パーキンソン病はどのような原因で生じるのか【医師が教えるパーキンソン病のすべて】

パーキンソン病(Parkinson’s disease)は神経の病気の1つです。神経の情報伝達がスムーズに行われなくなり、手足がふるえたり、身体が思うように動かなくなったりといった症状が生じます。

パーキンソン病は国によって難病指定されている「特定疾患」になります。特定疾患の中でも患者さんの数は多く、約1,000人に1人が発症するといわれており、日本内にも約10万人もの患者さんがいると考えられています。

このパーキンソン病、果たしてどのような原因で発症するのでしょうか。

神経の疾患というのはそのメカニズムが難しいものですが、この記事では、パーキンソン病が生じる原因について、現時点で分かっている事を分かりやすく紹介していきたいと思います。

1.パーキンソン病とは?

パーキンソン病(Parkinson’s disease)とはどのような疾患でしょうか。

パーキンソン病は神経に異常が生じる疾患(神経疾患)の1つです。多数の神経が密集している脳のうち、中脳の呼ばれる部位のドーパミンを作る神経(ドーパミン性神経)が変性・減少してしまう疾患になります。

これらの神経は、身体の動きをスムーズにするはたらきを担っていますので、変性・減少すると、

  • 手が震える
  • 身体が固くなる
  • 表情が硬くなる
  • 動きが悪くなる
  • 歩行が小刻みになる

などの症状が現れるようになります。

これがパーキンソン病です。

パーキンソン病は1817年、ロンドンの開業医であったジェームズ・パーキンソン氏が報告した事が始まりです。パーキンソン氏の報告は当時はあまり注目されませんでしたが、その後フランスの神経学者であるジャン・マルタン・シャルコー氏によって広く知られるようになり、最初の報告者の名前をとって「パーキンソン病」と呼ばれるようになりました。

パーキンソン病は1,000人に1人が発症するといわれています。基本的には50~60代で発症する事が多く、年を重ねるにつれて発症率が上がります。

2.パーキンソン病はなぜ生じるのか

パーキンソン病はなぜ生じるのでしょうか。

パーキンソン病が発症する原因というのは、いまだそのすべては解明されていません。

パーキンソン病は国が難病と認定している「特定疾患」です。特定疾患はそもそもが「原因が不明であり、治療法が確立していない疾患」を指しますので、これに該当するパーキンソン病も、原因は不明なのです。

しかし原因が全く分かっていないわけではありません。

パーキンソン病の研究は現在も世界中で活発に行われており、その原因も少しずつ見えてきています。

ここではパーキンソン病を発症する原因について、現時点で分かっている事を紹介させて頂きます。

Ⅰ.中脳黒質のドーパミン性神経の減少

パーキンソン病の原因として分かっている事は、中脳黒質という部位のドーパミン性神経が減少するという事です。

私たちの脳のうち中脳には、「黒質」と呼ばれる部位があります。黒質はドーパミンを作る神経(ドーパミン性神経)が密集している部位です。ドーパミンを作る神経はニューロメラニンという色素を含むため黒くなり、それが密集しているためこの部位は「黒質」と呼ばれています。

中脳で作られたドーパミンはドーパミン性神経によって、同じく脳にある「線条体」という部位に運ばれ、そこで神経伝達物質(神経間で情報を伝える物質)としてはたらきます。

線条体でドーパミンは、身体をスムーズに動かす役割があります。

パーキンソン病は何らかの原因で、中脳黒質のドーパミン性神経が減ってしまう事で生じます。

これらの神経細胞が減少すれば、線条体のドーパミン量も少なくなります。すると神経間での情報伝達がスムーズに行われなくなり、身体をスムーズに動かせなくなってしまうのです。

実際、パーキンソン病の方の脳を見てみると、ドーパミン性神経が減少しているため黒質の黒っぽさが正常の方と比べて薄くなっている事が確認できます。

ではなぜ、パーキンソン病では中脳黒質のドーパミン神経が減少してしまうのでしょうか。

Ⅱ.αシヌクレインの蓄積

中脳黒質のドーパミン性神経が減少してしまう事がパーキンソン病発症の原因だとお話しました。

ではなぜこのような事が起こってしまうのでしょうか。

長い間その原因は分かっておりませんでしたが、近年「αシヌクレイン」という物質が原因ではないかと考えられるようになりました。

αシヌクレインは神経細胞内の細胞質やミトコンドリアといった部位に存在するたんぱく質です。

このαシヌクレインが集合体を形成したり変性すると、神経への毒性を持つようになります(これをレビー小体と呼びます)。レビー小体増えるとドーパミン性神経が毒性によって殺されてしまい、減少してしまうのです。

Ⅲ.αシヌクレインはなぜ蓄積するのか?

では中脳黒質にαシヌクレインが蓄積してしまうのは何故なのでしょうか。

これはまだ分かっていません。

「食事に原因があるのではないか」
「お酒が悪いのではないか」
「精神的ストレスが原因ではないのか」

など様々な意見がありますが、現時点ではいずれも根拠は乏しく、「これが原因だ」と明確に言えるものはまだ特定されていません。

しかし現時点でいくつかの知見があるため紹介します。

αシヌクレイン蓄積の一因として、「加齢」が挙げられます。パーキンソン病は年を重ねるほど発症率が上がる事が分かっており、「加齢」はパーキンソン病発症の明確なリスクファクターになります。パーキンソン病の発症率は0.1%(1,000人に1人)と報告されていますが、60歳以上の高齢者に限れば発症率は1%(100人に1人)まで上がります。

また「酸化ストレス」が原因だという仮説もあり、これも一定の根拠を持った仮説です。元々、黒質という部位はドーパミンやメラニンなど酸化されやすい物質が豊富に含まれています。そのため酸化ストレスによる被害を受けやすく、ドーパミン神経も減少してしまいやすいのです。

酸化ストレス仮説の根拠として、抗酸化ストレス能を持つDJ-1という遺伝子が欠損していると、パーキンソン病の発症率が上がる事が分かっており、ここから酸化ストレスがパーキンソン病発症の要因になる事が分かります。

更に近年では、αシヌクレインが腸から迷走神経という神経を介して脳に運ばれるのではないかという仮説があります。

その証拠として、迷走神経切断術を行った患者さんでは有意にパーキンソン病の発症が少ないという報告があり、また動物実験においてラットの消化管の神経にαシヌクレインを注入したところ、神経を通って脳に運ばれる事も確認されています。

もしこの仮説が正しければ、αシヌクレインが作られやすいような食事はあまり良くないという事になります(どのような食事がαシヌクレインを増やすかは分かっていませんが・・・)。

3.パーキンソン病になりやすいのはどんな人?

パーキンソン病になりやすい傾向として、現時点で分かっている事を紹介します。

Ⅰ.年齢

パーキンソン病は若い人でもなる可能性がありますが、基本的には年を取るほど発症しやすく50~60代が好発年齢となります。

Ⅱ.性別

パーキンソン病は明らかな男女差は報告されていません。

Ⅲ.食事

食生活は、パーキンソン病発症の原因となる可能性があります。しかしどのような食事を取っているとパーキンソン病になりやすいのかは、まだ十分に分かっていません。

少なくとも極端な偏食などではなく、バランスよく摂取するのが良いと言えるでしょう。

Ⅳ.嗜好品

酒・タバコとパーキンソン病の発症に明らかな関連性が現時点では確認されていません。

コーヒーなどに含まれるカフェインは、パーキンソン病の発症率を低下させるという報告があります。

Ⅴ.性格

完璧主義・几帳面・内向的など、ストレスを溜め込みやすい性格の方はパーキンソン病を発症しやすいのではないかという説もありますが、根拠はまだ不十分です。

このようなストレスを溜め込みやすい性格の方は、うつ病などの精神疾患にかかりやすくなりますが、うつ病も脳のドーパミンが減少する事が一因だと考えられているため、これらの性格傾向がパーキンソン病発症のリスクになるという事は、全くありえない話ではありません。

4.パーキンソン病とレビー小体病

パーキンソン病は、「レビー小体」が中脳黒質に蓄積することが原因である事が分かりました。

実はレビー小体が脳に沈着する病気は、パーキンソン病以外にもあります。代表的なのは「レビー小体型認知症」です。

レビー小体型認知症は、認知症の1つで、

  • 認知機能低下
  • 幻視
  • パーキンソン様症状

の3つが代表的な症状です。

レビー小体型認知症は脳のうち、大脳皮質や脳幹といった広範囲にレビー小体が沈着する事が原因だと考えられています。

近年では、レビー小体型認知症もパーキンソン病もどちらもレビー小体の沈着が原因であり、沈着する部位によって現れる症状が違うのではないか、という考えもあります。

このような考えから、両者の疾患を合わせて「レビー小体病」と呼ぶこともあります。

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