運動後に尿が茶褐色に!?ミオグロビン尿が生じる原因と治療法

通常、尿は黄色っぽい色をしています。これは尿中に存在する「ウロビリン」という物質が黄色いためです。

身体に何らかの異常が生じると、尿の色が変色する事があります。例えば、尿中に血液が混じっていると尿は赤色になる事があります。また肝疾患によってビリルビンという色素が尿中にたくさん排泄されると濃黄色や褐色の尿となる事もあります。

同じく尿色の変化として、激しい運動後などに、筋肉中のミオグロビンがたくさん尿に出るために尿が茶褐色(コーラのような色)になる事があります。これは「ミオグロビン尿」と呼ばれています。

ミオグロビン尿は様々な原因で生じます。激しい運動の後などに一過性に認められる大きな問題のないものもありますが、お薬の副作用や疾患の症状の1つとしてミオグロビン尿が現れる事もあります。また、程度や原因によっては放置してしまうと危険な事もあり、しっかりと原因と調べる必要があります。

この尿が茶褐色に変色するという現象は、どのような原因で生じるのでしょうか。また治療が必要な際はどのような治療法があるのでしょうか。

ここでは尿が茶褐色に変色する原因とその意味について紹介させて頂きます。

1.ミオグロビン尿とは

まずは「ミオグロビン尿」とはどういったものなのかを見ていきましょう。そもそも「ミオグロビン」って何でしょうか。

ミオグロビンというのは筋肉に含まれている色素です。ミオグロビンは赤色の色素であり、筋肉が赤っぽく見えるのは、このミオグロビンがあるためです。

ミオグロビンはタンパク質から作られており、その主なはたらきは「酸素の貯蔵」になります。酸素は肺から取り込まれて血液中の赤血球と結合し、全身の組織や臓器に運ばれます。

酸素は栄養からエネルギー(ATP)を効率的に取り出すために必要なものです。全身の細胞はすべて、赤血球が運んできてくれた酸素をもとに栄養から効率的にエネルギーを取り出し、そのエネルギーをもとに様々な生体活動を行っているのです。

筋肉も同様で、酸素を利用する事でエネルギーを効率的に作り出し、全身の筋肉を必要な時にしっかりと動かす事が出来るのです。

筋肉は普段はそこまで酸素を必要としませんが、運動などの突発的な行動において急にたくさんの酸素が必要になります。みなさんの生活の中でも普段の生活の多くはそこまで筋肉を使う事はありませんが、突発的に走らないといけなかったり、重いものを持ち上げないといけなかったりと筋力を使う事があると思います。

このような突発的な酸素の需要に対応するため、筋肉はある程度の酸素を保管しておく必要があります。それを担当しているのがミオグロビンなのです。

ミオグロビンは赤血球が運んできた酸素と結合し、その酸素をそのまま保管します。そして筋肉が多量の酸素を必要としたときにそれを感知し、酸素を放出するのです。

これにより急激に強い力を出す必要がある時でも、私たちの筋肉は効率的に酸素を使用して筋力を発揮する事が出来るのです。

2.ミオグロビン尿が生じる原因

本来は筋肉中に存在するミオグロビンが尿と一緒にたくさん排泄されてしまうのがミオグロビン尿です。

ミオグロビン尿が生じる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

まずミオグロビン尿が生じているという事は、本来筋肉中にあるはずのミオグロビンが血液中に放出され、腎臓でろ過されて尿中に出てきているという事になります。

これは「筋肉が破壊されて、ミオグロビンが放出されている」という事を意味します。

つまり、筋肉が破壊されるような状態や疾患であれば、どのようなものでもミオグロビン尿が生じる可能性があるとう事です。

ちなみに筋肉が破壊されると放出されるのはミオグロビンだけではありません。

  • CK(クレアチニンキナーゼ)
  • AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
  • LDH(乳酸脱水素酵素)

なども筋肉が破壊されると血液中に放出されるため、ミオグロビン尿が出るような病態では、血液検査でこれらの酵素も上昇しています。これはミオグロビン尿と血尿など見た目の色が似ている病態を正しく見分けるために重要です。

ここではミオグロビン尿の原因として多いものや、特に注意すべき疾患について代表的なものを紹介します。

Ⅰ.運動による筋肉の破壊

ミオグロビン尿が生じるもっとも分かりやすい原因が「筋肉の破壊」です。

適度な運動や筋肉トレーニングなどであれば、筋肉が大量に破壊される事はありませんので、顕著なミオグロビン尿が認められる事はありません。

しかし激しい運動であったり、長時間の無理な運動などを続けると、筋肉は大量に破壊され、ミオグロビン尿をきたす事があります。

この場合、しっかりと水分を取れば徐々にミオグロビン尿は薄くなっていきますが、尿から排泄されるミオグロビンの量があまりに多い場合は、ミオグロビンが腎臓を障害してしまう事があります。

この場合は点滴で水分をしっかりと補ったり、状態が急激に悪くなった時にすぐに対応できるように入院などによって全身管理をする必要があります。

また運動ではありませんが、事故や災害などによって筋肉が長期間圧迫され続けていると、金破壊が生じるため、これでミオグロビン尿が検出される事もあります。

例えば震災で家具に足が挟まってしまい、救出までの長時間、足が挟まったままであったというケースであれば、下肢筋肉の筋破壊が生じてミオグロビン尿が出現します。また、何とか脱出できたとしても内出血などによって組織内圧が上がり、これによって筋破壊が生じる事もあります。

これは「挫滅症候群(コンパートメント症候群)」と呼ばれます。

Ⅱ.お薬の副作用

お薬によっては副作用として筋肉の破壊が生じるものがあります。このような現象は「横紋筋融解症」と呼ばれます。

横紋筋融解症を引き起こす可能性のあるお薬としては、

  • スタチン系
  • フィブラート系
  • 抗精神病薬
  • ニューキノロン系抗菌剤
  • 抗パーキンソン薬

などがあります。

Ⅲ.心筋梗塞

心筋梗塞は虚血性心疾患の1つです。

心臓に栄養を送っている「冠動脈」という血管が詰まってしまう事によって、心臓が血液不足となります(虚血)。血液は細胞が生きるための栄養が含まれているため、血液が送られない状態が一定時間続くと心筋は死んでしまいます。

これが心筋梗塞です。高血圧や糖尿病、高脂血症、喫煙などによって冠動脈に動脈硬化が生じる事で詰まりやすくなる事が知られています。

心筋梗塞では「心筋」という筋肉が死んでしまうため、心筋中のミオグロビンが放出され、尿中に出る事があります。

Ⅳ.筋疾患

頻度が多い疾患ではありませんが、筋肉が破壊されていくような疾患があります。これらの疾患においてもミオグロビン尿が認められます。

筋肉が破壊される代表的な疾患としては、

  • 筋ジストロフィー
  • 多発性筋炎・皮膚筋炎

などが挙げられます。

筋ジストロフィーは遺伝性の筋疾患で、骨格筋という筋肉の壊死と再生を繰り返しながら、徐々に筋肉が萎縮していく疾患です。

多発性筋炎・皮膚筋炎は自己免疫性疾患です。自己免疫性疾患というのは、本来であれば身体に侵入してきた異物を攻撃するはたらきを持つ免疫系が誤作動を起こしてしまい、自分の細胞を攻撃してしまう疾患です。

多発性筋炎では、自分の筋肉を免疫系が攻撃してしまう事により、筋肉に炎症が生じ、筋肉に力が入りにくくなったり、疲れやすくなったり、痛んだりします。多発性筋炎では免疫系が筋肉以外にも皮膚やその他臓器を攻撃してしまう事も少なくありません。

このような病態においては、筋肉の破壊の程度が強ければミオグロビン尿が認められます。

Ⅴ.その他

その他、頻度は多くはありませんが、ミオグロビン病を認める疾患はまだまだあります。

例えば「てんかん」でもミオグロビンが出現する事があります。

てんかんは脳神経の異常発火が生じる事によって突然に意識を失ったり、全身がけいれんしてしまうような疾患です。

けいれんというのは神経が異常に興奮してしまう事で、筋肉が異常な運動(収縮したり弛緩したり)を繰り返します。これによって筋肉は破壊されてしまい、ミオグロビン尿が認められるのです。

また「糖原病」という疾患でもミオグロビン尿が認められる事があります。糖原病は珍しい疾患ですので、聞いたことがない方も多いかもしれません。「糖尿病」ではありません。

糖原病は、グリコーゲンを分解する酵素がうまく機能しないという疾患であり、先天性の疾患(生まれた時からの疾患)です。

私たちは食べ物から糖分を摂取しますが、糖分は体内でグルコース(血糖)に分解され、ここからエネルギーが生み出されます。

しかしエネルギーが欲しい時にいつも食べ物があるとは限らないため、私たちの身体はエネルギーを生み出す糖分をある程度体内に溜め込んでおく必要があります。

これがグリコーゲンです。グルコースはグリコーゲンという形で肝臓や筋肉などに貯蔵されており、必要な時にグリコーゲンを分解する酵素によってグルコースになり、血液中に放出されるのです。

糖原病は、グリコーゲンをグルコースに分解する酵素が正常にはたらけない疾患です。そのためグリコーゲンは肝臓・筋肉にどんどんと溜まる一方になってしまいます。過剰に蓄積した糖は細胞を障害しますので、これによって肝障害・筋障害が生じます。

グリコーゲンの過剰蓄積によって筋肉が破壊されてしまうとミオグロビン尿が認められるというわけです。

3.ミオグロビン尿が生じたらどのように治療するのか

ミオグロビン尿が生じる機序を見てきました。最後にこのミオグロビン尿の治療法について考えていきましょう。

ミオグロビン尿は、筋肉が破壊されている事を表しています。

そのためミオグロビン尿の治療において重要なのは、「筋肉が破壊されている原因は何なのか」を正確に突き止め、その原因に対してしっかりと治療を行う事になります。

例えば、過剰な運動が原因なのであれば、しばらくは安静にして筋肉を修復させる事が一番の治療になります。お薬が原因なのであれば、原因薬を早急に中止する必要があります。

またミオグロビン尿に共通する治療法として「十分な水分摂取」が挙げられます。

筋破壊が生じて大量のミオグロビンが一気に腎臓に向かうと、腎臓の尿細管を詰まらせてしまい、急性腎不全が生じる事があります。

これを防ぐために、水分をしっかりと摂取したり、場合によっては点滴にてしっかりと血液中の水分を増やしてあげる必要があります。

また尿が酸性であると、ミオグロビンがTamm-Horsfallタンパクという物質と反応してしまい、尿細管への障害度が高まる事が知られています。そのためアルカリ性の点滴を行う事で血液のpH調整を行う事もあります。

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