むずむず脚症候群が生じる原因とは

むずむず脚症候群(RLS:Restless Legs Syndrome)は、「足のむずむず感」が生じる疾患です。

足のむずむず感は命に関わるような症状ではありませんが、極めて不快な症状であり、患者さんの生活の質を大きく損ないます。むずむず脚症候群は夜、寝ている時に生じやすいのですが、これによって眠りは妨げられ、日中の生活にも大きな影響をきたす事があります。

「足がむずむずする」という症状は「痛み」や「苦しい」などといった症状と比べると、「病気に伴う症状」という認識を持ちずらく、そのためむずむず脚症候群によって辛い思いをしていても、「体質だから仕方ない」「こんな症状で病院を受診したら先生に怒られてしまう」と治す事を諦めてしまっている方は多くいらっしゃいます。

確かに少し変わった症状を認める疾患ですが、このむずむず脚症候群はどのような原因によって発症してしまうのでしょうか。

ここではむずむず脚症候群が生じる原因について詳しくお話していきます。

1.むずむず脚症候群とは

むずむず脚症候群の原因について説明する前に、まずはむずむず脚症候群という疾患の全体像を理解しましょう。

むずむず脚症候群は主に下肢に不快な感覚(むずむずする感じ)が生じる疾患です。足がむずむずするするので絶えず脚を動かしてしまう事から、「下肢静止不能症候群」「レストレスレッグ症候群」と呼ばれる事もあります。

むずむず脚症候群の症状である「足のむずむず感」にはいくつかの特徴があります。

まずこのむずむず感は「下肢」に生じやすい症状になります。進行してくると体幹や上肢までむずむず感が認められる事もありますが、まずは下肢から生じるケースがほとんどです。

またこのむずむず感は、安静時(じっとしている時)に悪化しやすく、運動時(動かしている時)に改善しやすいという特徴があります。そのため寝ている時には悪化しやすく、むずむず脚症候群は高い頻度で睡眠を障害します。

また日中でも事務仕事をしていたり、授業を受けていたりという静止時に悪化しやすいため、生活に大きな支障を来たします。

反対に足を動かしているとむずむず感は一時的には軽くなるため、患者さんは絶えず足を動かすようになり、これがむずむず脚症候群が「下肢静止不能症候群」「レストレスレッグ症候群」とも呼ばれる理由です。

しかし寝ようとしている時に足を絶えず動かしていれば当然眠れません。仕事や授業中に足をずっと動かしていれば作業に集中できませんし、周囲からも怒られてしまいます。

このようにむずむず脚症候群は生活に大きな支障をきたす疾患なのです。

むずむず脚症候群によって足のむずむずが生じていても、それを「病気によるもの」とは認識していない方も多く、むずむず脚症候群は適切な治療が行われずに放置されてしまう事がよくあります。

しかし適切な治療を行えば、症状を改善させる事は十分可能です。

むずむず脚症候群はその原因が完全には特定されていないものの、複数の原因因子があると考えられています。代表的な原因を上げると、脳神経のドーパミン量が不足したり、身体の鉄分が不足する事で発症すると考えられています。

そのため原因に応じて、ドーパミン量を増やすお薬を使ったり、鉄分を補給したりという治療法が有効です。また生活リズムを整えたり、タバコやカフェイン・アルコールを控えるといった生活習慣の工夫を行う事も症状の軽減には有効です。

2.むずむず脚症候群が生じる機序とは

むずむず脚症候群ではどうして足がむずむずしてしまうのでしょうか。

前項でも説明したように、むずむず脚症候群は何か単一の原因によって生じる疾患ではなく、その発症機序にはいくつかの要因があると考えられています。

しかしその中でも大きな要因を占めるのが、

  • 鉄の欠乏
  • ドーパミン量の低下

の2つです。

鉄分が欠乏していたり、ドーパミン神経が抑制されるような状態であるとむずむず脚症候群は発症しやすいのです。

そしてこれらの原因から、むずむず脚症候群が発症するのは次のような発症機転が推測されています。

まず、何らかの原因によって脳の鉄分が欠乏します。脳は多数の神経細胞の集合体ですので、脳の鉄分が不足すれば、脳の神経細胞は十分なはたらきが出来なくなります。

すると脳の神経細胞のうち、ドーパミン系神経細胞の活性が低下してしまいます。脳に存在する神経は中枢神経と呼ばれ、全身に張り巡らされている末梢神経のはたらきをコントロールする役割を担っています。

中枢神経の活性が低下すると、末梢神経のはたらきを適切に制御できなくなります。すると末梢神経は反応性に過敏状態(興奮状態)になってしまい、これによってむずむず感(異常感覚)が発症するのではないかというのが、現時点で考えられている仮説です。

この機序はあくまでも仮説に過ぎませんが、むずむず脚症候群を発症する方には鉄欠乏やドーパミン欠乏が認められる事が少なくないため、ある程度の根拠に基づいた仮説となります。

3.むずむず脚症候群を引き起こす各原因について

最後にむずむず脚症候群を引き起こす原因の各々について、より詳しく見ていきましょう。

Ⅰ.鉄欠乏

体内の鉄が欠乏するとむずむず脚症候群は発症しやすくなります。

鉄が欠乏するパターンというのは、

  • 鉄の摂取が少ない
  • 鉄の排泄が多い

の2つが考えられます。

鉄の摂取が少ないというのは、栄養の偏りが挙げられます。また妊娠中は赤ちゃんに血液を送るため血液量が増え、必要な鉄分の量も増えるため、鉄欠乏になりやすくなります(血液中の成分である赤血球は鉄を原料として作られます)。

また鉄の排泄が多いというのは、分かりやすく言えば「出血が多い」という事になります。

具体的には女性が月経で出血量が多くて発症したり、消化管出血(胃潰瘍や大腸がんなど)があってそれによって腸管からどんどん血が失われていき、鉄欠乏が進行するというパターンもあります。

Ⅱ.ドーパミンの欠乏

ドーパミンが欠乏してもむずむず脚症候群が発症しやすくなります。

ではドーパミンが欠乏するのはどのような時でしょうか。

私たちの身体の中で、ドーパミンという物質は「神経伝達物質」としてはたらいています。神経伝達物質というのは神経から神経に情報を伝達する物質の事です。神経と神経が接続している部位を「神経間隙」と呼びますが、この神経間隙の中にドーパミンのような神経伝達物質が分泌され、神経から神経に情報を伝達しているのです。

ドーパミンが減少し、このような神経伝達が行いにくくなるとむずむず脚症候群は発症しやすくなります。

ドーパミンが減少するような原因としては次のような状態が考えられます。

  • パーキンソン病
  • 薬剤性パーキンソニズム

パーキンソン病というのは、脳(中でも中脳の黒質という部位)のドーパミン神経が脱落してしまう疾患です。ドーパミン神経が脱落していけばドーパミンの量も減っていきます。

これによりパーキンソン病では、

  • 無動(動作が遅く・乏しい)
  • 振戦(ふるえ)
  • 固縮(手足のこわばり)
  • 姿勢反射障害(バランスをとりにくくなり転びやすくなる)

といった症状が生じます。

パーキンソン病は脳のドーパミン量が減りますから、むずむず脚症候群も起こしやすくなります。

またお薬によってはドーパミンのはたらきをブロックしてしまう作用を持つものがあります。これはむずむず脚症候群を引き起こしやすくします。

具体的には、

  • 抗精神病薬(主に統合失調症の治療に使われるお薬)
  • 制吐剤(いわゆる吐き気止め)

などはドーパミン遮断作用があるものが多く、むずむず脚症候群の原因となりえます。

Ⅲ.その他の原因

その他、むずむず脚症候群の原因となるものとしては、

  • 末梢神経障害
  • 精神的ストレス
  • タバコ、カフェイン、アルコール

などが指摘されています。

むずむず脚症候群は足の神経(末梢神経)の興奮によって生じます。その原因としては上記の通り鉄分不足やドーパミン不足が多いのですが、末梢神経自体に障害が生じ、興奮状態になってもむずむず脚症候群と同じような症状が生じる可能性があります。

また精神的ストレスによって神経のはたらきが不安定になると、末梢神経も過敏となり足のむずむずが生じる事があります。

タバコやカフェイン・アルコールといったし好品は詳細な機序は不明ですが、むずむず脚症候群を悪化させる事が多い事が知られています。

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