食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因と治療法

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA:Food Dependant Exercise Induced Anaphylaxis)は、主に学童期(6歳前後)以降に生じるアレルギー疾患です。

成人で初めて発症する事もありますが、多くは小中高校生といった学生の時に発症します。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーはユニークな特徴を持った疾患で、

  • 特定の食べ物を摂取して
  • その後に激しい運動をする

という2つの要因が合わさった時にアレルギー症状が出現します。食べ物を食べただけ、あるいは激しい運動をしただけ、では発症しないため見かける機会は多くはありません。

しかし食物依存性運動誘発アナフィラキシーは「アナフィラキシーショック」という重篤な状態を引き起こす事があります。アナフィラキシーショックは適切な治療をしないと命の危険もある状態であり、決してあなどる事はできません。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの方は、自分がどの食べ物と相性が悪くて、もしアレルギー反応が生じてしまったらどのように対処すればよいのかを知っておく必要があります。

ここでは、食物依存性運動誘発アナフィラキシーについて詳しく紹介していきます。

1.食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA:Food Dependant Exercise Induced Anaphylaxis)は、「ある特定の食べ物」と「運動」の2つの要因が重なる事でアレルギーが発症してしまう疾患です。

小学生~高校生の間の学生期に発症する事が多く典型的な発症例としては、「昼食後の体育の授業中、急に全身に蕁麻疹が出て呼吸も苦しくなった」と訴え病院を受診します。

このように、ある特定の食べ物を食べたあとに激しい運動をする事でアレルギー症状が出てしまうのが食物依存性運動誘発アナフィラキシーです。

興味深いのが、ある特定の食べ物を食べただけではアレルギー反応は起きませんし、激しい運動をしただけでもアレルギー反応は起きません。「食べ物」+「運動」という2つの要因が重なった時のみ症状が現れます。

また似たようなものとして「食べ物+運動」ではなく、「食べ物+お薬」や「食べ物+アルコール」などで同様の症状が出る方もいます。

お薬はNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤、いわゆる「痛み止め」)で多いと報告されています。

【代表的なNSAIDs】
・ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)
・ボルタレン(一般名:ジクロフェナクナトリウム)
・セレコックス(一般名:セレコキシブ)
・ニフラン(一般名:プラノプロフェン)
・ブルフェン(一般名:イブプロフェン)

お薬やアルコールでアレルギーが生じるものも、基本的な機序は食物依存性運動誘発アナフィラキシーと同じだと考えられています。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの有病率は6,000~10,000人に1人と言われており、多くはありません。しかし日々学生さんと接する仕事をしている方であれば、数年に1度はみかける可能性のある疾患です。

2.食物依存性運動誘発アナフィラキシーが生じる機序

食物依存性運動誘発アナフィラキシーはどのような原因で生じるのでしょうか。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーはアレルギー反応の1つですので、まずアレルギーがどのような機序で生じるものなのかをみていきましょう。

アレルギーとは、私たちの身体の防御システム(免疫)が誤作動をしてしまい、本来であれば攻撃する必要のない物質を攻撃してしまう現象です。

本来、免疫は有害な物を攻撃するように出来ています。身体の中にばい菌が入ってきたら免疫は速やかにそれを感知し、ばい菌を攻撃します。私たちの身の回りにはたくさんのばい菌がおり、これらはしばしば身体の中に侵入してきます。しかし私たちが健康でい続ける事ができるのは、身体に異常が生じる前に免疫がばい菌を感知し、やっつけてくれるためです。

ここから分かるように、免疫というのは私たちの身体の健康を守るために非常に大切なシステムなのです。

この免疫反応が何らかの原因で誤作動してしまうのがアレルギーです。アレルギーでは、本来であれば身体に有害でないもの、例えば食べ物とか花粉とかお薬とかが身体に入ってきた時、免疫が「有害な物質が入ってきた!」と勘違いして、これらの物質を攻撃してしまいます。これによって、蕁麻疹やかゆみ、熱、腹痛、鼻水といった様々な症状が生じてしまいます。

アレルギーは生じる機序によってⅠ型からⅣ型に分類されていますが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは「Ⅰ型アレルギー」の機序で発症します。

Ⅰ型アレルギーは即時型アレルギーとも呼ばれます。免疫が「これは有害だ」と勘違いしてしまう対象を「アレルゲン」と呼びますが、Ⅰ型アレルギーではアレルゲンが身体に侵入してきてからすぐにアレルギー反応が生じるのが特徴です。

アレルゲン(ここでは特定の食べ物)が身体から入ってくると、アレルゲンに対して「抗体」という物質が作られ、抗体がアレルゲンに結合します。

すると肥満細胞(マスト細胞)と呼ばれる細胞がこれを感知して「ヒスタミン」という物質を放出します。

ヒスタミンはアレルギー症状を起こす物質であり、これによりアレルギー症状が生じるのです。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、ただ食べ物を食べただけではアレルギーは発症しません。しかし運動をするに事によって、アレルギーを起こしやすい状態が作られ(これを専門的には「閾値が下がる」と言います)、アレルギー症状が発症してしまうのだと考えられています。

3.食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因となる食べ物は?

