ビタミンAを摂取するとどのような効果・効能があるのか

近年、健康に対して高い意識を持つ方が増えています。

飽食の時代ですから、食べるものも「量よりも質」と、健康的な身体を維持できるような食生活を送りたいと考える方が増えているのです。

では健康的な食生活とはどのようなものなのでしょうか。

「健康を維持するためにはビタミンが重要である」と漠然とイメージしている方は多く、ビタミンのサプリメントなどは近年好調に売れていると聞きます。診察の場でも、美容や健康増進という理由で「先生、ビタミン剤を処方してください」と希望される方は少なくありません。

ビタミンはもちろん健康な身体を作るために重要な栄養素の1つです。しかしたくさん取ればそれでよいというものではありません。

ビタミンにもたくさんの種類があり、それぞれ身体での役割も異なります。それぞれのビタミンがどのような効果を持ち、どのような食品に多く含まれていて、今の自分にとってサプリメントや処方薬として摂取する必要があるものなのかというのはある程度理解しておく必要があります。

今日はビタミンの中でも「ビタミンA」について、その身体での役割を見ていきましょう。

1.ビタミンって何?

私たちは普段から何気なく「ビタミン」という言葉を使っていますが、ビタミンとはどのような物質の事なのかをご存知でしょうか。

「身体にいいもの」というイメージはあるものの、意外とその正体については分かっていないのではないでしょうか。

「ビタミン(Vitamin)」は、私たちが生きていくために必要な栄養素のうち、炭水化物(いわゆる糖質)、たんぱく質、脂質の三大栄養素以外の有機物を指します。

三大栄養素ほど多くの量が必要なわけではないんだけど、全く摂取しないと健常な生体活動を行えなくなってしまうため、微量に摂取が必要な物質の総称が「ビタミン」なのです。

ちなみに「有機物」というのは炭素(C)を基本骨格に持つ物質の総称で、炭素を基本骨格に持たないものは無機物(ミネラル)と呼ばれ、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどがあります。

三大栄養素にビタミンとミネラルを加え、「五大栄養素」と呼ぶこともあります。

ビタミンには、

  • ビタミンA(レチノイド)
  • ビタミンB1(チアミン)
  • ビタミンB2(リボフラビン)
  • ビタミンB3(ナイアシン)
  • ビタミンB5(パントテン酸)
  • ビタミンB6(ピリドキシン)
  • ビタミンB7(ビオチン)
  • ビタミンB9(葉酸)
  • ビタミンB12(シアノコバラミン)
  • ビタミンC(アスコルビン酸)
  • ビタミンD(エルゴカルシフェロール)
  • ビタミンE(トコフェロール)
  • ビタミンK(フィロキノン)

の13種類があります。

ビタミンは「三大栄養素以外の微量に身体に必要な有機化合物」ですので、この13種類の物質は互いに関連のある物質であったり、類似の物質ではありません。それぞれ全く異なる作用を持ちます。

漠然と「ビタミンは身体にいい」「ビタミンをたくさん摂らないと」と考えていらっしゃる方も多いのですが、ビタミンにもたくさんの種類があり、それぞれではたらきも異なるため、それぞれのビタミンについてどのようなはたらきがあるのか正しく知らないと、自分が求める作用は得られません。

ちなみに、この13種類のビタミンは、

  • 水溶性ビタミン(水に溶けるビタミン)
  • 脂溶性ビタミン(脂に溶けるビタミン)

の2つがあります。

脂溶性ビタミンはビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンKの4種類で、残りは水溶性ビタミンです。ちなみに医療系の学生はこれを「脂溶性ビタミンは4種類だけ(DAKE)」と覚えます。

水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの違いは、水溶性ビタミンは水に溶けるため過剰に摂取しても尿と一緒に排泄されてしまいます。一方で脂溶性ビタミンは脂に溶けるため体内に蓄積しやすく、過剰に摂取してしまうと身体に害をきたす事もあります。

2.ビタミンAを摂取する事で得られる効果とは?

では次に、ビタミンの中でビタミンAがどんな物質なのか、そして摂取する事でどのような効果が得られるのかについて見ていきましょう。

ビタミンAは、レチノイドと呼ばれる物質およびその誘導体の総称です。

私たちの身体ではほとんどが「レチノール」という形で存在しているため、「ビタミンA=レチノール」と考えられる事もあります。

ビタミンAは食品としては、

  • 乳製品(バター、牛乳など)
  • 緑黄色野菜(βカロチンというビタミンAの前駆体の形で存在)
  • レバー

などに多く含まれます。

レチノイドは私たちの身体で次のようなはたらきを担っています。

Ⅰ.網膜で光を認識する

実はレチノール(retinol)という名前は、網膜(retina)から名付けられており、ビタミンAは網膜にとって重要な物質になります。

網膜というのは眼球の内側を覆っている膜で、外界の光・色の情報を電気信号に変えて神経に送り、脳に画像として認識させる役割を担っています。

網膜には桿体細胞(かんたいさいぼう)と錐体細胞(すいたいさいぼう)という2種類の細胞があります。

桿体細胞は「光」を認識する細胞で、暗い所でもわずかな光を感知して増幅し、外界の情報を認識します。

一方で錐体細胞は「色」を認識する細胞です。明るい所で活性化し、暗い所だとほとんど活性化しません。暗い所だと色が分からないですよね。これは錐体細胞が活性化できないためです。

桿体細胞が暗所でもわずかな光を感知できるのは、「ロドプシン」という物質のおかげです。そしてビタミンAはこのロドプシンを作るのに必要なのです。

つまりビタミンAを十分に摂取する事は網膜機能(桿体細胞の機能)の改善が期待できるという事で、特に暗所でも周囲を認識しやすくなるという事です。

Ⅱ.細胞を分化・代謝を促進させる

ビタミンAはDNA(遺伝子情報)の発現を調整する事で、細胞の過度な分化・成長・増殖を抑制し、細胞が異常な形態にならないよう形態制御したり、代謝を促進したりするはたらきがあります。

これは良い作用になる事もあるし、ビタミンAが過剰である場合は悪い作用となってしまう事もあります。前述のようにビタミンAは脂溶性ビタミンですので、過剰に摂取すると身体に蓄積してしまい、分化・成長・増殖を抑制しすぎたりや代謝を促し過ぎてしまうのです。

良い作用としては、皮膚の分化を適度に抑制し、新陳代謝を促す作用が挙げられます。

実際ビタミンAの外用剤(塗り薬)として「ザーネ軟膏」というものがあり、これは医療現場でも用いられています。

ザーネ軟膏(ビタミンA)を皮膚に塗ると、表皮の新陳代謝が高まります。また角質が肥厚して硬くなってしまっている皮膚の分化・成長・増殖を適度に抑制する事で、角質の肥厚を改善する事が出来ます。

これはビタミンAが表皮のケラチン形成を抑制するためだと考えられています。ケラチンというのは細胞骨格を形成するタンパク質のことで、皮膚の強度を保つはたらきがあります。しかしケラチンが過剰になってしまうと皮膚が過剰に肥厚し、硬くなりすぎてしまいます。

動物実験においても、モルモットにビタミンAを塗布することで表皮の新陳代謝促進・ケラチン抑制が得られる事が確認されています。またネズミを用いた研究で、ビタミンAが欠乏すると膣粘膜などの角化が著明に認められるようになることも報告されています。

ここからビタミンAが少なくなると角質が厚くなり、ビタミンAが多くなると角質が柔らかくなるということが分かります。

また「乾癬」という表皮が肥厚してしまう疾患においても、ビタミンAの服用が表皮の肥厚改善に効果を認める事が分かっており、チガソン(一般名:エトレチナート)というビタミンA製剤が治療薬として用いられています。

一方で過剰にビタミンAを摂取してしまうと、ビタミンAは脂溶性で体内に蓄積されやすいため、細胞の分化を異常に誘導してしまう可能性もあります。

例えば妊婦さんは過度にビタミンAを摂取すると赤ちゃんに奇形が生じやすくなる事が知られています。そのため前述のチガソンなどは妊婦さんへの投与は禁忌(絶対ダメ)となっています。

これはビタミンAが過度に投与された事によって、細胞の分化が異常になってしまったのだと考えられます。

Ⅲ.抗酸化作用・抗がん作用

ビタミンAは抗酸化作用によって細胞の老化や動脈硬化を抑える作用があるのではないかと考えられています。また抗がん作用も報告されています。

ビタミンAによって真皮の老化が抑えられたという報告や真皮の血管新生・創傷治癒を促す作用があるという報告もあります。

またビタミンA製剤である「ベサノイド(一般名:トレチノイン)」や「アムノレイク(一般名:タミバロテン)」は白血病という血液のがんの治療薬に用いられています。

3.ビタミンAが不足すると生じる問題は?

ビタミンAの役割を見てきました。

ではビタミンAが不足するとどのような問題が生じるのでしょうか。

Ⅰ.夜盲症(鳥目)

ビタミンAが不足すると、網膜の桿体細胞のロドプシンを合成できなくなります。

すると桿体細胞の機能が低下します。

桿体細胞は主に光を感知する作用に優れる細胞で、暗い場所でもわずかな光を感知して増幅し、外界を認識できるようにします。

ビタミンAが不足するとこれが出来なくなります。つまり、暗い場所で何も見えなくなってしまいやすいという事です。

これは「夜盲症」や「鳥目」と呼ばれます。

Ⅱ.表皮の肥厚

ビタミンAは表皮の過度な肥厚を抑えるはたらきを持っています

という事はビタミンAが不足すると、角質が肥厚しやすいという事です。

角質が肥厚すると表皮は乾燥し、ひび割れやあかぎれが生じやすくなります。

Ⅲ.成長不良

ビタミンAはDNAの発現を調整する事で、細胞の過度な分化・成長・増殖を抑制し、細胞が異常な形態にならないよう形態制御したり、代謝を促進したりするはたらきがあるとお話しました

ビタミンAは不足するとこれが行えなくなります。

つまり細胞が異常に分化・成長・増殖しやすくなりやすいという事です。これは細胞の老化や癌化にも関係している可能性があります。

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