せつ(癰)とはどのような疾患なのか

せつ(癤:Furuncle)は皮膚疾患の1つで、皮膚に存在する毛包(いわゆる毛穴)の中で細菌が増殖してしまい、皮膚炎が生じている状態を指します。

いわゆる「おでき」の事で、感染部には熱感や発赤・痛みが生じます。また細菌が増殖しているため、せつからは膿(うみ)が出てくる事もあります。

せつは自分でこすったり、潰そうとしたりと誤った対処法を行っている方も少なくありません。このような対処法はせつの治りを遅くするだけでなく、皮膚に傷跡を残してしまう事にもなりかねません。

ここではせつについて、皮膚に細菌が感染してしまう原因と正しい治療法についてなどを詳しく説明させて頂きます。

1.せつとは

せつ(癤)とはどのような疾患なのでしょうか。

せつは皮膚疾患の一つです。「おでき」と言った方が一般の方はイメージしやすいかもしれませんね。せつはいわゆる「おでき」の事です。

またせつは顔に生じる事が多いのですが、顔に生じたせつは「面疔(めんちょう:facial furuncle)」と呼ばれる事もあります。

より詳しく見てみると、せつというのは毛包(いわゆる毛穴)の中で細菌が繁殖してしまった状態です。毛穴の中で細菌が増殖し、悪さをして炎症を引き起こします。

そのた、せつは毛穴に一致した小さな赤い結節のような形状を取ります。また毛穴の内部では細菌が繁殖しているため、毛穴の出口は膿栓という白っぽいもので覆われ、時に膿(うみ)が出てくる事もあります。

せつは、何らかの原因で毛包内で菌が繁殖してしまう事で生じます。原因となる菌は「黄色ブドウ球菌」が多く、これは私たちの皮膚に普段から存在している常在菌になります。黄色ブドウ球菌は、普段は人体に悪さはしないのですが、身体が弱ったりしてしまうと感染してしまう事があるのです。

例えば、持病に糖尿病がある方はばい菌が繁殖しやすいと言われています。また高齢者なども免疫力(身体がばい菌と闘う力)が弱っていますのでばい菌は繁殖しやすいでしょう。若い方でも睡眠不足や過労などが続けば免疫力が弱り、せつが生じやすくなります。

このような原因によってせつは生じます。

症状としては、毛包(毛穴)に一致した赤い発疹が生じます。これは毛穴の中で黄色ブドウ球菌が過剰に増殖しているために生じ、典型的には発疹は円錐型になると言われています。

毛穴の中は細菌が増殖し、膿を形成しており、毛穴の出口も膿で栓をされているような状態となり、これは膿栓と呼ばれます。

治療としては、細菌の増殖が原因ですので、抗菌薬(細菌をやっつけるお薬)が用いられます。抗菌薬にも様々な種類がありますが、黄色ブドウ球菌に効果が高い抗菌薬が用いられる事が多いです。

また原因となる背景(糖尿病や免疫力低下など)があるようでしたら、その背景の疾患の治療も重要になります。

2.「せつ」と「よう」、毛包炎は何が違うのか?

せつは、毛穴の中で細菌が増殖してしまって炎症が生じている状態です。

しかし同じような状態でも、

  • 毛包炎
  • よう(癰)
  • 癤腫症(furunculosis)

といった疾患もあります。

これらはせつとどのように異なるのでしょうか。

これらの疾患は、いずれも毛包の内で細菌が繁殖してしまう事で炎症が生じている状態だという点で共通しています。

異なるのは細菌の増殖の程度になります。

毛包炎はもっとも軽く、毛包の入り口付近のみで菌が増殖し、炎症が生じているものです。浅在性の毛包炎という事も出来ます。

せつ(癤)は、毛包の奥まで細菌が侵入・増殖し、炎症が生じているものです。深在性の毛包炎と言う事も出来ます。

更にせつが多発すると癤腫症(furunculosis)と呼ばれ、複数の毛包を巻き込んで巨大化するとよう(癰)と呼ぶようになります。

3.せつの原因

せつはどのような原因で生じるのでしょうか。

せつは毛孔(毛穴)に細菌が侵入してしまい、そこで繁殖して炎症を引き起こしてしまう事が原因です。

そのためせつ発症の原因としては、

  • 細菌が繁殖やすい事
  • 毛包の出口が塞がれてやすい事

などが考えられます。

細菌が繁殖しやすい要素としては、細菌感染をしやすい状態になっている事が挙げられます。

例えば糖尿病をお持ちの方は血糖が高値になる事で細菌感染しやすくなる事が知られており、これはせつも生じやすくなるという事が出来ます。

また免疫力(身体がばい菌と闘うためのシステム)が低下するような疾患をお持ちの方も同様にせつは生じやすくなるでしょう。

これはAIDSの方であったり、癌患者さんであったりなどが挙げられます。またステロイドを服用している方なども免疫力は低下してしまいます。

また病気ではありませんが、睡眠不足や過労、栄養の偏りなどが続く事も免疫力を低下させる原因となりますので、せつの発症要因になります。

毛包の出口が塞がれやすい状態の方は、毛包内に細菌が入った状態でフタをされやすいという事ですので、中で細菌は繁殖しやすくなってしまいます。

これは皮脂量が多く、洗顔などのスキンケアが少ない方や、化粧などを厚く・頻回にされるような方が該当します。

このような方はせつを発症しやすくなります。

【せつが生じる原因】
・黄色ブドウ球菌が毛包内で増殖し、炎症を引き起こす事で生じる
・AIDSやがん患者さん、ステロイド服用中の型などが免疫力が低下するため生じやすい
・過労や睡眠不足、栄養の偏りなどが続いている方も免疫力が低下するため生じやすい
・皮脂量が多くてスキンケア不足であったり化粧が多い方も生じやすい

4.せつの症状

せつではどのような症状が認められるのでしょうか。

せつは毛孔(毛穴)の中で炎症が引き起こされている状態です。

つまり炎症で引き起こされる症状が生じるという事です。

炎症というのは細胞がダメージを受ける事で、

  • 発赤(赤くなる)
  • 熱感(熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛む)

といった症状を引き起こす状態です。

そのため毛包で炎症が生じれば、

  • 毛包が赤くなる
  • 毛包が熱くなる
  • 毛包が腫れる
  • 毛包が痛む

といった症状が生じるわけです。

具体的には毛穴に一致して紅色の結節が生じます。炎症であるため触れば痛く、圧痛があります。

毛孔の内部では細菌が繁殖しているため、毛穴を圧迫すれば中から白い膿が出てくる事もあります。また毛穴の出口は白っぽい膿の栓(膿栓)が認められます。

【せつの症状】

・毛孔に一致した紅色の結節が生じる。
・炎症(発赤、熱感、腫脹、疼痛)が生じる
・毛包内では細菌が繁殖しており、圧迫すると膿が出てくる

5.せつの予防・治療法

せつはどのように治療すれば良いのでしょうか。

せつは毛包の中で細菌が繁殖してしまっている事で毛包の中で炎症が生じている状態です。

そのため、この状態を改善させる事を考える事になります。

まず毛包(毛穴)の出口がふさがっていると内部に溜まった細菌は排出されません。これを防ぐためには毛穴から細菌が出ていけるようにスキンケアをしっかりとする必要があります。

適度に洗顔をする事で余分な皮脂が洗い落とし、毛穴が詰まらないようにします。また化粧などは必要最小限にしましょう。

細菌をやっつけるお薬としては「抗菌薬」がありますので、抗菌薬を皮膚に塗布、あるいは内服する事も大切です。

軽度のせつであれば抗菌薬の外用だけで治療できる事もありますが、抗菌薬は毛穴の中までは塗れないため、ある程度進行しているせつであれば内服する必要がある事もあります。

せつの原因菌としては「黄色ブドウ球菌」が多いため、黄色ブドウ球菌に効果の高い抗菌薬が好まれます。

具体的には、

  • ケフラール(一般名:セファクロル)
  • ユナシン(一般名:スルタミシリン)
  • サワシリン(一般名:アモキシシリン)
  • セフゾン(一般名:セフジニル)

などが用いられます。

また毛包の中の細菌の繁殖が顕著であった場合は、皮膚を切開して排膿(膿を洗い流す事)する事もあります。

またせつが発症する原因として、

  • 糖尿病
  • 免疫不全
  • 免疫力を低下させるお薬の服用

などがある場合、これらの治療を行う事も大切ですし、

  • 過労
  • 睡眠不足
  • 栄養の偏り

などがあるようでしたら、生活習慣の改善を試みる事も重要です。

せつは、つい気になってしまい押しつぶしてしまう方が多いのですが、これは良くありません。安易に押しつぶせば、菌をより深くに押し込んでしまい炎症を悪化させてしまう事もあります。また傷跡も残りやすくなってしまうでしょう。

つい気になってしまうのは理解できますが、せつは必要な処置をしたらそれ以上は出来る限り触らないようにしましょう。

【せつの治療法】

・毛穴がふさがらないように適度なスキンケアをする
・黄色ブドウ球菌に効果の高い抗菌薬を使用する
・原因となる基礎疾患があるのであればその治療も並行して行う
・原因となるお薬を服用しているのであれば継続するかを慎重に判断する
・原因となる生活習慣の乱れがあるのであれば改善を試みる
・不必要に触ったり押しつぶしたりはしない事

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