肩関節周囲炎の原因・症状と治療法

肩関節周囲炎(frozen shoulder)は肩に炎症が生じ、強い痛みが生じる疾患です。50代に多く発症するため「五十肩」とも呼ばれます。「肩関節周囲炎」という難しい病名より「五十肩」の方がなじみがある方も多いかもしれませんね。

中高年者で肩の痛みを認める方は20%ほどもいると言われています。そのすべてが肩関節周囲炎というわけではありませんが、中高年者の肩痛の主な原因でもある肩関節周囲炎は、臨床現場でよく見かける疾患の1つです。

肩関節周囲炎は、どのような原因で生じ、どのような症状が認められ、どのような対処法があるのでしょうか。

今日は肩関節周囲炎(五十肩)についてお話させていただきます。

1.肩関節周囲炎とは

肩関節周囲炎(frozen shoulder)はその名の通り、肩関節周囲に炎症が生じる疾患です。50代に発症する事が多いため「五十肩」と呼ばれる事もあります。

発症初期は肩関節に激しい炎症が生じるため「痛み」が主な症状になります。

動かすと痛いため、肩を十分に動かせなくなり、生活に支障が生じる事もあります。中には何もしていない安静時にも痛くなってしまったり、夜間眠っている時も痛みで目覚めてしまったりする事もあります。

炎症が治まってくると、痛みは治まるものの関節の拘縮(固まってしまう事)が生じます。このように関節の拘縮が生じる事から、肩関節周囲炎は「凍結肩」と呼ばれる事もあります。

2.肩関節周囲炎の原因は?

肩関節周囲炎はどのような原因で生じるのでしょうか。

実は肩関節周囲炎が発症する原因は、分かっていません。

というよりは中高年(40~50代以降)に生じる肩関節の炎症のうち、明らかな原因が特定されていないものを総称して「肩関節周囲炎」と呼びます。肩関節周囲炎はそもそもが誘因が明らかでないものを指しているのです。

例えば肩関節に「腱板断裂」という疾患が発症する事があります。これは外傷などで肩関節にある棘上筋の腱板が切れてしまう疾患です。棘上筋腱板断裂でも肩関節の炎症は生じますが、これは検査すれば原因が分かりますので肩関節周囲炎にはなりません。

同じように肩関節の「石灰性腱炎」という疾患が発症する事があります。これも棘上筋の腱板に石灰が沈着してしまう疾患です。石灰性腱炎でも肩関節の炎症が生じますが、これも検査をすれば腱板の石灰化が原因として確認できますので肩関節周囲炎にはなりません。

このように原因が特定できる肩関節の炎症を除いた、誘因がはっきりしない肩関節の炎症を総称して「肩関節周囲炎」と呼びます。

しかし原因が特定されていないといっても肩関節周囲炎の原因が全く分かっていないわけではありません。

明確には解明されてはいないものの、その正体は「組織の老化」によって生じると考えられています。肩関節周囲の組織の老化に伴う変性や、それによって生じる神経・血管の圧迫によって痛みが生じるのではないかというのが現時点での見解になります。

3.肩関節周囲炎の症状と経過

肩関節周囲炎では、どのような症状が認められるのでしょうか。

肩関節周囲炎で生じる主な症状は、

  • 肩の痛み
  • 肩の拘縮

の2つになります。

肩関節に炎症が生じるわけですので痛みが生じます。また肩関節が痛くて動かせなくなるだけでなく拘縮(固まってしまう事)が生じ、肩を動かしずらくなります。

肩関節周囲炎の経過も重要で、各時期に応じて症状に特徴があります。

肩関節周囲炎の経過には、

  • 炎症期(freezing phase)
  • 拘縮期(frozen phase)
  • 回復期(thawing phase)

の3つの段階があります。

それぞれの時期に分けて症状をみていきましょう。

Ⅰ.炎症期

炎症期は肩関節周囲炎の初期段階であり、肩関節に炎症が生じて強い痛みを感じます。

最初は「肩を動かすと痛む」という動作時痛から始まりますが、炎症が強くなると何もしていない安静時にも痛んだり、夜間に身体を休めている時に痛んだりするようになります。

