クインケ浮腫(血管性浮腫)の原因と治療法

クインケ浮腫(Quincke’s Edema)は皮膚疾患の1つで、唇(くちびる)や眼瞼(まぶた)が急激に腫れる疾患です。「血管性浮腫」「血管神経性浮腫」と呼ばれる事もあります。

クインケ浮腫は遺伝性のものと遺伝性でないものがあり、両者で原因や治療法は異なります。また稀にですが重篤な状態を引き起こす事があるため、一定の注意が必要な疾患になります。

クインケ浮腫はどのような原因で生じ、発症したらどのように対処していけばいいのでしょうか。

ここではクインケ浮腫について詳しく説明させて頂きます。

1.クインケ浮腫とは

クインケ浮腫(Quincke’s Edema)は、皮下組織で血管透過性が亢進し、血液中の成分が血管の外に漏れやすくなってしまう事で生じる浮腫になります。

「血管透過性が亢進する」というのは、血管の中にある水分や物質が血管の外に漏れやすくなってしまう状態になる事を指します。

通常、血管からは血液が漏れないように作られていますが、遺伝的に漏れやすい人がいたり、アレルギー反応で血管透過性が亢進すると漏れやすくなってしまいます。

このような機序が生じた結果、皮下組織が腫れてしまうのがクインケ浮腫(血管性浮腫)になります。

ちなみにこの機序は蕁麻疹(じんましん)と同じです。

皮膚は表面から表皮・真皮・皮下組織という層になっています。蕁麻疹は真皮に生じますが、クインケ浮腫はその更に奥の皮下組織に生じるのが違いです。

そのため、クインケ浮腫は「皮下組織に生じた蕁麻疹」という事も出来ます。

蕁麻疹は真皮に出来ます。真皮は皮下組織よりも浅い部位にあるため、そこに浮腫が生じると膨疹(膨らんでいるような発疹)が出来たり、紅斑(皮膚が赤くなること)が生じます。クインケ浮腫はそれよりも深い部位に出来るため、発疹ではなくその部位が全体的に腫れるような症状の出方になるのです。

クインケ浮腫では基本的に大きく害を来たすような症状はありません。唇やまぶたが急に腫れるためびっくりしますが、この症状は数日も経てば自然と改善します。

しかし稀に重篤な事態を引き起こす事があるため、クインケ浮腫はその特徴をしっかりと理解し、正しく対応する事が大切になります。

2.クインケ浮腫の原因

クインケ浮腫はどのような原因で生じるのでしょうか。

クインケ浮腫は大きく、

  • 遺伝性
  • 非遺伝性

の2つに分けられ、このそれぞれで原因は異なります。

Ⅰ.遺伝性の原因

遺伝性のクインケ浮腫は、遺伝的に血管が漏れやすい状態になっているために生じます。「HAE(Hereditary Angioneurotic Edema:遺伝性血管神経性浮腫)」とも呼ばれています。

HAEは常染色体優性遺伝という形式で遺伝しますが日本では極めて少なく、わずか10家系ほどしかいないと報告されています。そのため滅多に見かける疾患ではありません。

遺伝性の場合は症状が重篤になりやすいため、注意して生活をしなくてはいけません。しかし同家系で同様の疾患のある方が多いため、すでに家族が医師から十分な説明を受け十分な注意を払って生活しているため、適切に対処されている事がほとんどです。

HAEは、C1エステラーゼインヒビター(C1INH)という酵素が生まれつき欠損しているために生じます。C1INHが欠損していると、血管透過性を亢進させてしまう物質が活性化しやすくなるため、血管外に血液中の物質や水分が漏れやすくなり、その部位が腫れてしまうのです。

血管透過性とは、血管の中から外に、血液中の水分や物質の出ていきやすさの事です。通常、血管から血液が漏れてしまうと困りますから、血管の透過性というのは低下しています。しかしばい菌が暴れていたりする部位だと、その部位に白血球などの血液中の成分を送りたいため、血管透過性が亢進します。

クインケ浮腫は、本来であれば血管透過性が亢進する必要のないところで血管透過性が亢進してしまうため、その部位が腫れてしまうのです。

Ⅱ.非遺伝性の原因

非遺伝性のクインケ浮腫は、蕁麻疹と同じくアレルギー反応によって生じると考えられています。

クインケ浮腫は皮下組織に生じますが、皮下組織の肥満細胞(アレルギー細胞)が何らかの刺激によってヒスタミンというアレルギー物質を分泌すると、ヒスタミンは血管透過性を亢進させる作用があるため、血管透過性が亢進し、その部位が腫れてしまうのです。

このようなアレルギー反応を引き起こす原因は様々で、原因が明確に特定できない事も少なくありません。

様々な物質がアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)になりうる他、疲れやストレスによって誘発される事もあります。

3.クインケ浮腫の症状

クインケ浮腫ではどのような症状が認められるのでしょうか。

クインケ浮腫は、

  • くちびる(口唇)
  • まぶた(眼瞼)
  • 陰部

に生じやすいという特徴があります。もちろん例外はあり、全身の至るところに生じる可能性はあるのですが、多くはこの3か所です。

症状は血管透過性亢進による、その部位の「腫れ(腫脹)」になります。蕁麻疹と異なり、かゆみはあまり生じません。

アレルギー反応の中でもⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)の機序で生じるため、数時間で症状が出現し、数時間(長くても1,2日)で症状は消えていきます。

ただし症状が消えた後も何度も繰り返しやすいという特徴があります。

クインケ浮腫は、基本的にはこのような症状になり、急にくちびるやまぶたが腫れるためびっくりするものの、症状は一時的で大きな害は生じません。

しかし、頻度は非常にまれではありますが、

  • のどや気管が腫れる事による呼吸困難
  • 脳が腫れる事による頭痛が意識レベル低下
  • 胃腸が腫れる事による腹痛、嘔吐
  • 心臓が腫れる事による急性心不全
  • 腎臓が腫れる事による急性腎不全

などが生じる事があり、これらはすぐに対処しないと最悪命の危険もある、極めて重篤な状態になります。

息苦しさ、お腹の不調や頭痛など、通常のクインケ浮腫では生じないような症状が認められたらすぐに病院を受診する必要があります。

4.クインケ浮腫の治療法

クインケ浮腫が生じてしまったら、どのように対処すれば良いでしょうか。

クインケ浮腫の治療法は、「遺伝性」か「非遺伝性」かで異なります。

遺伝性の場合、原因はC1エステラーゼインヒビター(C1INH)の欠損ですので、

  • C1インヒビターを投与する
  • C1インヒビターを産生亢進させる物質(アンドロゲンなど)を投与する

などが治療法になります。遺伝性のクインケ浮腫は極めて珍しい疾患ですので、一般の医師はこのような治療にあまり慣れていません。これらの治療法を行う場合は、専門の皮膚科の先生にしていただくのが良いでしょう。

非遺伝性の場合、原因は蕁麻疹のようなアレルギー反応ですので、治療は蕁麻疹に準じます。

症状が軽度であれば様子をみているだけでも自然と改善していきます。しかし腫れが強い場合はお薬を用いることもあります。非遺伝性のクインケ浮腫は肥満細胞から分泌されるヒスタミンが原因ですので、ヒスタミンのはたらきをブロックするお薬が用いられます。

このようなお薬は「抗ヒスタミン薬」と呼ばれます。

代表的な抗ヒスタミン薬を挙げると、

などがあります。これ以外にも抗ヒスタミン薬は数多くの種類がありますので、自分に合ったお薬を医師と相談しながら見つけていきましょう。

またクインケ浮腫は非常にまれですが重篤な症状を引き起こす事があります。重篤な症状は特に遺伝性のクインケ浮腫(HAE)で生じやすい傾向があります。クインケ浮腫の既往がある方は、このようなリスクがある事は常に念頭においておくようにしましょう。

そして重篤な症状の予兆があれば、すぐに病院を受診するようにしましょう。このような症状は急激に進行しますので、発症した場合は1分1秒を争います。例えば気管が浮腫でふさがって息が出来なくなってしまった場合、その状態が数分続いただけで命に関わります。

このような事態が予測される場合は躊躇なく救急車などを利用し、1秒でも早く医療機関を受診するようにしてください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする