偏食・生理から癌まで。鉄欠乏性貧血を引き起こす原因について

鉄欠乏性貧血は、日常の外来でもよく遭遇する疾患の1つで、貧血の中でももっとも多く見かける疾患です。

幅広い世代の人に生じ、若い女性であれば生理による出血、高齢者であれば胃癌・大腸がんなどいよる出血が原因となりえます。

貧血になるとだるさやめまい、動悸といった不快な症状が慢性的に続きます。「ここのところ身体がだるい」「最近なんだか調子が悪い」という方は、鉄欠乏性貧血になっていないかを疑ってみる必要があります。

鉄欠乏性貧血は、身体の鉄分が欠乏してしまう事で生じる貧血ですが、なぜ鉄分が欠乏すると貧血になるのでしょうか。また鉄分が欠乏してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは鉄欠乏性貧血が生じる原因について詳しくお話していきます。

1.鉄欠乏性貧血とは

鉄欠乏性貧血の原因について説明する前に、まずは鉄欠乏性貧血という疾患について説明させてください。

鉄欠乏性貧血はその名の通り、体内の鉄分が欠乏してしまう事で貧血になってしまう疾患です。

では「貧血」とはどのような病態なのでしょうか。

貧血というのは血液中の赤血球が少なくなってしまっている状態を指します。赤血球は酸素と結合する特徴を持った血球で、肺から取り込まれた酸素を全身の組織・器官に届けるはたらきがあります。

赤血球が全身に酸素を運んでくれるからこそ、全身の組織・器官は酸素を利用して生きるために必要な生体活動を行えているのです。

何らかの理由で赤血球の量が少なくなると、全身に十分な酸素を届ける事が出来なくなってしまいます。これが「貧血」と呼ばれる状態です。

貧血になると全身の組織・器官が十分な生命活動を行えないため、身体のだるさや倦怠感、めまいなどが生じます。また心臓は血液量を増やそうと心拍数を上げるため動悸が生じ、肺は一生懸命酸素を取り込もうとするため息切れが生じやすくなります。

次に、なぜ鉄が少ないと貧血になるのでしょうか。

赤血球の中には「ヘモグロビン」というタンパク質がたくさん入っていますのですが、このヘモグロビンの材料となるのが「鉄」なのです。ヘモグロビンは酸素と結合できる性質を持っており、酸素を運搬するために欠かす事の出来ない重要な物質です。

ヘモグロビンは「ヘム」という色素と「グロビン」というたんぱく質から作られます。ヘムを作るには鉄が必要なのです。

何らかの原因で身体の中の鉄分が不足してしまうと、ヘムが合成できなくなります。するとヘモグロビンが合成できないため、赤血球も少なくなってしまうというわけです。

これが鉄欠乏性貧血です。

2.鉄はどのように身体に吸収されるののか

鉄欠乏性貧血の原因を理解するためには、体内における鉄の動きを知っておく事も重要です。

鉄欠乏性貧血は、身体の中の鉄分が少なくなってしまうと発症しますが、そもそも私たちは鉄分をどうやって補っているのでしょうか。

通常、私たちは鉄分を食べ物から摂取します。鉄分はレバーや肉、魚、豆類などに多く含まれていますが、食べ物に含まれる鉄分は口から入り、小腸(主に十二指腸)から体内に吸収されます。

小腸から血液中に入った鉄分(鉄イオン)は、血液中に存在する「トランスフェリン」というたんぱく質と結合し、トランスフェリンによって骨髄に運ばれます。

骨髄に到着すると鉄分は赤芽球(赤血球のもとになる細胞)の中に取り込まれます。赤芽球は細胞内で鉄を原料にしてヘモグロビンをたくさん合成します。

細胞内にヘモグロビンをたくさん合成した赤芽球は赤血球に成長し、骨髄から血液中に放出されます。

ちなみに赤血球の寿命は約4か月(120日前後)と言われており、寿命が来た赤血球は脾臓という臓器で破壊されます。赤血球が破壊されると鉄分が出てきますが、この鉄分は体外に排泄される事なく、骨髄で新しい赤血球が作られる原料に再利用されます。

このように、私たちの身体で鉄分は、赤血球の原料として大切に再利用され続けているのです。

3.鉄欠乏性貧血を引き起こす原因

最後に鉄欠乏を引き起こす代表的な原因について見てきましょう。

大きく分けると体内の鉄が少なくなる原因としては、次の3つがあります。

  • 鉄分の摂取量が少ない
  • 鉄分の必要量が増えた
  • 鉄分の排泄が多い

1つずつ詳しくみていきましょう。

Ⅰ.鉄分の摂取量が少ない

鉄欠乏性貧血の原因の1つとして、鉄分の摂取量が少ない事が挙げられます。

具体的には、

  • 偏った食生活
  • 鉄の吸収不全

などが原因になりえます。

食生活が偏っており、鉄分を含んだ食べ物をほとんど摂取していなければ体内の鉄分は欠乏していきます。現在の日本ではよほど極端な偏食をしないと鉄欠乏性貧血にはなりませんが、鉄分を豊富に含んだ食べ物もしっかりと摂取する事が大切です。

また胃腸の異常によって鉄の吸収不全が生じると、いくら鉄分の多い食べ物を食べても胃腸から体内に鉄分が吸収されないため、鉄欠乏性貧血になります。例えばピロリ菌に感染して胃が萎縮してしまい胃酸が出なくなると鉄分の吸収率が落ちるため、身体は鉄欠乏になりやすくなります。

Ⅱ.必要な鉄の量が増えている

必要な鉄分の量が増えている状態で、鉄分を通常程度にしか摂取していないと、相対的に鉄欠乏になってしまう事があります。

具体的には、

  • 妊娠
  • 小児の成長期

などが挙げられます。

妊娠すると赤ちゃんにまでしっかり血液を届ける必要があるため、血液量を増やさないといけません。そのため必要な鉄分の量も多くなります。

また成長期は身体をどんどん大きくするために全身にたくさんの酸素を届ける必要があり、やはり必要な鉄分の量が増えます。

このような状態の時は、いつもより意識してたくさん鉄分を取らないと、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。

Ⅲ.鉄分が排泄される量が多い

鉄欠乏性貧血の原因の1つに、鉄分が体内から体外に排泄されてしまうという事も挙げられます。

具体的には

  • 胃腸からの出血
  • 女性の月経(生理)

が原因として挙げられます。

血液中の赤血球には鉄分がたくさん含まれているので、出血によって赤血球が失われればその分鉄欠乏になりやすくなります。

出血でも普通に皮膚から出血している場合は、それをそのまま長時間放置するとは考えずらいため、鉄欠乏にまで至る事は多くはありません。

問題となる出血は、「定期的に出血してしまう」という状態であったり、「気付かれないまま長期間出血し続けている」という状態です。

定期的に出血してしまう状態としては、女性の月経(生理)が挙げられます。

また「気付かないまま長期間出血し続けている」という状態としては、胃腸から出血している事が挙げられます。これは胃潰瘍や大腸憩室といった疾患の他、胃がんや大腸がんからの出血という事もあります。

明らかに大量の出血であればすぐ気づかれますが、少量の出血が続いていた場合、発見が遅れてしまう事も少なくありません。

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