爪に黒い線が生じる「爪メラノーマ」の症状と見分け方

メラノーマ(悪性黒色腫:Malignant Melanoma)は、色素細胞(メラノサイト)が癌化してしまう疾患です。

皮膚に生じる事が多く、特に足の裏が好発部位となりますが、実は皮膚のみならずメラノサイトが存在する部位であればどこでも生じる可能性があります。

頻度は多くはないものの爪に生じる事もあります。爪に生じたメラノーマ(通称:爪メラノーマ)は、初期には爪に淡い黒い縦線が入ったように見えます。特に症状もないため放置されてしまいがちですが、これは悪性腫瘍であり出来る限り早期に治療を行う必要があります。

爪に黒い線が入っていたら、その全てが爪メラノーマだというわけではありません。むしろ良性の変化である事がほとんどです。しかし爪メラノーマが悪性腫瘍である以上、可能性が否定できない場合は一度皮膚科医の診察を受けるべきです。

ここでは爪メラノーマが生じる原因や症状、治療法をはじめ、良性の爪の黒色変化と悪性の爪メラノーマの見分け方なども説明させていただきます。

1.メラノーマとは

メラノーマ(悪性黒色腫:Malignant Melanoma)は、皮膚に存在するメラノサイト(色素細胞)が癌化してしまう事で生じる悪性腫瘍です。

メラノサイトはその多くが、皮膚の一番外側の層である「表皮」に存在しています。本来のメラノサイトの役割は表皮で「メラニン」を合成する事です。

メラニンは黒色の色素であり、紫外線を吸収する役割があります。

私たちは普段、外に出れば日光に当たりますが、日光には紫外線が含まれています。紫外線は強い波長の光であり、細胞に障害を与えます。そして細胞が紫外線を受け続けると、細胞が老化したりDNA(遺伝情報)に異常が生じて癌化したりしてしまいます。

そうならないように身体の中の大切な臓器を紫外線から守ってくれるのがメラニンなのです。メラニンは表皮で紫外線を吸収する事で身体の奥に紫外線が到達しないようにし、身体の奥にある重要な臓器を紫外線から守る役割があります。

メラニンは紫外線の強い地域に住んでいると多く産生されます。日光の強い地域に住んでいる人の皮膚が黒いのは、紫外線をしっかり吸収するためにメラニンがたくさん産生されているからなのです。

このように本来であればメラニンを適切に産生するはずのメラノサイトが癌化してしまうのがメラノーマです。

メラノサイトがメラノーマになってしまうと、メラノーマは無秩序にどんどんとメラニンを産生するようになります。するとメラノーマが存在する部位の皮膚は黒子(ほくろ)のように黒っぽくなります。

しかしこれを黒子と同じだと考えてはいけません。このメラニンは癌化したメラノサイトによって無秩序に産生されたものです。そのため通常の黒子と異なり、黒い斑点はどんどんと大きくなっていき、また黒子のように丸形ではなくいびつな形を取るようになります。色もどんどんと濃くなり、また皮膚が盛り上がっていく事もあります。

メラノーマは悪性腫瘍ですから放置しているとどんどんと増殖・進行していきます。皮膚の外側に向かって増殖するだけでなく、もちろん内臓の側へも増殖・進行していきます。

内臓側に進行したメラノーマは次第にリンパ節や内臓にも転移していき、最終的には身体の重要な臓器にも障害を与えていきます。こうなってしまうと治療は困難で、最終的には命を落とす事になってしまいます。

こうならないためにもメラノーマは早期に発見し、早期に治療しなければいけないものなのです。

このメラノーマのうち、爪に生じたものを「爪メラノーマ」と呼びます。

メラノーマはメラノサイトが癌化して生じるものですから、メラノサイトがない部位には生じません。そのため「透明な爪にメラノサイトなんてあるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに爪にはメラノサイトはありません。しかし「爪母」と呼ばれる爪の基部(根本)にはメラノサイトが存在します。爪母は爪を作るはたらきを持つ組織であり、ここにメラノーマが生じてしまうとそこで作られる爪もメラニンを含んで黒っぽくなってしまうのです。

爪母にメラノーマが出来ると爪の一部が黒っぽくなり、それが爪とともに伸びていくため、爪に黒い縦線が入ったように見えるようになります。

2.爪メラノーマの原因は?

爪メラノーマはどのような原因で生じるのでしょうか。

これははっきりとは分かっていません。

一般的なメラノーマも、その原因の全ては解明されてはいません。しかし足の裏に出来やすい事、紫外線をたくさん浴びると出来やすい事から

  • 機械的刺激
  • 紫外線への曝露

などが原因になるのではないかと考えられています。

爪メラノーマも同じ病態で生じる疾患であるため、これと同様の原因で生じている可能性があります。

爪母に機械的刺激(激しくぶつける事が多かったり、仕事で指に負担がかかるなど)や紫外線の曝露が続くと爪メラノーマは生じやすいのかもしれません。

【爪メラノーマが生じる原因】

・はっきりとした原因は特定されていない
・機械的刺激、紫外線曝露が原因である可能性がある

3.爪メラノーマの症状と経過

爪メラノーマにはどのような症状があるのでしょうか。また何か困るような症状は認められるのでしょうか。

結論から言えば、爪メラノーマは何か症状が生じるという事はありません。別に爪が痛くなるとか、かゆいとかしびれるとかそういった症状はないのです。

しかし症状がないから良いというものではありません。むしろ症状が出ずに密かにどんどんと進行していくからこそ怖い疾患なのです。

痛みなど不快な症状が出れば、「これはまずいぞ」と考え、早い段階で病院を受診したりするでしょう。しかしメラノーマにはそういった症状はないのです・

大きな症状は出ずに内臓にまで広がっていき、いざ症状が出現するのは臓器に障害が生じた時です。この段階になると身体のあちこちに癌化細胞が転移している可能性が高く、すで手遅れとなっている事も少なくありません。

そのため爪メラノーマを疑うような所見があったら、例え症状がなくても早めに皮膚科医の診察を受けるべきなのです。

では爪メラノーマは一般的にどのように進行していくのでしょうか。

爪メラノーマはいきなり爪に現れるわけではありません。爪にはメラノサイトはありませんので、そこから発生する事はないのです。爪メラノーマは爪の基部にある「爪母」のメラノサイトが癌化してしまう事がはじまりです。

爪母のメラノサイトが癌化して無秩序にメラニンを産生するようになると、メラニンは爪にも沈着するため、爪が黒っぽくなっていきます。

爪メラノーマは爪の一部が線状に黒っぽくなるのが特徴です。更に無秩序なメラニンの産生を反映して、この線は同じ太さではなくいびつな形をしています。

無秩序な分泌ですから、色の濃さも薄かったり濃かったり様々で、一概に薄いから爪メラノーマではないという事は出来ません。

爪メラノーマは悪性腫瘍ですから徐々に進行していきます。爪のみならず爪周囲の皮膚に黒色色素が染み出してくる事もあります。ここまで来たらこの黒い線は正常な変化ではなく、悪性のメラノーマである可能性がかなり高まります。

また爪メラノーマは爪周囲の皮膚に潰瘍を形成することもあります。

皮膚表面の変化はこのように見えるため分かりやすいのですが、メラノーマは皮膚だけでなく内臓側へも進行していきます。これは画像検査をしないとどこまで進行しているのかは分からないため、爪メラノーマが疑われたら、内臓やリンパ節への転移がないか、画像評価も必ず行わなければいけません。

【爪メラノーマの症状】

・爪が線状に黒くなるが、自覚的な症状が生じるわけではない
・自覚症状が出る頃には諸臓器に転移しており、手遅れとなっている事もある
・まだ症状が出てない早期に診断・治療すべきである

4.爪メラノーマの治療法

爪メラノーマに対してはどのような治療が行われるのでしょうか。

爪メラノーマは悪性腫瘍(いわゆる癌)です。そのため放置しておけばどんどん身体を蝕んでいきます。これを解決するには癌細胞を取り除く他ありません。

爪メラノーマの治療法は原則として手術による摘出になります。

初期の爪メラノーマであれば「広範囲摘出術」といってメラノーマとその周辺を広く切除するという治療で完治させる事が出来ます。

しかしこれは爪メラノーマが進行していない「初期」に限られます。

リンパ節や諸臓器にまで転移してしまうと、そのすべてを摘出する事は困難である事も多く、手術で完治させる事ができる可能性は一気に低下します。

一般的な癌であれば手術以外にも、

  • 化学療法(いわゆる抗がん剤の投与)
  • 放射線治療

などが行われる事もありますが、残念ながらメラノーマは抗がん剤・放射線があまり効かない事が知られています。

手術は癌を根本から取ってしまえる治療法ではありますが、あくまでも癌が「局所」に留まっていないと完全摘出はできません。内臓のあちこちに転移してしまったら、そのすべてを取ってしまう事は出来ないため、手術が行えなくなってしまうのです。

メラノーマを出来るだけ早期に発見しなくてはいけない理由はここにあります。

爪メラノーマも同様で、爪の局所にあるだけの状態であれば、それを手術で切除してしまえば完治できます。しかしあちこちに転移してしまうとたとえ手術で目立つところをとっても、取り切れなかった癌細胞がまた体内で増殖していくため根本的な治療になりません。

このような場合はやむを得ず化学療法が行われる事もありますが、十分な効果があるとは言えず、有効な治療法が乏しいのが現状です。

【メラノーマの治療法】

・局所であれば手術で完全に取る事が出来るが、早期でないと難しい
・化学療法や放射線治療の効果は低い

5.爪メラノーマと正常な爪の黒い線の見分け方

爪メラノーマは最初、線状に爪が黒っぽくなります。

このような爪の変化を見つけた時、「これって爪メラノーマかもしれない」と気付ける事は大切です。

しかし爪が黒くなるのは爪メラノーマだけではありません。特に身体に害のない正常内の変化として爪の一部が線状に黒っぽくなる事もあります。

むしろ爪の黒い線の大多数はこのような無害な変化に過ぎず、爪メラノーマである事の方が稀です。

しかし万が一爪メラノーマであった場合は命に関わりますので、その鑑別はしっかりと行っておく必要があります。

では、爪に黒い線があった際、これが

  • 良性のものなのか
  • 悪性のもの(爪メラノーマ)なのか

を見分けるポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。

これは極論を言ってしまえば「判断に迷うようなら一度皮膚科医に診察してもらう事」に尽きます。医療の素人に疾患の診断をする事は出来ませんので、どちらか分からない場合は一度は皮膚科医に診てもらいましょう。

ここでは一般的な爪メラノーマの見分け方を紹介します。

まず爪メラノーマは「癌」であるため、進行していきます。一方で正常な変化はその状態で固定している事がほとんどです。

つまり昔から爪に黒い線があって、その太さ・濃さ・範囲などがずっと変わっていないのであれば良性のものである可能性が高いでしょう。一方でどんどんと太くなったり濃くなったり、広がっていく感じがあるようであれば悪性である可能性が出てくるという事です。

特に線の形がいびつであったり線の濃淡が部位によって違う場合は悪性の可能性が高くなります。

また良性のものであれば黒色の変化は爪の中にとどまります。一方で爪メラノーマは進行性の癌ですので、黒色変化が爪から皮膚へ徐々に染み出していきます。

時々、爪の下に出来た「血豆(皮下血種)」を「爪メラノーマではないか」と心配して受診される方もいます。爪の下に出来た血豆も黒っぽくみえますからね。

両者の鑑別のポイントとしてはやはり進行性です。爪メラノーマは徐々に進行していきますが、血豆は徐々に血液が吸収されていくため小さくなっていきます。

また形や起点も重要です。爪メラノーマのほとんどは爪母から発症します。そのため爪の基部から線状に黒い線が伸びていくという形になります。一方で血豆は爪の下に生じてますので、爪母が起点となっていません。形も必ずしも線状になっていません。

あとは「痛み」ですね。爪メラノーマは押しても痛くもかゆくもありません。しかし血豆は皮下に出血を起こした後ですから、多くの場合その周辺の皮膚細胞はダメージを受けています。そのため、押すと痛みを感じます。

とはいえ、これらは一般的な見分け方であり、経験の少ない方が独断で判断するのは危険です。やはり爪メラノーマの可能性が否定できない爪の変化が生じたら一度は皮膚科医に診察してもらいましょう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする