ステロイドを塗ったらニキビが出来る!?ステロイドざ瘡が生じる機序と対処法

ステロイドざ瘡は、外用ステロイド剤(ステロイドの塗り薬)によって生じる副作用の1つです。

外用ステロイド剤は様々な皮膚疾患の治療に使われる有用なお薬ですが、副作用にも一定の注意が必要なお薬です。

ざ瘡というのはいわゆる「ニキビ」の事であり、ステロイドざ瘡というのはステロイドによって生じてしまったニキビになります。

ステロイドざ瘡はどのような機序で生じるのでしょうか。またステロイドざ瘡を生じさせないためにはどのような工夫があるのでしょうか。

ここではステロイドざ瘡が生じる機序や、ステロイドざ瘡を生じさせないための注意点をお話させていただきます。

1.ステロイドざ瘡とは

まずステロイドざ瘡がどのような状態なのかについて簡単に説明します。

ステロイドざ瘡はその名の通り「ステロイド外用剤」によって引き起こされる「ざ瘡(=ニキビ)」になります。

ステロイドざ瘡を理解するためには、「ステロイドのはたらき」と「ニキビはどのような疾患なのか」を理解する必要があります。

まずざ瘡(ニキビ)とは、どのような状態なのでしょうか。ニキビは毛孔(毛穴)のうち、脂腺性毛包と呼ばれる皮脂も分泌する毛孔に生じる皮膚疾患です。

脂腺性毛包は毛が生えるだけでなく、皮脂を分泌するはたらきがあります。分泌された皮脂は皮膚表面を保護したり保湿する役割を持ちます。

この脂腺性毛包が詰まってしまうと、中に皮脂が溜まったり菌(アクネ菌)が繁殖してしまったりする事で毛孔に炎症が生じ、赤く腫れます。これがざ瘡(にきび)です。

一般的なにきび(尋常性ざ瘡)は思春期に多いですが、これは男性ホルモンが増える事によって皮脂の分泌量が増え、毛孔が詰まりやすくなるためです。

次に外用ステロイド剤とはどのような作用を持つお薬なのかを説明します。

ステロイドの作用は3つあります。それは、

  • 免疫抑制作用(免疫のはたらきを抑える)
  • 抗炎症作用(炎症を抑える)
  • 皮膚増殖抑制作用(表皮の増殖を抑える)

です。

このうち、ステロイドざ瘡に関係するのは主に「免疫抑制作用」になります。

ステロイドには免疫のはたらきを抑える作用があります。免疫とは身体に備わっているシステムで「ばい菌などの異物が体内に侵入した時にそれを攻撃・排除するシステム」の事です。

身体に細菌が侵入してくると、白血球などの免疫細胞がこれを速やかに感知・攻撃する事で細菌が体内で増殖する事を抑えます。

しかし一方で免疫が暴走してしまったり、免疫が過剰に生じてしまう事が原因となる疾患もあります(自己免疫疾患やアレルギー疾患など)。これらの疾患に対してはステロイドを使う事で免疫を適正に抑えてあげる事が出来るのです。

ステロイド外用剤は本来このようなケースに使用されます。

そしてこの2つを理解すると、ステロイドざ瘡が生じる機序が見えてきます。

その機序とは次のようなものです。

まず何らかの皮膚疾患の治療のためにステロイド外用剤が使われます。ステロイドによって皮膚の免疫は抑制されますので、ばい菌を攻撃する力が低下します。すると毛孔内の細菌(アクネ菌など)が増殖しやすくなります。

元々、アクネ菌は毛孔内の中に存在している常在菌で、適正な量であれば身体に大きな害を来たす菌ではないのですが、ステロイドによってその量が増えてしまうと毛孔内の中で悪さをするようになってしまいます。

これによってざ瘡を発症しやすくなるのです。

では次の項からステロイドざ瘡の原因、症状、治療法についてより詳しく見ていきましょう。

2.ステロイドざ瘡の原因

ステロイドざ瘡はどのような原因で生じるのでしょうか。

ステロイドざ瘡の主な原因は、ステロイドによって免疫が抑えられる事です。これによって本来は毛孔内で悪さをせずに住み着いているアクネ菌が過剰に増殖してしまい、毛孔内で炎症を引き起こしてしまうようになるのです。

その結果、ざ瘡(毛穴の炎症)が生じます。

またそれ以外にも大量にステロイドを塗っている場合やステロイドを服用している場合などでは、ステロイドが体内に吸収される事で性ホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)のバランスを崩してしまい、これにより皮脂量が増えて毛穴が詰まりやすくなるため、ざ瘡を出来やすくしてしまうという理由も考えられています。

【ステロイドざ瘡が生じる原因】

・ステロイドの免疫抑制作用によって、アクネ菌が増殖しやすくなる事で生じる
・ステロイド量が多い場合は、性ホルモンのバランスの乱れによる皮脂量増加も原因となる

3.ステロイドざ瘡の症状

ステロイドざ瘡ではどのような症状が生じるのでしょうか。

ステロイドざ瘡は、ステロイドの塗布によって「ざ瘡(にきび)」が生じるのが症状になります。

にきびも「白にきび」「赤にきび」などに分けられる事がありますが、ステロイドざ瘡の場合はアクネ菌が増殖する事によって炎症が生じるのが原因ですので、いわゆる「赤にきび」になります。

また尋常性ざ瘡(一般的なにきび)と異なり、同じような大きさのにきびが均一にステロイドを塗った部位に散在するような形状を取ります。これはどの部位も同じ原因でざ瘡が生じているためです。

塗布してから1~2週間程度で出現し、強いステロイドを使えば使うほど発症する可能性は高くなります。これはステロイドが強ければ強いほど免疫を抑える作用が強いためです。

ちなみに代表的なステロイドの強さを紹介すると、

【分類】 【強さ】 【商品名】
Ⅰ群 最も強力(Strongest) デルモベート、ダイアコートなど
Ⅱ群 非常に強力(Very Strong) アンテベート、ネリゾナ、マイザーなど
Ⅲ群 強力(Strong) ボアラ、リンデロンV、リドメックスなど
Ⅳ群 中等度(Medium) アルメタ、ロコイド、キンダベートなど
Ⅴ群 弱い(Weak) コートリル、プレドニンなど

となっています。

Ⅰ群のステロイドがもっともステロイドざ瘡が生じやすく、Ⅴ群がもっとも生じにくいという事です。

また通常のにきび(尋常性ざ瘡)は顔面に好発しますが、ステロイドざ瘡はステロイドを塗布した部位に見られ、発症部位は顔面に限りません。

比較的多い部位としては胸部・背部など、ステロイドをよく塗る部位になります。

【ステロイドざ瘡の症状】

・均一な赤色のざ瘡がステロイド塗布後1~2週間して出現する
・強いステロイドを使うほど生じやすい
・ステロイドを塗っていればどこにでも生じるが胸部・背部に多い

4.ステロイドざ瘡の治療法

ステロイドざ瘡は、どのように治療すれば良いのでしょうか。

ステロイドざ瘡の治療は1つしかありません。ステロイドの塗布が原因なのですから、その治療の大原則はステロイドを中止する事です。

発症早期であればステロイドを中止する事により徐々に症状は改善していきます。

ステロイドを中止しただけではなかなか治らないという場合は、増殖しすぎたアクネ菌をやっつけるために、抗菌薬(菌をやっつけるお薬)を用いる事もあります。

この場合の治療薬は尋常性ざ瘡(通常のにきび)の治療に準じ、尋常性ざ瘡と同様に治療薬が用いられます。

【ステロイドざ瘡の治療法】

・原則はステロイドの中止
・ステロイドの中止だけで効果不十分の際は抗菌薬など尋常性ざ瘡の治療に準じる

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