エボラ出血熱が生じる原因と感染経路について

エボラ出血熱(Ebola Hemorrhagic Fever)は、エボラウイルスに感染する事で発症するウイルス感染症の一種になります。

主に中央アフリカで流行する感染症であるため、私たち日本人にとってはなじみの薄い感染症ですが、致死率が非常に高く危険なウイルスの1つです。

このエボラウイルスはどのような原因で発症するのでしょうか。またどのような感染経路でヒトに感染するのでしょうか。

ここではエボラ出血熱について、この疾患がどのような原因で発症するのかについてお話させていただきます。

1.エボラ出血熱とは

エボラ出血熱はウイルス感染症の1つです。出血症状を来たす事が多いため「出血熱」という名称がついていますが、出血症状を必ず伴うわけではありませんので「エボラウイルス病」と呼ばれる事もあります。

エボラは1976年にアフリカで初めて発見されたウイルスです。中央アフリカのコンゴ民主共和国にあるエボラ川流域から流行が始まったため、「エボラ出血熱」と名づけられました。その後も数年置きに同地域付近で流行しています。

エボラ出血熱の怖いところは、その致死率の高さにあります。同じウイルス感染症でも「風邪」や「胃腸炎」は、例えかかってしまっても「死亡」にまで至る事は稀です。しかしエボラウイルスに感染した場合の致死率は40%~90%と報告されており、極めて危険性の高いウイルスなのです。

例えば2014年の流行ではエボラ出血熱は中央アフリカの計3か国に猛威を振るい、総感染患者数は28,616名、総死亡数は11,310名と報告されています(WHOの報告より)。

ちなみにエボラウイルスには現在のところ5つの型が見つかっており、それぞれで致死率が異なります。最も致死率が高いのは「ザイールエボラウイルス」で致死率は90%にも達します。一方で「レストンエボラウイルス」はヒトには病原性を示さない事が知られています。

この致死率の高さはエボラウイルスが「免疫回避機構」を有している事が理由です。免疫回避機構とは「免疫を避けるシステム」の事です。

エボラウイルスは、私たちの身体の免疫システムをうまくくぐりぬけ、逆に免疫を操作してしまうという恐ろしい特徴があるのです。

免疫というのは、私たちの身体に異物(細菌など)が侵入してきた時に、それを排除するシステムの事です。何らかの異物が体内に侵入してきた時、免疫細胞がそれを感知し、異物を攻撃する事によって私たちの身体は異物から守られているのです。

例えば身体の中に細菌が侵入してきて肺炎になりかけたとします。この時、ある免疫細胞が「身体に細菌が侵入してきた!」と感知します。するとその情報を細菌を攻撃するシステムを持った別の免疫細胞に伝えます。情報を受け取った免疫細胞は肺に向かい、侵入した細菌を攻撃する事で細菌は死滅し、細菌が身体中に増殖するのを防ぐ事が出来るのです。

エボラウイルスは身体に侵入する異物の側でありながら、免疫システムを回避し、逆に免疫システムを操作してしまう恐ろしいウイルスなのです。

エボラウイルスの免疫回避機構の詳細な機序は解明されていませんが、エボラウイルスは体内に侵入すると、まずマクロファージ・樹状細胞といった免疫細胞に感染します。

エボラウイルスが感染したマクロファージ・樹状細胞は本来の機能を失ってしまい、サイトカインという物質を大量に放出するようになってしまいます。本来必要な状況で必要な分だけ分泌されるサイトカインがどんどんと分泌されるため、身体には様々な異常が生じます。

サイトカインには様々な作用があるため、これによって血液が固まりにくくなって出血しやすくなってしまったり、炎症が誘発されて身体の様々な臓器に障害を来たすようになってしまうのです。

そして出血量が多かったり多臓器不全になったりすれば死に至ります。

ウイルスは病原体の危険性によって「バイオセーフティレベル(BSL:Bio Safety Level)」が決められています。レベル1がもっとも感染力が低く、レベル4が最強の感染力になりますが、エボラウイルスはBSL4に設定されています。

【バイオセーフティレベル4】
ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こし、容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす。有効な治療法・予防法は確立されていない。多数存在する病原体の中でも毒性や感染性が最強クラスである。

有効な治療法も存在しないため、エボラウイルスに感染してしまったら、他の人に移さないように注意した上で対症療法(解熱剤や止血剤投与、輸液など)を行ない、自分の力でエボラウイルスをやっつけるしかありません。

もっとも効果があるのが「エボラ出血熱に感染して回復した人の血を輸血する事」だと言われています。一度エボラ出血熱に感染した人は血液中にエボラウイルスの抗体があるためです。

治療薬の開発も進められていますが、今のところまだ確立されているものはありません。インフルエンザ治療薬の一部がエボラウイルスにも効果がある事が調査にて確認されており、研究が進められています。

しかし現時点で有効な治療法は乏しく、かつ致死率も高い疾患であるためエボラウイルスは何よりも予防する事が重要になります。

2.エボラ出血熱が生じる原因とは

エボラ出血熱はどのような原因で生じるのでしょうか。

エボラ出血熱は、エボラウイルスが人間に感染する事が原因です。エボラウイルスは80nm~300nmほどの大きさのRNAウイルスの一種です。これはインフルエンザウイルスと同じくらいで非常に小さな病原体になります。

どのような感染経路によって人の身体に侵入してくるのかは、まだはっきりとは分かってはいませんが、今のところ「コウモリ」が原因ではないかと考えられています。

コウモリにエボラウイルスが寄生しており、何らかの原因でコウモリから人間に感染してしまう事でエボラ出血熱は発症します。

例えばコウモリから攻撃されたりする事でコウモリの体液が付着するという原因の他、コウモリが止まっていた木や岩を触ったりという事でも感染の原因となります。

またコウモリから他の動物(サルやヤマアラシなど)に感染し、その動物を更に人間が触る事で感染するという可能性もあります。

そして一人の人間に感染してしまうと、そこからは「人から人へ」感染していきます。

人から人への感染経路も基本的にはコウモリや他の動物と同じです。感染は、感染者の体液(血液や分泌物、便や吐物など)を触れる事で成立します。分かりやすいのが感染者の吐いたものや便、血液などに触れてしまう事ですが、それ以外にも感染者が触った部位に少量の体液が付着し、それを別の人が触る事で感染する事もあります。

また唾液・分泌物にもウイルスが含まれるため咳・くしゃみによって感染する可能性も否定できません。

水痘や結核のように同じ空間にいるだけで感染する(空気感染)事はありませんが、患者さんに近づく時は注意が必要になります。また触る際は感染リスクが極めて高くなるため、細心の注意が必要です。

このような特徴から看護をしている家族や治療をしている医療者に感染しやすいと言えます。

また感染者の遺体に触る事でも感染する事があり、お葬式などでご遺体に触れた時に感染してしまうケースもあります。

実際WHO(世界保健機関)は、流行地でエボラ出血熱に感染するリスクが高い集団として、

  • 医療従事者
  • 患者の家族・近親者
  • 埋葬時の儀式の一環として遺体に直接触れる参列者

を挙げています。

3.エボラ出血熱は日本でも起こりうるの?

エボラ出血熱は私たち日本人にとってはなじみの薄い感染症です。「致死率が高い危険なウイルス」と言われても、あまり他人事に感じる方がほとんどではないでしょうか。

ではエボラ出血熱は日本でも発症する可能性はあるのでしょうか。

今までのところ、日本国内でのエボラ出血熱発生の報告はありません。

エボラ出血熱は数年毎に流行していますが、流行するのは主に中央アフリカになります。具体的にはコンゴ、ウガンダ、スーダン、コートジボワールなどが挙げられます。

今までの経過からは、今後日本で「新規の」エボラウイルスが発症する可能性は低いと考えられます。

しかしエボラ出血熱が日本で絶対に起きないとは言えません。

エボラ出血熱は潜伏期(身体の中にウイルスが侵入してから症状が発症するまでの期間)が1~2週間ほどあります。そのため、流行時期の中央アフリカに滞在していた方は、帰国して少し経ってから症状が発症する可能性があるのです。

現地でエボラウイルスに感染し、それに気づかず帰国してしまった場合、日本国内で発症・流行する可能性は否定できません。

その際は、感染者の体液に触れないように細心の注意が必要になります。

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