枯草熱ってどんな病気?

枯草熱(こそうねつ:Hay Fever)という疾患をご存知でしょうか。

枯草熱は昔に使われていた病名で、現在ではあまり使われていません。しかし昔の名残りで、今でも薬の適応疾患の欄には「枯草熱」と記載されている事があります。

この枯草熱とはどのような疾患なのでしょうか。また現在ではなぜ使われなくなってしまったのでしょうか。

ここでは枯草熱について説明させていただきます。

1.枯草熱とは

枯草熱とはどのような疾患なのでしょうか。

答えを先に言ってしまうと、枯草熱とは「花粉症」の事です。「枯草熱」=「花粉症」だと考えてもらって問題ありません。

枯草熱は、その原因が解明されるとともに「花粉症」という呼び方に代わっていきました。現在では「花粉症」が一般的になりましたので、枯草熱という病名はほぼ使われておりません。

しかし古い本や古くに発売されたお薬の適応疾患には、昔の名残りから「枯草熱」という病名が今でも書かれているのです。

枯草熱(Hay fever)という名称の由来は1800年代の欧米までさかのぼります。当時のイギリスでは、初夏に牧草を刈り取る作業の際、鼻のむずむず感やくしゃみ、鼻詰まりといった症状が出る人がいる事が知られていました。

調査の結果、「これはどうも干し草(Hay)が原因のようだ」という事が分かり、ここからこの疾患は「Hay fever」と呼ばれるようになりました(fever=熱)。ちなみにHay feverの正確な訳は「干草熱」になりますが、「干し草」≒「枯れ草」と考えられたのか、和訳された際は「枯草熱」となりました。

しかしみなさんご存知の通り、この疾患は「干し草」だけで生じるものではありません。より厳密に言えば干し草に含まれる「花粉」が原因であり、干し草以外でも花粉が舞う可能性のある植物であれば同様の症状はきたします。

その後の調査で、このような事も徐々に解明されてきて、それにつれて「枯草熱」という呼び方は、この疾患の実態と合わないようになってきました。そのため、枯草熱は次第に「花粉症」という実態に合った呼び方に代わっていきました。

このような背景から枯草熱という名称は徐々に使われなくなっていき、現在に至っているのです。

2.枯草熱の原因とは

枯草熱(花粉症)はどのような原因で生じているのでしょうか。

枯草熱は以前は、「干し草(枯れ草)が原因である」と考えられていました。そのためこのような病名がつけられたのですが、現在では干し草そのものが原因であるわけではなく、干し草にも含まれている植物の「花粉」が原因である事が分かっています。

花粉は本来は、植物が子孫を残すために必要な物質です。植物の雄しべで花粉は作られ、空中を舞って雌しべにつく事で受精が行われます。

花粉は本来、私たちにとっては益も害もない物質であり、触れる事によって良い作用も悪い作用もないものです。しかしこの花粉が身体に害となってしまうのが「枯草熱(花粉症)」です。

なぜこのような事が起こってしまうのでしょうか。

私たちの身体には免疫系と呼ばれる防御システムが備わっています。免疫系は、「ばい菌」「毒」など身体に害をきたすような異物が体内に侵入してくると、「この物質は危険だ」と判断し、その物質を除去するために攻撃を始めます。

花粉は私たちにとっては無害な物質ですので、花粉が目や鼻に入っても通常は免疫系が活性化する事はありません。

しかし何らかの原因でこの免疫システムが誤作動を起こしてしまい、花粉に対して「これは危険な物質だ!」と判断してしまうようになると、免疫系は花粉に対して攻撃するようになってしまうのです。

花粉は空気中を舞っており目や鼻、口に入ってしまうため、免疫系は主にこれらの部位で花粉を攻撃し始めます。

これによって目や鼻・口に炎症が生じ、

  • 流涙
  • 充血
  • 鼻水
  • 鼻詰まり
  • 喉の違和感・かゆみ

といった症状が生じるのです。

これが枯草熱(花粉症)が生じる基本的な機序になります。

ちなみにこのように免疫系が誤作動を起こし、本来攻撃する必要のない物質を攻撃してしまい、その結果として身体に炎症が生じてしまう疾患は「アレルギー性疾患」と呼ばれます。

枯草熱によって生じる眼症状(充血・流涙など)は「アレルギー性結膜炎」になり、枯草熱によって生じる鼻症状(鼻水、くしゃみ、鼻閉など)は「アレルギー性鼻炎」となります。

3.枯草熱の症状

枯草熱(花粉症)ではどのような症状が生じるのでしょうか。

枯草熱はアレルギー性疾患です。「花粉」という本来人体に無害な物質に対して免疫細胞が「これは身体に害をきたす物質だ!」と誤認識し花粉を攻撃するため、この攻撃の巻き添えを食らった組織が炎症を起こしてしまうのです。

花粉が侵入しやすい部位としては、

などが挙げられます。

目に花粉が入れば、目で免疫細胞の攻撃が始まります。これは「アレルギー性結膜炎」という目の炎症を引き起こし、充血や流涙などが生じます。

鼻に花粉が入れば、鼻腔で免疫細胞の攻撃が始まります。これは「アレルギー性鼻炎」という鼻腔内の炎症を引き起こし、くしゃみ・鼻水・鼻閉・鼻のムズムズ感などが生じます。

口の中に花粉が入れば、喉周辺の炎症が生じ、喉の腫れを感じる事もあります。

またこのような炎症が生じると、炎症による熱感から37℃前後の微熱が生じる事もあります。

4.枯草熱の予防法・治療法

枯草熱はどのように予防・治療をすればいいのでしょうか。

まず枯草熱は花粉症であり、枯草が原因であるわけではなく花粉が原因になります。

そのため予防の大原則は、アレルギーを引き起こす原因となる花粉と出来る限り接さないようにする事です。

花粉と言ってもすべての植物の花粉に対して免疫が誤作動するわけではありません。スギ、イネ、ブタクサなど特定の花粉に対してのみ誤作動してしまう事がほとんどですので、自分がアレルギーを持っている植物のみ避ければよいのです。

まずは自分がどの花粉に対してアレルギーとなっているのかを見極め、その花粉となるべく接触しないようにしましょう。

また悲惨してきた花粉が体内に入らないようにブロックする工夫も重要です。

花粉が飛散する時期になったら、外出時はメガネやマスクなどを装着するようにしましょう。これだけでも症状は大分軽減するはずです。なるべく皮膚と密着するようなメガネ・マスクが良いでしょう。

また服装も重要です。花粉がくっつきやすい服を着ていれば、外出時に服にたくさん花粉がついてしまい、それが家の中でも舞ってしまいます。

具体的には、ウールなどのモコモコした生地の服は花粉が付きやすく、ポリエステルなどのツルツルした服は花粉が付きにくいと言われています。花粉が飛散する時期は、このように服装にも気を付けてみると良いでしょう。

また最近ではアレルギー症状を和らげるような成分の報告もあり、そのような物質を積極的に食事から摂取するのも有効かもしれません。

例えば、

  • 一部の乳酸菌
  • ポリフェノール
  • DHA

などはアレルギー症状を軽減させるはたらきがある事が報告されています。

お薬による治療法としては「抗ヒスタミン薬」と呼ばれるアレルギー症状を抑えるお薬が有効です。

抗ヒスタミン薬は、アレルギーの一因となっているヒスタミンのはたらきをブロックするお薬です。

花粉が体内に侵入すると、肥満細胞(マスト細胞)と呼ばれる免疫細胞がこれを感知し、ヒスタミンなどを分泌します。そして分泌されたヒスタミンがヒスタミン受容体に結合することで様々なアレルギー症状が生じます。

抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンがはたらけないようにしてしまうお薬です。すると肥満細胞がヒスタミンを分泌しても、それが効果を示さないため、炎症が生じにくくなるのです。

抗ヒスタミン薬以外にもアレルギー症状を抑えるお薬はいくつかあります。

症状によっては、

  • ロイコトリエン拮抗薬
  • トロンボキサンA2阻害薬
  • ステロイド

などもアレルギーを抑える作用があるため、症例によっては用いられる事もあります。

また根本を治すような治療法として、「減感作療法」と呼ばれる治療法もあります。減感作療法は「アレルギーとなっている物質に対して、身体を少しずつ慣らしていく」という治療法dす。

効果を得るためには何回も通院しないといけず、時間も手間もかかる治療法ですが、アレルギーを根本から治す事が期待できる治療法です。

例えばスギに対するアレルギーに対して「シダトレン」というお薬を用いた減感作療法があります。

これは、スギ花粉のエキスを少量から毎日摂取してもらい、その量を徐々に増やしていくことで徐々に身体をスギ花粉に慣らしていくという方法になります。

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