こうなってしまうと痛みで身体を自由に動かせなくなり、生活に大きな支障を来たすようになります。

Ⅱ.拘縮期

しばらくすると炎症は少しずつ落ち着いてきます。それに伴い痛みも和らいできますが、この時期になると今度は肩関節の拘縮が始まります。

肩関節が固まってしまい、肩の動きが制限されるようになり、十分に曲げ伸ばしが出来なくなります。

この時期に関節腔を検査で確認すると、拘縮に伴って関節腔が狭くなっているのが確認できます。

Ⅲ.回復期

拘縮期が終わると、肩関節の拘縮は徐々に弱まっていき回復期に入ります。回復期に入ると元通りに肩を動かせるようになってきます。

4.肩関節周囲炎の治療・リハビリ法

肩関節周囲炎はどのようにして治療をすればいいのでしょうか。

肩関節周囲炎は、

  • 痛み
  • 拘縮

の2つの症状が問題となります。そのため、これらの症状を改善させる治療法が重要になります。

病期に応じて適切な治療は異なってくるため、今の自分の病期に応じて適切な治療を行う事が大切になります。

各病期における治療法を紹介していきます。

Ⅰ.炎症期の治療

炎症期では肩関節に強い炎症が生じていますので、まずはこの炎症を改善させる治療が行われます。

炎症は組織が刺激を受ける事で生じますので、炎症を和らげるには患部を安静にする必要があります。

炎症が落ち着くまではなるべく患部の肩関節を動かさずに過ごしましょう。どうしても動いてしまう場合は、三角巾などで肩関節が動かないように固定しても良いでしょう。

また炎症を抑えるためにはお薬も有効です。よく用いられるお薬として、

  • NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)

が挙げられます。

代表的なNSAIDsには、

  • ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)
  • ボルタレン(一般名:ジクロフェナクNa)
  • セレコックス(一般名:セレコキシブ)

などがあります。

また、

  • ヒアルロン酸注射

を肩関節に関節注射する事もあります。

高分子のヒアルロン酸は抗酸化作用を持ち、炎症を抑える作用がある事が分かっており、炎症を改善させるために有効です。

Ⅱ.拘縮期の治療

拘縮期に入ると炎症は落ち着きはじめ痛みは和らいできます。しかしこの時期は、肩関節の拘縮(固まってしまう事)が顕著になってきます。

拘縮を放置したままにしてしまうと、なかなか拘縮が取れずに回復期に入れなくなってしまうため、拘縮期にしっかりとリハビリを行う必要があります。

そのため、拘縮期はリハビリを重点的に行って拘縮を解除する事が重要です。

具体的なリハビリ法は主治医の指示に従って頂きたいのですが、肩関節周囲炎の拘縮は肩関節のすべての方向の可動域に生じますので、肩関節のリハビリもすべての方向に対して行わないといけません。

肩関節の運動には、

  • 屈曲(腕を前に出す事)・伸展(腕を後ろに伸ばす事)
  • 外転(腕を横に挙げる事)・内転(腕を身体に付ける事)
  • 外旋(前に出した腕を外側に開く事)・内旋(前に出した腕を内側に閉じる事)

があり、このそれぞれの動きに対してリハビリを行う必要があります。

無理矢理動かしてしまうと炎症が再度悪化してしまいますので無理は禁物ですが、動かさないと拘縮の治りが遅まってしまいますので、リハビリは負荷の程度を間違えない事が非常に大切です。

肩関節周囲炎の代表的なリハビリ法の1つに「codman体操」があります。これは、患部側の手首に重りを付け、腕の力を抜いて体幹を揺り動かす運動です。

これによって患部の腕が振り子のように動くため、肩関節を無理なく動かすリハビリになります。

肩関節周囲炎のリハビリは、通常はこのように自力でのリハビリが行われますが、拘縮がひどい場合は、局所麻酔を肩関節に注射してやや強制的に関節腔と拡張したり、医師による徒手整復術(治療者が関節を動かして拘縮を強制的に治す方法)がとられる事もあります。

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