尿が紫色だけど大丈夫!?紫色尿バッグ症候群とは

通常、尿は黄色っぽい色をしています。これは尿中に存在する「ウロビリン」という物質が黄色いためです。

身体に何らかの異常が生じると、尿の色が変色する事があります。例えば、尿中に血液が混じっていると尿は赤色になる事があります。また激しい運動後に、筋肉中のミオグロビンがたくさん尿に出るために尿が褐色になる事もあります。

頻度は多くありませんが、尿が「紫色」になる例も報告されています。紫というと何となく毒々しさをイメージされる方も多く、これに気付いた方は大変驚かれます。

尿が紫になる現象は、そのほとんどが尿道カテーテルを留置している方の畜尿バッグに認められます。そのためこの現象は「紫色尿バッグ症候群」とも呼ばれています。

この尿が紫色に変色するという現象は、どのような原因によるものなのでしょうか。またこの状態はそのまま放置していて問題ないのでしょうか。

ここでは尿が紫色に変色する原因とその意味について紹介させて頂きます。

1.なぜ尿が紫色になるのか

まず尿が紫色に変色する現象が、どのような機序によって引き起こされているのかを見てみましょう。

尿が紫に変色するのは、尿道カテーテル(いわゆる尿の管)を留置している方に生じやすい現象です。尿道カテーテルから出た尿が溜まる袋である「畜尿バッグ」が紫色に染まる事から、この現象は「紫色尿バッグ症候群」と呼ばれています。

この紫色の尿は、いくつかの段階を経て形成される事が分かっています。

まず食べ物を食べると、腸管内で食物中のたんぱく質がアミノ酸に分解されます。そしてアミノ酸は主に小腸から体内に吸収されます。

アミノ酸の1つである「トリプトファン」は体内に吸収される一方で、腸管内で腸内細菌によって「インドール」という物質にも分解されます。

ちなみにこのインドールというのは「便臭」の原因になる物質で、大便の特有の臭いはこのインドールが原因になっています。

インドールは便と一緒に腸からも排泄されるのですが、一部は腸管から体内に吸収され、肝臓で「インジカン」という物質になり、尿中からも排泄されます。

そして尿中で繁殖しやすい細菌の中には、このインジカンを分解する能力を持つものがいます。尿中にこのような細菌がいるとインジカンはインジゴブルーとインジルビンという色素に分解されます。

「インジゴブルー」は青色の色素で、「インジルビン」は赤色の色素であり、尿中にこの色素が生成される事によって尿は紫色となるのです。

青と赤が混ざる事で紫になるわけですが、ちなみにこの機序で生じる尿の変色は必ずしも紫色のみではありません。この2つの色素の比率によっては変わり、インジゴブルーが多ければ青色に見える事もあるし、インジルビンが多ければピンク色に見える事もあります。

2.なぜ紫色尿バッグ症候群は生じるのか

尿が紫に変色してしまう機序を見てきました。

紫色尿バッグ症候群を発症している方の尿には、このような事が生じているのです。

ではこの現象が尿道カテーテルを留置している人に起こりやすいのはなぜでしょうか。

前述の機序から紫の尿が生成されるためには、

  1. 腸管内に原因がある(インドールが増える)
  2. 尿中に原因がある(尿中に細菌が多い状態である)

の2つの段階を踏む必要があります。そしてこの両者が合わさった時、尿が紫色になってしまうのです。

尿道カテーテルを留置している方というのは、この2つが生じやすい状態にあるのです。そのため紫色尿バッグ症候群を発症しやすいのだと言えます。

具体的に見ていきましょう。

まず尿道カテーテルを留置している方というのは、何らかの疾患や老衰などによって「自分でトイレに行けない」という状態です。また、そうでなくても尿道カテーテルがジャマで普通に活動できず、活動度は健常時と比べて下がっています。

このような状態にいる方は、身体の活動度が健常の方と比べると極めて低く、寝たきり状態やそれに近い状態の方が多く見られます。

このように身体活動が少ないと、腸管の動きも低下してしまいます。すると便秘になり、腸内細菌のバランスも乱れやすくなります。その結果、インドールが増えやすくなってしまうのです。

また尿道カテーテルという異物を身体に留置していると、このカテーテル内で細菌が繁殖しやすくなるため、細菌感染のリスクが上がります。更に寝たきり状態の方は水分が不足しがちであったり、免疫力(身体がばい菌と闘う力)も低下していたりという事も多いため、これも細菌感染のリスクを上げる原因となります。

以上から、尿道カテーテルを留置している方は紫色尿バッグ症候群を発症しやすいのです。

逆に言えば尿道カテーテルを留置していなくても、この2つの段階を踏むような状態が生じていれば、尿の紫への変色は生じうるという事です。

例えば寝たきり状態で排尿をオムツで行っている高齢者などでも稀に尿が紫色に変色する事があります。このような方は寝たきり状態ですので、胃腸の蠕動運動も低下しており便秘傾向となっています。すると腸内細菌のバランスも崩れ、インドールが生成されやすくなります。

更にオムツの交換を定期的にしっかりと行えていないと、オムツ内で細菌が繁殖してしまうため、オムツ内に排泄された尿はしばらくすると紫色に変色してしまうのです。

3.紫色尿バッグ症候群は治療が必要なのか

紫色尿バッグ症候群が生じる機序を見てきました。最後にこの尿の変色は治療の必要があるのかを考えてみましょう。

尿が紫色なのを放置しておくとまずいのでしょうか。それともそのまま様子をみていて良いものなのでしょうか。

まず尿が紫色なのはインジゴブルーとインジルビンという色素が原因です。そしてこの色素は身体に害を来たすものではありません。

そもそも尿として排泄された後にインジカンがインジゴブルーとインジルビンに分解される事が多いため、変色は尿が体外に出てから生じているもので、体内の尿が紫色になっているわけではありません。

そのため、これ自体を緊急的に治療する必要はありません。

しかし尿中にインジゴブルーとインジルビンが出ているという事は、

  • 腸内細菌のバランスが乱れている
  • 尿中に細菌が増えている

という事を意味しています。そしてこれらの状態を放置してしまう事は身体にとってあまり好ましい事ではありません。

腸内細菌のバランスの乱れは吐き気や嘔吐、便秘や下痢、腹痛などの胃腸症状の原因となります。また尿中の細菌が増えれば尿路感染症を発症するリスクが高くなります。

そのため紫色尿バッグ症候群が生じたら、目先の尿の色に目を奪われるのではなく、

「水分の量が足りないのではないか」
「胃腸の動きは問題ないか。便秘になっていないか」
「尿路感染を起こしかけていないか」

などを見直し、問題点があれば改善させていく必要があります。

これらを改善させる事で尿の色が正常化する事もありますし、何よりも胃腸障害や尿路感染症のリスクを低下させる事が出来ます。

ちなみに尿道バルーンカテーテル留置中の方は、上記問題点を出来る範囲で改善しても尿の色は紫色のままである事もあります。これはインジゴブルーやインジルビンといった色素が少量しか排泄されなくなっても、尿道カテーテルや尿バッグの壁に付着して蓄積されやすいためです。

これは仕方がないため、上記問題点の見直しをした上であれば、そのまま様子をみても問題ありません。

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