こむら返りはどのような原因で生じるのか

こむら返り(calf cramp)は、突然にふくらはぎに強い痛みが生じる疾患です。

痛みは非常に強く、また睡眠中に生じる事が多いため、患者さんを大きく苦しめます。

こむら返りは発症する原因を正しく理解し、適切な対処法を取る事が大切です。でないといつまでも症状が改善されず、長期にわたって苦しむ事になります。

今日はこむら返りがどのような原因で生じるのかをお話させていただきます。

1.こむら返りとは

こむら返り(calf cramp)は、いわゆる「足がつった」という状態で、正確には「腓腹筋痙攣(ひふくきんけいれん)」と呼ばれます。

その正体は、腓腹筋(いわゆる「ふくらはぎ」)がけいれんしてしまう事です。通常、けいれんは数十秒~数分ほど続きます。

けいれんによってふくらはぎの筋肉は強く収縮するため、この時に非常に強い痛みを伴います。また強い収縮によってふくらはぎの筋肉が破壊されるため、けいれんががおさまってもにぶい痛みは数日ほど続きます。

こむら返りは通常、発症する前にふくらはぎの違和感などの前兆が生じます。しかし前兆が生じてからすぐに痙攣がはじまるため、前兆を感じてから痙攣を避ける事は困難です。

また、こむら返りは睡眠中(特に明け方)に生じやすく、この場合は寝ているため前兆を感じる事ができませんので、突然に生じます。

気持ちよく寝ている時、急に足を激痛が襲ってくるわけですので、これは非常に不快な症状になります。こむら返りを繰り返すようになってしまうと、「寝るのが怖い」と悩まれる方もいらっしゃるほどです。

こむら返りは腓腹筋が痙攣する事によって腓腹筋の一部が破壊されますので、発症後に血液検査をするとCKという数値の上昇が認められます。

CK(クレアチンキナーゼ)は、筋肉中に含まれる酵素であり、筋肉が破壊されると血中に放出されて上昇します。

2.こむら返りが生じる原因(総論)

こむら返りはどのような原因で生じるのでしょうか。

こむら返りを引き起こす原因は1つではありません。様々な原因によって発症しますので、自分がどのような原因で発症しているのかをまずは判別する必要があります。

こむら返りの原因は大きく分けると3種類に分ける事が出来ます。

1つ目が、その原因が直接こむら返りを引き起こしているものです。

これには、

  • 加齢
  • 妊婦
  • 激しい運動後の筋肉の疲労
  • 脱水
  • 電解質の崩れ
  • 冷えによる血行不良

などが当てはまります。

2つ目は、何らかの病気が背景にあって、その病気によって二次的にこむら返りが生じているものです。

これには、

  • 糖尿病
  • 肝硬変
  • 腎不全
  • 甲状腺機能低下症
  • 神経根障害(腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなど)
  • 脳血管障害後遺症
  • 多発性筋炎

などの疾患が挙げられます。

3つ目が、お薬や何らかの物質の摂取によってこむら返りが生じているものです。

これには、

  • 降圧剤
  • スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
  • 利尿剤
  • アルコール

などが挙げられます。

もちろんこれ以外にもこむら返りを起こす原因はあるのですが、代表的なものとしてはこれらの原因が認められます。

3.こむら返りが生じる原因(各論)

それではそれぞれの原因について、より詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.加齢

実は加齢(年を重ねる事)自体がこむら返りの原因になります。年を取れば取るほど、こむら返りは発症しやすくなります。

こむら返りは高齢者に多いのですが、その理由は加齢が1つの原因になっているからです。

これは筋肉が老化することで、異常な収縮(けいれん)を発症しやすくなるためだと考えられます。また後述する筋肉の疲労や脱水、電解質の崩れ、筋肉の冷えなどが高齢者の方は生じやすい事も一因となっています。

Ⅱ.妊婦

妊婦さんはこむら返りを起こしやすい事が知られています。特に妊娠の後半で生じやすい傾向があります。

これはなぜでしょうか。

まず、お腹に赤ちゃんがいますので、普段よりも足に負担がかかり、足の筋肉が疲労しやすい事が挙げられます。また足に負担がかかるため、足の血流も悪くなりやすく、これも一因となります。

Ⅲ.筋肉の疲労

普段しないような激しい運動などで、筋肉を酷使するとこむら返りは起こりやすくなります。

特に持病のないような若い方がこむら返りを発症した場合、この筋肉の疲労が原因であることがほとんどです。

例えば普段あまり運動しない方が、久々に休日にマラソン大会に出て、筋肉を酷使すると、筋肉の疲労からその日の夜にこむら返りが起こりやすくなります。

Ⅳ.脱水

水分が足りないと筋肉が正常にはたらけなくなり、けいれんが生じやすくなります。また後述の電解質のバランスも崩れるため、こむら返りを起こしやすくなります。

Ⅴ.電解質の異常

体内の電解質のバランスが崩れても、こむら返りは起こりやすくなります。

ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど多くの電解質の異常がこむら返りの原因になりますが、特に注意すべきなのはカリウムです。

カリウムを排泄しやすいお薬を飲んでいる方や、カリウムの摂取量が少ない方はこむら返りを起こしやすくなります。

カリウムを排泄しやすいお薬には、漢方薬や利尿剤などがあります。またお薬ではありませんが、アルコールもカリウムを低下させる作用があるため注意が必要です。

Ⅵ.冷えによる血行不良

足が冷えて血流が悪くなると、その部位の筋肉に十分な栄養が渡らないため、筋肉は痙攣しやすくなります。

Ⅶ.各種疾患

疾患の中には症状として、こむら返りを起こしやすくするものがあります。

例えば糖尿病では、合併症として神経障害が起こります。糖が神経を傷付けてしまい、四肢のしびれや感覚障害が生じるのが典型例なのですが、それ以外にも神経のはたらきを乱し、筋肉をけいれんさせてしまう事があるのです。

また肝臓は身体の解毒作用がありますので、肝硬変など肝臓の機能が低下している疾患では、身体に毒素がたまりやすく、これによってこむら返りが生じやすくなります。特にメチオニンというアミノ酸が上昇する事が筋けいれんの原因だと考えられています。

腎臓は余分な水分や電解質を体外に排出する「尿」を作ります。腎不全で腎臓の機能が低下すると水分や電解質のバランスが崩れやすく、これもこむら返りの原因となります。

甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンという身体の代謝を上げるホルモンが低下します。すると身体の代謝が悪くなり、体温が下がって冷えます。筋肉の冷えはこむら返りの原因になるため、甲状腺機能低下症もこむら返りの原因となります。

腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどの神経根障害と呼ばれる疾患は、神経の通り道が狭くなっていて神経が圧迫される疾患です。症状は腰痛などが代表的ですが、神経が圧迫されるため神経のはたらきが乱れ、こむら返りを引き起こす事もあります。

脳血管障害後遺症では脳神経が障害を受けていますので、同様に神経のはたらきが乱れ、こむら返りを引き起こす事があります。

多発性筋炎は全身の様々な筋肉に炎症が生じます。筋肉が炎症によって痛むため、こむら返りも生じやすくなります。

Ⅷ.薬剤・物質

お薬や、特定の物質にもこむら返りを引き起こすものがあります。

スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)と呼ばれる脂質異常症の治療薬は、横紋筋融解症という筋肉を破壊する副作用が稀に生じます。横紋筋融解症まで行かなくても筋肉が多少破壊されてしまうとこむら返りが生じやすくなります。

降圧剤(血圧を下げるお薬)は時に血圧を下げすぎてしまい、手足の末端に血液が届きにくくしてしまう事があります。これによってこむら返りが生じる事があります。

利尿剤(尿を増やすお薬)は、脱水や電解質の崩れを引き起こす事があるため、これもこむら返りの原因となる事があります。

アルコールも同様です。アルコールにも利尿作用(尿を増やす作用)があるため、脱水や電解質の崩れを引き起こし、こむら返りを引き起こす事があります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする