黒いイボ「老人性疣贅」は放置して大丈夫?生じる原因と治療法

老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい:verruca senilis)は、主に高齢者の皮膚に認められる盛り上がった黒い疣贅(イボ)になります。

正確には「脂漏性角化症」という病名で、これは皮膚の老化に伴って表皮が肥厚(角化)してしまったものになります。

何か大きな問題を引き起こすような病気ではなく、痛みやかゆみといった症状もないため、特に気にならないようであればそのまま放置しても問題ありません。しかし美容的な理由で治療を希望される方もいらっしゃいます。

ここでは老人性疣贅について、発症する原因や予防策・治療法などを詳しく説明させて頂きます。

1.老人性疣贅とは

まずは老人性疣贅について、この疾患の特徴について概説します。

老人性疣贅は主に高齢者の皮膚に認められる灰色~黒色のできもの(結節)になります。身体のどこにでも出来る可能性がありますが、特に顔や頭部などに多く認められます。

老人性疣贅は皮膚の老化現象の1つで、年を取るにつれて誰にでも出来うるものです。高齢者に多く認めますが、若い人にも出来てしまう事もあります。中年以降になると発症する事は珍しくなく、80歳以上の高齢者に限ればほぼ全員に認められると言われています。

原因は紫外線による表皮細胞への刺激と皮膚の老化であると考えられています。同じような原因で「老人性色素斑」という皮膚の一部が茶褐色に変色する疾患がありますが、老人性疣贅はこの老人性色素斑から発症する事が多い事が知られています。

疾患名に「老人性」と付いているものの、老人だけに生じる疾患ではありません。老人性というのは「皮膚の老化が原因で生じるもの」という意味合いになり、若い方であっても老人性疣贅が生じる事はあります。

老人性疣贅の色調は黒っぽい事が多いのですが、これはメラニンが原因です。メラニンは黒い色素で紫外線を吸収するはたらきを持ちます。

通常皮膚でメラニンが作られても、新しい皮膚に生まれ変わっていく中で、そのメラニンは表皮と一緒に垢(アカ)として徐々に剥がれ落ちていきますが、老人性疣贅では本来垢として剥がれ落ちるべき表皮がそのまま皮膚についたまま盛り上がっていってしまう疾患です。

老人性疣贅の中にはメラニンも残っているため、黒っぽく見えるのです。

老人性疣贅は徐々に大きくなっていく事もありますが、通常その速度は非常に緩やかです。皮膚がんなどの悪性の皮膚疾患に進行していく事はなく、痛みやかゆみといった症状も特に認められません。

老化現象の1つであるため、特に気にならないという事であれば治療せずそのまま様子をみていても問題ありません。ただし顔面などの目立つ部位に出来やすいという特徴から、「何とか消したい!」と希望される方もいらっしゃり、そのような場合はレーザーや液体窒素で治療を行う事もあります。

2.老人性疣贅の原因

老人性疣贅はどのような原因で生じるのでしょうか。

老人性疣贅の原因は「皮膚の老化」が原因になります。そのため、皮膚を老化させやすい原因を多く持つ方に発症しやすくなります。

皮膚の老化を早めてしまうものとして代表的なものには「紫外線」があります。

紫外線は太陽光のうち、可視光線(ヒトの目に見える波長の光)より波長の短い光の事です。

波長の短い紫外線は私たちの細胞に障害を与える波長であるため、私たちの身体は紫外線を浴びると、体の内の重要臓器にまで紫外線が到達しないように身体を守ろうとします。

具体的には私たちの皮膚は紫外線の刺激を感じると、メラニンを多く作るようになります。メラニンは黒い色素であり、紫外線を吸収してくれるはたらきがあります。

メラニンが多くなると皮膚が黒っぽくなりますが、これにより紫外線が内臓に到達しないように身体を守るはたらきがあるのです。

南国など日差しが強い地域に住んでいる人の皮膚の色が黒いですが、これは紫外線から身体を守るためなのです。私たちも夏に強い日差しを浴び続けると皮膚が黒くなっていきますが、これも皮膚が身体を守ろうとして生じている反応なのです。

しかしメラニンは紫外線を吸収する事で、表皮より内側にある臓器を守るはたらきはしてくれますが、メラニンと同じ層に存在する表皮の細胞に関しては十分に守る事は出来ません。

そのため紫外線を長期間、慢性的に浴び続けていると、表皮の細胞は徐々にダメージを受け、老化していきます。

正常な表皮細胞は表皮の一番下にある基底層という部位で作られ、徐々に表面に上がっていき、約1か月ほど経つと垢(アカ)として剥がれ落ちていきます。このように皮膚が常に生まれ変わっていく現象を「ターンオーバー」と呼びます。

紫外線によって表皮細胞がダメージを受けると、このターンオーバーの機能に異常をきたすようになります。

これによって表皮内で作られたメラニンがいつまで経っても剥がれ落ちていかなくなってしまうのが「老人性疣贅」の正体です。

まとめると、紫外線の刺激を長い間受け続ける事によって、表皮にメラニンがたくさん作られてしまい、更に表皮の老化によってターンオーバーに異常をきたし、メラニンが表皮内に留まってしまうようになった結果生じるのが老人性疣贅になります。

【老人性疣贅が生じる原因】

・長期間の紫外線を浴び続ける事が原因
・紫外線によって表皮のメラニンがたくさん作られる事が一因
・紫外線によって表皮のターンオーバーに異常をきたす事が一因
・皮膚の老化も原因

3.老人性疣贅の症状

老人性疣贅ではどのような症状が認められるのでしょうか。

老人性疣贅は自覚症状のほとんどない疾患です。見た目的な異常はあるものの、患者さん本人に特に苦痛となる症状は認めません。

老人性疣贅は、形としては1cm~2cmほどの皮膚の一部が隆起した疣贅になります。色調は灰色~黒色が多いが、茶色っぽい事もあります。

通常は、同じく皮膚の老化現象である「老人性色素斑」から発症し、徐々に疣贅は拡大していく事もありますが、その進行は緩やかです。

老人性疣贅は単発(1個だけ)の事は少なく、多くは多発性であり、顔面や四肢・体幹をはじめとした様々な部位に出来ます。ただし掌蹠(手のひら・足の裏)には生じません。

中年期には主に露出部に生じますが、老年期になると露出部以外(体幹など)に生じる事もあります。これは老年期になると皮膚の老化が進行するため、わずかな紫外線の刺激でも老人性疣贅が出来やすくなるためです。

【老人性疣贅の症状】

・特に自覚症状はない
・灰色~黒色の1~2cmの疣贅が掌蹠以外の皮膚に生じる

4.老人性疣贅の治療法

老人性疣贅は、どのように治療すれば良いのでしょうか。

まず老人性疣贅は放置して何か害をきたすものではなく、広く考えれば老化現象の1つになります。

そのため皮膚に老人性疣贅があっても、特に気にならないという事であればそのまま様子を見ていて構いません。徐々に大きくなったりする事もありますが、何か害があるものではありません。

実際主に男性の方は、そのまま放置している事が少なくありません。ちなみに放置していて自然と消える事はほとんどありません。

反対に女性は美容的観点から除去を希望される事があります。老人性疣贅はどのように治療出来るのでしょうか。

行われている治療法を紹介します。

Ⅰ.レーザー治療

老人性疣贅に対してもっとも確実な治療法は、レーザー治療です。

レーザー治療とはレーザー光を当てることで、特定の色調の細胞を破壊する治療法です。

レーザー光は様々な波長のものがあり、波長によって吸収されやすい色調が異なります。

メラニンに吸収されやすい波長のレーザー光を老人性疣贅に当てると、レーザー光は老人性疣贅に存在するメラニン色素に吸収されます。そしてメラニンに吸収されたレーザー光の光エネルギーはそこで熱変換され、メラノサイト(色素細胞)を破壊します。

このようにレーザー治療はレーザーがあたった部位の細胞すべてを破壊するのではなく、レーザーがあたった部位のうち、そのレーザーの波長を吸収しやすい細胞だけを破壊する事が出来ます。

これによってメラニンからなる老人性疣贅を消す事が出来るのです。

実際はターゲットとするメラノサイトが皮膚のどのくらいの深さに存在しているのか、大きさはどのくらいなのかによって、用いる波長やレーザーを当てる時間は異なってきます。

またいくら局所を狙って照射するとは言っても、多少正常の皮膚にもダメージを与えてしまうため、治療の際には痛みを伴う事もあります。

レーザーは効果の高い治療法ですが、

  • 自費であり料金がかかる事
  • 何回か通う必要がある事
  • 正常皮膚にも多少のダメージを与えるため、軽い痛みを伴う事がある

がデメリットとして挙げられます。

Ⅱ.液体窒素による凍結療法

老人性疣贅に対して、「液体窒素による凍結療法」が行われる事もあります。

液体窒素は-196℃という極めて低温な液体であるため、これを病変部にスプレー噴射したり、綿球に液体窒素を付けて病変部にあてたりする事で皮膚細胞を活性化させる事が出来ます。

これによって皮膚のターンオーバーが再開されれば、疣贅は徐々に消えていきます。

液体窒素による凍結療法は通常、1~2週間間隔で行われます。数回で治る事もありますが、人によっては数カ月かかる事もありますし、効果が出ない事もあります。

Ⅲ.外科的切除

大きい老人性疣贅や、上記のレーザーや液体窒素では取れない老人性疣贅は、外科的に小手術で切除してしまう事があります。

外科的切除は最も確実な治療法ですが、前述の2つと比べて手間がかかり、切除する部位によっては皮膚に傷跡が残ってしまう可能性があります。

【老人性疣贅の治療法】

・悪性の疾患ではないため、気にならないのであれば放置しておいてよい
・レーザー治療でメラノサイトを破壊するという治療法がある
・液体窒素によって皮膚のターンオーバーを促す治療法がある
・小手術で外科的に切除してしまうという方法もある

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