところに存在している正常な組織であり、異常なものではありません。

正常な組織によって生じている皮膚の変化ですから、サーモンパッチの部位に痛みやかゆみといった症状が生じる事はありません。

皮膚に赤いアザがあると「ぶつけたのではないか」と心配される親御さんもいらっしゃいますが、サーモンパッチはぶつけたことによって生じる皮膚の赤みとは全く機序が異なります。

皮膚をぶつけると赤くなりますが、これは皮膚細胞が機械的な刺激を受けた事によって損傷し、炎症が生じるためです。

炎症とは、

  • 発赤(赤くなる)
  • 熱感(熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛くなる)

の4つの徴候をきたす状態で、細胞がダメージを受ける事で生じます。

サーモンパッチはこのような炎症ではなく、局所で毛細血管が増殖している事が原因です。その部位にたくさんの血液が流れているから赤くみえているだけで、炎症とは根本的に異なります。

サーモンパッチのアザの特徴としては、

  • 顔面の正中部に生じる
  • 生後すぐ~1週間後くらいに生じる
  • アザの境界は不明瞭
  • 泣いたり興奮したりすると赤みが強くなる
  • 圧迫すると赤みは消える

といった点が挙げられ、この点でもぶつけたりする事によって生じた炎症とは区別できます。

まずサーモンパッチは顔面の正中部(真ん中)近くに生じます。

典型例は「前額部(ひたい)」です。また、それ以外にも眼瞼(まぶた)や眉間、鼻、人中(鼻と唇の間にある溝)などに生じる事もあります。

生まれてからすぐに認められる事もあれば、生後は目立たないけど1週間くらいすると徐々に目立ってくることもあります。

アザの境界が不明瞭です。サーモンパッチは毛細血管が増殖して生じていますが、毛細血管はサーモンパッチの部位だけにあるわけではなく、他の部位ともつながっているため、赤みと正常皮膚との境界がはっきりしないようなアザになります。

赤みの正体は血管ですから、押せば血管がつぶれて赤みは消えます。また泣いたり興奮したりすると血管が怒張して血流が多くなるため、赤みは一時的に増強します。

【サーモンパッチのアザの特徴】

・痛みやかゆみといった自覚症状は認めない
・顔面の正中部に生じる
・生後すぐ~1週間後くらいに生じる
・アザの境界は不明瞭
・泣いたり興奮したりすると赤みが強くなる
・圧迫すると赤みは消える

4.サーモンパッチの対処法・治療法

赤ちゃんの顔にサーモンパッチがある事に気付いたら、どうすればよいのでしょうか。

基本的にサーモンパッチは自然と治っていく疾患です。早い子だと1週間ほどで消えてしまう事もありますし、遅い子でも1年もすれば消えてしまう事がほとんどです。

特に痛みやかゆみといった自覚症状も認めないため、基本的にはサーモンパッチはそのまま様子を見ていて問題ありません。成長とともに薄くなっていき、気付いたらなくなっています。

ただしサーモンパッチを見つけたら、それが本当にサーモンパッチなのかは確認しておく必要があります。判断に迷うようであれば一度小児科などで相談しても良いでしょう。

サーモンパッチで間違いなければそのまま放置しておいて問題ありませんが、サーモンパッチに似た皮膚病変もあるため、そのような疾患であれば治療が必要になる事もあります。

赤ちゃんに生じるサーモンパッチに似たものとしては、

  • 苺状血管腫(乳児血管腫)
  • ポートワイン母斑(単純性血管腫)

などがあります。

苺状血管腫もサーモンパッチと同じく赤ちゃんに認められる赤いアザです。サーモンパッチとの違いとしては、苺状血管腫は皮膚の盛り上がりを伴い、皮膚表面が苺のようにブツブツしています。

ただし苺状血管腫も初期は盛り上がりが乏しい事もあり、サーモンパッチとの見分けがつきにくい事があります。

サーモンパッチは母斑(皮膚の色調・形態異常)に属しますが、苺状血管腫は腫瘍(いわゆるできもの)に属します。

腫瘍と言っても癌のような悪性腫瘍ではなく、身体に悪さはしない良性腫瘍です。サーモンパッチと同じく毛細血管の増殖が原因ですが、毛細血管が腫瘍性に増殖して「血管腫」という形態になります。またサーモンパッチと異なり、顔のみならず身体の至るところに生じます。

苺状血管腫も自然と消えていく事もあるのですが、痕が残ってしまう事もあるため、部位や形状によっては手術やレーザー照射などの治療が行われる事もあります。

ポートワイン母斑は出生時から認められる赤いアザで、サーモンパッチと同じく盛り上がりはありませんが、境界が明瞭である点が異なります。

サーモンパッチと同じく毛細血管の異常増殖が原因なのですが、自然と消えていく事はないため、美容的に気になる場合はレーザー照射が行われます。

また、身体の成長につれて母斑が大きくなったり盛り上がったりしてくる事があるため、診断がついたら早い段階での治療が推奨されます。

ポートワイン母斑自体は良性のものであり、身体に何か害をきたすものではありません。しかしポートワイン母斑であった場合の注意点として、この疾患が認められた場合、背景にスタージ・ウェーバー症候群(Sturge Weber Syndrome)という神経難病が隠れている事があります。

スタージ・ウェーバー症候群は血管腫が皮膚のみならず、脳神経や末梢神経などの神経領域にも出来てしまうため、

  • てんかん
  • 発達障害
  • 運動麻痺
  • 視力障害

などの神経症状が出現する可能性があります。

10万人に1人という珍しい疾患ですが、万が一を考えてしっかりと確認しておく必要があります。

これらの疾患をしっかりと鑑別し、「サーモンパッチで間違いない」と診断されれば、基本的には治療の必要はなくそのまま経過観察となります。

様子をみていれば1年もすれば消失しますし、後遺症などが残る事もありません。

しかし中には1歳を超えてもアザが消失しない方が少数ながらもいらっしゃいます。この場合、サーモンパッチ自体は何も悪さをするものではないため、患者さん自身が気にならないのであればそのまま様子を見る事も出来ますが、「顔」という目立つ部位に生じるため「何とかこのアザを消したい」と」希望される方は少なくありません。

このような場合はレーザー治療が有効です。

レーザー治療とはレーザー光を当てることで、特定の色調の細胞を破壊する治療法です。

レーザー光は様々な波長のものがあり、波長によって吸収されやすい色調が異なります。

赤血球中のヘモグロビンに吸収されやすい波長のレーザー光をサーモンパッチに当てると、レーザー光はヘモグロビンが存在する赤血球に吸収されます。そしてヘモグロビンに吸収されたレーザー光の光エネルギーはそこで熱変換され、毛細血管を破壊します。

このようにレーザー治療はレーザーがあたった部位の細胞すべてを破壊するのではなく、レーザーがあたった部位のうち、そのレーザーの波長を吸収しやすい細胞だけを破壊する事が出来ます。

これによって毛細血管の増殖からなるサーモンパッチを消す事が出来るのです。

実際はターゲットとする毛細血管が皮膚のどのくらいの深さに存在しているのか、大きさはどのくらいなのかによって、用いる波長やレーザーを当てる時間は異なってきます。

またいくら局所を狙って照射するとは言っても、多少正常の皮膚にもダメージを与えてしまうため、治療の際には痛みを伴う事もあります。

レーザーは効果の高い治療法ですが、

  • 何回か通う必要がある事
  • 正常皮膚にも多少のダメージを与えるため、軽い痛みを伴う事がある

がデメリットとして挙げられます。

【サーモンパッチの予防法・治療法】

・サーモンパッチを予防する方法はない。
・ほとんどの場合、1年ほどでサーモンパッチは自然と消失する
・ボートワイン母斑やそれに伴うスタージ・ウェーバー症候群が隠れていないか除外を
・稀にアザが残ってしまう事もあり、気になるようであればレーザー照射が有効

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