食物依存性運動誘発アナフィラキシーはどのような食べ物で生じやすいのでしょうか。

あらゆる食べ物が原因となりえますが、特に、

  • 小麦

で生じやすい事が報告されています。

また、その他に頻度が多い食べ物としては、

  • とうもろこし
  • オレンジ
  • 鶏肉
  • 人参
  • エビ、カニ

などが報告されています。

4.食物依存性運動誘発アナフィラキシーの症状

食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、食事を摂取して激しい運動をするとアレルギー症状が生じます。また運動以外でも、特定の食べ物を食べた後にNSAIDsなどのお薬を服用したり、アルコールを服用したりして生じる事もあります。

即時型アレルギーであり、ほとんどの症例で運動を始めてから1時間以内に症状が発症します(中でも30分以内に発症する例が多数です)。

生じる症状は様々ですが、皮膚の発赤・紅斑(赤み)、掻痒(かゆみ)、じんましんなどの皮膚症状が圧倒的に多く、約8割の患者さんに認められます。

次に多いのが呼吸器症状で、3割ほどの患者さんには喉の違和感、息苦しさ、咳、鼻水などが認められます。

その他にも、

  • 消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢など)
  • 循環器症状(動悸、血圧低下など)
  • 神経症状(意識消失など)

が認められる事があります。

アレルギーの程度がひどいと「アナフィラキシー」という状態になる事もあります。アナフィラキシーとは、全身にアレルギー症状が生じ、生命に危機を与えるレベルのアレルギー反応の事で、極めて危険な状態です。

アナフィラキシーになると、皮膚症状が全身に広がって全身が真っ赤になったり、気管が狭窄して呼吸が出来なくなったり、血圧が過度に下がって意識を失ったりという状態になり、これは「アナフィラキシーショック」と呼ばれます。

アナフィラキシーは命を落とす事もある極めて危険な状態で、早急な治療が必要になります。

5.食物依存性運動誘発アナフィラキシーの治療・予防法

食物依存性運動誘発アナフィラキシーが生じてしまったら、どのように対処すれば良いでしょうか。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーが生じる原因は、

  • ある食べ物を食べた事
  • 運動をした事

の2つです。

このうち、食べ物を食べてしまった事はもうどうする事も出来ません。食べ物の成分が身体から抜けるのを待つしかありません。

運動は、速やかに中止する必要があります。食後の運動中に身体が赤くなったりかゆくなったり、あるいは息苦しくなったりお腹が痛くなったりした場合は、速やかに運動は中止しましょう。

また食物依存性運動誘発アナフィラキシーはアレルギー反応ですので、アレルギーに準じた治療で改善させる事が出来ます。

アレルギーを抑えるお薬としては、

  • 抗ヒスタミン薬
  • ステロイド
  • アドレナリン

などがあります。

抗ヒスタミン薬は、アレルギーの原因となっているヒスタミンのはたらきをブロックするお薬です。

ステロイドは免疫のはたらきを抑える作用があります。正常な免疫も抑えてしまいますが、誤作動している免疫も抑える事が出来ますので、アレルギー症状の改善が得られます。

アドレナリンは、アナフィラキシー症状を速やかに和らげる事ができるため、アナフィラキシーショックが生じた時などの緊急時に使われるお薬です。注射剤になりますが、緊急時に自分で自分に注射できるような「自己注射薬(エピペンなど)」があります。

アナフィラキシーショックが生じた時は、最悪の場合呼吸が出来なくなる事もあり、1秒でも早い治療が大切です。数分では病院に到着できない状況でアナフィラキシーショックが生じてしまう事もありえますので、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの既往がある方はあらかじめアドレナリン製剤を医師に処方してもらい、携帯しておく事が望ましいでしょう。

また運動ではなく、お薬やアルコールで食物依存性運動誘発アナフィラキシーが生じてしまう場合は、特定のお薬をなるべく使わないようにしたり、アルコールを控えるといった生活の工夫も必要になります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは病気そのものを治す事は今のところは難しいため、アレルギーが生じないように「予防」する事が何よりも大切になります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする