原発性アルドステロン症ではどのような症状が生じるのか

原発性アルドステロン症(Primary Aldosteronism)は、アルドステロンというホルモンが増えてしまう疾患です。

アルドステロンが増えると血圧が上がるため、原発性アルドステロン症は一見すると普通の高血圧だと判断されてしまいがちです。しかし原発性アルドステロン症は普通の高血圧症(本態性高血圧症)とは全く異なる原因で血圧上昇が起こっています。

また普通の高血圧症では生じないような症状が認められる事もありますので、ただ血圧が高いだけでない場合は「原発性アルドステロン症かもしれない」と疑う事が必要です。

高血圧症の10%ほどは原発性アルドステロン症ともいわれており、その頻度は少なくはないのです。

では原発性アルドステロン症では、どのような症状が生じるのでしょうか。

ここでは原発性アルドステロン症の症状について、アルドステロンのはたらきの説明も交えながら紹介させていただきます。

1.原発性アルドステロン症とは

原発性アルドステロン症とはどのような疾患でしょうか。まずはこの疾患の全体像を把握しましょう。

原発性アルドステロン症(PA:Primary Aldosteronism)は、高血圧症の1つです。高血圧症とはその名の通り「血圧が高くなる疾患」の事です。

実は高血圧症には、

  • 本態性高血圧症
  • 二次性高血圧症

の2種類があります。

本態性高血圧症とは、いわゆる通常の高血圧の事です。正確な意味としては明確な単一の原因で説明できない高血圧の事であり、喫煙や食生活の乱れ、運動習慣の低下などの複数の要因が続く事によって全身の血管の動脈硬化が生じる事で発症します。

高血圧症の9割は本態性高血圧だと考えられており、本態性高血圧症は日常でよく見かける疾患の1つです。

対して二次性高血圧とは、何らかの単一の原因によって血圧が上がっているような状態です。例えばお薬の副作用によって血圧が上がっているような状態(薬剤誘発性高血圧)や、腎臓が障害を受ける事で血圧が上がってしまうような状態(腎性高血圧症)などがあります。

そして原発性アルドステロン症も二次性高血圧症になります。

原発性アルドステロン症は、「アルドステロン」というホルモンが増えてしまう事によって血圧が上がっている疾患です。

ではアルドステロンとはどんなホルモンなのでしょうか。

アルドステロンは副腎皮質という部位から分泌されるホルモンで、体内のNa+(ナトリウムイオン)や水分を増やし、K+(カリウムイオン)を減らすはたらきがあります。

より具体的に見ると、尿を作る過程で生じる「原尿」からNa+や水分を体内に引き戻す(再吸収)はたらきがあります。反対にK+を体内から原尿に移す事で、そのまま尿として排泄させるはたらきがあります。

原発性アルドステロン症が生じてアルドステロンの分泌量が増えると、体内のNa+や水分量が増えます。すると血圧が上がります。血圧というのは血液が血管壁を押す圧力の事ですので、血液中の水分が増えれば血圧は上がるためです。

原発性アルドステロン症は、見かけ上はただの高血圧に見えるため、本態性高血圧症として治療されてしまっている場合が少なくありません。

しかし実は高血圧症の10%ほどは原発性アルドステロン症であるという報告もあり、その頻度は決して少なくはなく、本態性高血圧症だと診断されているけど、実は原発性アルドステロン症だという方は少なからずいらっしゃると考えられています。

2.原発性アルドステロン症の機序から考える症状

原発性アルドステロン症ではどのような症状が生じるのでしょうか。

原発性アルドステロン症の症状を理解するためには、アルドステロンというホルモンの働きを理解する必要があります。

アルドステロンは、私たちの身体の中で日々分泌されているホルモンの1つで、副腎皮質と呼ばれる腎臓の上にある小さな臓器から分泌されています。

その本来の役割は原尿から身体に必要なNa+と水分を再吸収し、反対に余分なK+を体内から尿へ排泄する事です。

「原尿」や「再吸収」という意味をより深く理解するために、私たちの身体で尿が作られる仕組みについて説明させていただきます。

尿は腎臓に流れてきた血液を元に作られます。腎臓に流れてきた血液は、腎臓の糸球体と呼ばれる部位でろ過され、尿細管に移されます。このように尿細管に移された尿の素(もと)は、「原尿」と呼ばれます。

原尿は血液をおおざっぱにろ過しただけのものですので、身体にとって必要な物質がまだたくさん含まれています。

そのため原尿をそのまま尿として排泄してしまうと、身体に必要な物質がたくさん失われてしまいます。それでは困るため、尿細管には原尿から必要な物質を体内に再吸収する仕組みがあります。

つまり糸球体でざっくりと血液がろ過されて原尿が作られ、尿細管によって原尿から必要な物質が体内に戻され(再吸収)、最終的に排泄される尿が出来上がるわけです。

この再吸収には様々なホルモンやチャネルが関係しているのですが、その1つがアルドステロンなのです。

アルドステロンは原尿中に含まれるNa+や水分を体内に再吸収します。そしてその代わりに体内のK+を原尿に移します。

アルドステロンの本来のはたらきは、原尿に移動しすぎてしまったNa+と水分を体内に戻し、体内の余分なK+を原尿に移す事なのです。これにより体内の水分や電解質を適切に調整しています。

しかしアルドステロンの分泌が異常に増えてしまうと、体内のNa+と水分が増えすぎてしまい、K+が減り過ぎてしまいます。これが「原発性アルドステロン症」です。

このアルドステロンのはたらきが分かると、原発性アルドステロン症で生じる症状が理解できるようになります。

3.原発性アルドステロン症の症状

前項では原発性アルドステロン症の機序について考えてきました。次は、このような機序によってどのような症状が生じるのかを考えてみましょう。

Ⅰ.血圧上昇

原発性アルドステロン症の主症状は血圧上昇です。

アルドステロンによって体内にNa+と水分が増えると、血圧は上がります。

血圧というのは血液が血管壁を押す圧力の事です。これは血液量が増えれば高まります。アルドステロンによって水分量が増えれば血液量も増えますから血圧は上がるのです。

原発性アルドステロン症の血圧上昇は、本態性高血圧症の血圧上昇と一見して見分けがつきません。そのため、原発性アルドステロン症が原因で生じている血圧上昇を、「本態性高血圧症」だと診断されてしまう事もあります。

しかし両者はその機序が全く異なります。

本態性高血圧症は、様々な要因(喫煙、塩分摂取、加齢、運動不足など)によって動脈が固くなり(動脈硬化)、血圧が上がります。

対して原発性アルドステロン症は、アルドステロンの分泌が過剰となり、Na+と水分が体内で過剰となるために血圧が上がるのです。

原発性アルドステロン症による血圧上昇は、本態性高血圧症と比べて血圧が下がりにくく、また心不全や腎障害、脳血管障害(脳出血や脳梗塞)のリスクが高いと言われていますので、両者をしっかりと見極める事が大切です。

特に、

  • 血圧が上がるような生活習慣でないのに血圧が上がっている方
  • お薬でなかなか血圧が下がらない方
  • 若年で高血圧になってしまっている方

などでは原発性アルドステロン症の可能性が高いと考えられます。

Ⅱ.脱力・疲労感

アルドステロンによって体内のカリウムが低下すると様々な症状が引き起こされます。

その1つが脱力(力が入りにくくなる)、疲労感(疲れやすくなる)という事です。また手足の筋肉のけいれん(いわゆる「つる」という現象)も生じやすくなります。

高血圧があり、特に原因もないのに脱力や疲労感を感じる場合は、原発性アルドステロン症を疑う1つの根拠となります。

Ⅲ.食欲不振、便秘、嘔吐

アルドステロンによって体内のカリウムが低下すると、消化管(胃腸)の動きが悪くなります。

すると食欲が出なくなったり、胃部に不快感を感じるようになります。更に胃腸の動きが低下すると便秘になったり嘔吐を繰り返すようになる事もあります。

Ⅳ.不整脈

アルドステロンによって体内のカリウムが低下すると、心臓にも悪影響があります。

具体的には不整脈を起こしやすくなります。不整脈の中でも徐脈性の不整脈を起こしやすくなり、これによりめまい、ふらつきや失神が生じる事もあります。

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