フケが多くなる「脂漏性皮膚炎」ってどんな病気?

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん:Seborrheic Dermatitis)は、主に頭部や顔、脇の下などにできやすい、皮膚の赤みと表皮の剥がれ(鱗屑、フケ)を伴う疾患です。

「脂漏性」という名前の通り、皮脂が多い部位に生じやすいという特徴があります。

重篤な症状が生じる疾患ではありませんが、自然に様子をみていてはいつまでも治らない事も多く、脂漏性皮膚炎は早めに病院を受診して治療をしてもらうべき疾患です。

ちなみに脂漏性皮膚炎は乳児と思春期以降に生じやすい疾患ですが、それぞれで症状や経過が異なります。このコラムでは思春期以降の脂漏性皮膚炎について説明させていただきます(乳児に生じる脂漏性皮膚炎は「乳児脂漏性湿疹」と区別されています)。

ここでは脂漏性皮膚炎という疾患について、その原因や症状、治療法などを詳しく説明させて頂きます。

1.脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎とはどのような疾患なのでしょうか。

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は皮膚疾患の一つで、特に脂漏部位(皮脂が多い部位)に皮膚炎が生じさせてしまう疾患です。

皮脂は皮膚表面に分泌される脂(あぶら)で男性で分泌量が多いものの、あらゆる人で分泌されています。皮脂の主成分は中性脂肪(TG:トリグリセリド)という脂質で、これは水分をはじく作用があります。

油は水をはじきますよね。それと同じです。

皮脂は日常で悪者のように扱われがちで、皮脂を除去するための洗顔ペーパーや脂取り紙などが売れていますが、、実は皮脂は身体にとって重要な役割を果たしている物質です。

皮脂は皮膚表面に膜を張る事で身体から水分が失われないようにし、皮膚の乾燥を予防したり保湿を促す役割があります。また皮膚から異物や病原菌が簡単に体内に侵入しないようにするバリアのような役割も担っています。

このように身体にとって大切な皮脂なのですが、時に皮膚に害を与えてしまう事があります。

皮膚表面には常在菌(普段からその部位にいる、特に悪さをしない菌)がいますが、常在菌によっては皮脂を分解する能力を持っているものがいます。そのような菌によって中性脂肪が分解されると遊離脂肪酸が生成され、この遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与え、皮膚炎を引き起こしまいます。

これによって生じるのが脂漏性皮膚炎です。

2.脂漏性皮膚炎の原因

脂漏性皮膚炎はどのような原因で生じるのでしょうか。

脂漏性皮膚炎の原因は、「遊離脂肪酸が皮膚を刺激する事」です。

遊離脂肪酸は刺激性の強い物質であるため、皮膚表面を障害し、皮膚炎を発症させてしまうのです。

ではこの遊離脂肪酸はなぜ生じるのでしょうか。

先ほども説明したように私たちの皮膚表面には皮脂が分泌されています。

この皮脂は主に中性脂肪(トリグリセリド)という物質からできているのですが、皮膚にいる常在菌の中にはこの中性脂肪を分解する酵素(リパーゼ)を持っているものがいるのです。

中性脂肪が菌によって分解されると遊離脂肪酸ができます。そしてこの遊離脂肪酸は刺激性を持つため、皮膚表面で多くなりすぎると皮膚を傷つけてしまうというわけです。

ここから脂漏性皮膚炎が生じやすくなる原因は、次のどちらかである事が分かります。

  1. 皮脂の分泌が増えてしまう
  2. 中性脂肪を分解する菌が増えてしまう

前者が生じる要因としては、

  • 食生活(脂質の多い生活、ビタミンB不足)
  • 環境(特に冬)
  • 喫煙などの生活習慣
  • ストレス
  • 睡眠不足

皮脂の主成分は脂質ですので、脂質が多い食生活を続けていれば皮脂も出やすくなります。またビタミンB群(特にビタミンB6)の低下も原因になる事が報告されています。

また皮脂の分泌は自律神経が支配しているため、自律神経のバランスを崩してしまうような生活習慣は皮脂量を増やしてしまう可能性があります。

ちなみに後者が生じる原因としても同じような原因が考えられます。

中性脂肪を分解する酵素を持つ代表的な菌は「マラセチア(Malassezia)」という真菌です。マラセチアは私たちの皮膚表面に普段から住み着いている常在菌なのですが、その数が増えてしまうと皮脂がたくさん分解されてしまうため、脂漏性皮膚炎を引き起こしやすくなります。

マラセチアは皮脂を栄養源として食べる菌ですので、皮脂の分泌が多い場所で増殖しやすくなります。そのため先ほど挙げた皮脂が増える要因というのはマラセチアを増やす要因にもなるのです。

【脂漏性皮膚炎が生じる原因】
・皮脂に含まれる中性脂肪をマラセチアが遊離脂肪酸に分解し、遊離脂肪酸が皮膚を刺激する事で生じる

3.脂漏性皮膚炎の症状

脂漏性皮膚炎ではどのような症状が認められるのでしょうか。

まず脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位で生じるという特徴があります。

皮脂(中性脂肪)が分解されてできる遊離脂肪酸が原因ですから、皮脂が多い部位でないと生じないのです。

私たちの皮膚の中で特に皮脂の分泌が多い部位としては、

  • 顔(額や鼻)
  • 頭皮
  • 腋窩(わきの下)

などがあります。脂漏性皮膚炎もこのような部位が好発部位になります。

好発する年齢としては、思春期(おおよそ10~11歳以降)から増えると言われており、特に男性で多くみられます。これは男性ホルモンに皮脂の分泌を促進させる作用があるためです。

具体的な皮膚症状としては、遊離脂肪酸の刺激による皮膚の炎症(皮膚炎)が生じます。皮膚の発赤(赤み)が生じ、鱗屑(表皮がはがれおちること)も認めます。

通常、かゆみは強くはありません。

成人の脂漏性皮膚炎は適切に治療しないと長期化する事も多く、その場合は慢性的な皮膚炎が続くため表皮が肥厚して見える事もあります。

【脂漏性皮膚炎の症状】

・思春期以降の男性に好発
・皮脂が多い部位(顔、頭皮、腋窩など)で多い
・皮膚の発赤と鱗屑を認め、長期化している際は表皮の肥厚を認める事も
・通常、かゆみはあまりない

4.脂漏性皮膚炎の治療法

脂漏性皮膚炎はどのように治療すれば良いのでしょうか。

脂漏性皮膚炎の治療法は、脂漏性皮膚炎が生じる機序から考えると分かりやすいです。

脂漏性皮膚炎は、

  • 皮脂が多くなりすぎている事
  • マラセチアが過剰に増殖してしまっている事

によって皮膚炎が生じている状態です。

という事は、これを治療するためには、

  • 皮脂を少なくする
  • マラセチアをやっつける

の2つのアプローチがある事が分かります。

皮脂を少なくする治療としては、「規則正しい生活」が挙げられます。

具体的には、

  • 脂質を取り過ぎない
  • 睡眠をしっかりとる
  • 適度な運動をする
  • ストレスを溜め込みすぎない
  • 適度な入浴や洗髪で余分な皮脂を落とす

といった事が挙げられるでしょう。

またビタミンB群の低下が脂漏性皮膚炎を引き起こしやすくするという報告もあり、ビタミンをしっかりと取る事も大切です。

ビタミンは食品に含まれているため、規則正しい食生活を送っていれば低下する事はないのですが、どうしても食事で十分なビタミンが摂取できない時は、

  • ビタミンB2であるフラビタン
  • ビタミンB6であるピドキサール

といったお薬を処方してもらい、服用するのも1つの方法です。

またマラセチアをやっつける方法としては、

  • 抗真菌薬の外用液

が挙げられます。マラセチアは真菌(いわゆるカビ)ですので、抗真菌薬によってやっつける事が出来ます。

抗真菌薬の外用剤(いわゆる塗り薬)の中でも、皮膚が厚い頭皮に用いるのであれば液剤(ローションタイプ)が適しています。その理由は、ローションはベタベタせず浸透力に優れるためです。

反対に顔や腋窩であればクリーム剤や軟膏剤でもよいでしょう。軟膏は浸透性は弱いものの保湿力が高いという特徴があります。

また最近では抗真菌薬を配合した脂漏性皮膚炎用のシャンプーもありますので、そういったものを利用するもの手です。

【脂漏性皮膚炎の治療法】

・皮脂の分泌が過剰にならない生活習慣を心がける
・マラセチアをやっつけるために抗真菌薬を塗る
・補助的にビタミン剤を服用する事もある

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする