毛孔性紅色粃糠疹ってどんな病気?

毛孔性紅色粃糠疹(もうこうせいこうしょくひこうしん:Pityriasis Rubra Pilaris)は、皮膚の一部が紅色になり、皮(角質)が厚くなってしまう皮膚疾患です。

皮膚疾患の中でも「炎症性角化症」に分類されます。

まるで地図のように皮膚の一部が紅色になり、見た目的には痛々しい疾患ですが、自覚症状はあまりありません。見た目から心配される方も多い疾患ですが、基本的には自然と改善する事も少なくない疾患です。

ここでは毛孔性紅色粃糠疹について、その原因や症状、治療法などを詳しく説明させて頂きます。

1.毛孔性紅色粃糠疹とは

毛孔性紅色粃糠疹とはどのような疾患なのでしょうか。まずはこの疾患の全体的な特徴について紹介します。

毛孔性紅色粃糠疹は皮膚疾患の一つで皮膚の一部が赤くなってしまう疾患です。またその部位の表皮角質は肥厚するため、皮膚に白い粉が吹いたように見えます(これは「おろし金様」と呼ばれます)。

毛孔性紅色粃糠疹は「炎症性角化症」に属する皮膚疾患です。角化症とは、皮膚の表面にある「角質」が肥厚してしまい、皮膚が乾燥し、硬くなってしまうような疾患です。そして炎症性角化症というのは、炎症によって角化症が生じる疾患になります。

つまり毛孔性紅色粃糠疹は、皮膚に炎症が生じる事によって角質の肥厚が生じている疾患だという事です。

毛孔性紅色粃糠疹はその名称の通りの特徴があります。

つまり、

  • 毛孔性:毛穴の部位に一致して
  • 紅色:皮膚が赤色になり
  • 粃糠疹:角質が増殖する事で角質が糠(ぬか)のように剥がれ落ちる

という症状が認められます。

皮膚の中でも生じやすい部位が決まっており、

  • 胸部(むね)
  • 腹部(おなか)
  • 顔面
  • 肘関節伸側
  • 膝関節伸側
  • 手の平・足の裏

などに生じます。

皮膚の一部分が地図のように紅色に変化し、その他の部位は普通の皮膚の色であるため、不気味に感じて慌てて病院を受診される方も多いのですが、基本的には悪い疾患ではありませんし、人にうつるような疾患でもありません。

生じやすい年齢層としては10歳以下と40代の2つがあり、前者を若年型、後者を成人型と呼ぶ事もあります。

見た目は不気味に感じるかもしれませんが、自覚症状としては乏しく、全く症状がない方もいらっしゃいます。人によってはかゆみを認める事もありますが程度は重くありません。また角化によって角質が肥厚・乾燥してひび割れが生じる事もあり、こうなると痛みが生じてしまいます。

自然と治癒する事もあるため症状がひどくなければ経過観察となりますが、症状があったり、少しでも症状を抑えたいという場合には塗り薬による治療が行われる事もあります。

また30%ほどは「紅皮症」という全身の皮膚に炎症が生じて真っ赤になってしまう疾患に移行する事も報告されており、注意は必要です。

2.毛孔性紅色粃糠疹の原因

毛孔性紅色粃糠疹はどのような原因で生じるのでしょうか。

実は毛孔性紅色粃糠疹の明確な原因というのはいまだ分かっていません。仮説として、ビタミンAの代謝に異常が生じているのではないかという「ビタミンA代謝異常説」が提唱されていますが、根拠は不十分です。

ビタミンAは、皮膚のケラチン形成を抑制することで角質を柔らかくする作用があります。このビタミンAをうまく合成できないと、角質が肥厚してしまい毛孔性紅色粃糠疹が発症するのではないかというのがビタミンA代謝異常説です。

しかしビタミンAによる治療に反応しない症例も少なくなく、この仮説だけですべて説明できるものではありません。

一部の若年型(10歳以下に生じるタイプ)では遺伝性が報告されており、これは常染色体優性遺伝の形式をとることが分かっています。

また一部ではHIV(エイズ)の感染によって発症した例も報告されています。

このように根本の原因は特定されていませんが発症機序としては、何らかの原因によって角化(角質の異常増殖)が生じ、これによって角質が毛孔(毛穴)につまってしまう事で毛穴の中で炎症が生じて皮膚が赤くなると考えられています。

【毛孔性紅色粃糠疹が生じる原因】
・原因不明(ビタミンA代謝異常説もあるが根拠不十分)
・若年型では常染色体優性遺伝も認められている
・HIVが原因となる例も報告されている
・角化によって角質が毛穴につまり、炎症が生じるため紅色になる

3.毛孔性紅色粃糠疹の症状

毛孔性紅色粃糠疹ではどのような症状が認められるのでしょうか。

まず部位としては、

  • 胸部(むね)
  • 腹部(おなか)
  • 顔面
  • 肘関節伸側
  • 膝関節伸側
  • 手の平・足の裏

などが好発部位になります。

これらの部位の一部が紅色に変化します。正常な皮膚との境界(境目)は非常に分かりやすく、そのためまるで地図のように一部の皮膚が赤くなっているように見えます。

これは皮膚に無数にある毛孔(毛穴)の中に増殖した角質が入り込んで詰まってしまうために生じています。

また角化が生じているため角質が剥がれやすくなっており、白い粉が吹いたように見える事もあります(おろし金様)。正常な皮膚でも老化した角質は「垢(アカ)」として剥がれていくものですが、角化症ではこの程度が強まるため、まるで糠(ヌカ)のように大量に角質が剥がれ落ちていき、そのために皮膚表面が粉を拭いているように白っぽく見えるのです。

ただし自覚症状はほとんどなく、あっても軽度のかゆみが生じる程度です。角化によって病変部の皮膚は乾燥しているため、特に足の裏などでひび割れが生じるとひび割れによる痛みが生じる事はあります。

また一部は紅皮症という全身の皮膚に炎症が生じて真っ赤になってしまう疾患に移行する事もあり、この場合は早急な治療が必要となります。

【毛孔性紅色粃糠疹の症状】

・胸腹部、顔面、肘・膝関節伸側、手のひら・足裏などに生じやすい
・まるで地図のように一部の皮膚が紅色に変化する
・異常に増殖した角質がどんどん剥がれるため、粉を粉を吹いているように見える事も
・一部は紅皮症に移行する事もあり、注意

4.毛孔性紅色粃糠疹の治療法

毛孔性紅色粃糠疹はどのように治療すれば良いのでしょうか。

毛孔性紅色粃糠疹は自然と治っていく事もあるため、特に症状がなかったり目立たない部位に生じているような場合では、何もせずに様子をみる事もあります。

この場合、個人差はありますが数年(1~2年)で少しずつ自然と改善していきます。

しかしかゆみや痛みなどの症状を認めていたり、目立つ部位に生じていて美容上問題がある場合は積極的な治療が行われる場合もあります。また紅皮症に移行しやすいと推測される症例やHIV感染に伴っているものなどは早期から積極的に治療が行われます。

毛孔性紅色粃糠疹は「角化症」に属する疾患ですので、治療も基本的には角化症に準じます。

角化症では角質は過剰に増殖してしまっているのが原因です。そのため、角質の増殖を抑えるようなお薬が効果を認めます。

具体的には、

  • ステロイド外用剤
  • 活性型ビタミンD3製剤
  • サリチル酸ワセリン
  • レチノイド

などが用いられます。

ステロイド外用剤は炎症を抑える作用があり、また皮膚細胞の増殖を抑える事で表皮を薄くする作用があります。毛孔性紅色粃糠疹は角質細胞の増殖によって毛孔に炎症が生じている疾患ですのでステロイド外用剤は効果が期待できます。

ステロイド外用剤も強さによって様々なものがあり、症状の程度や塗る部位によって最適な強さが異なります。主治医によく診てもらい、最適な強さのステロイド外用剤を使うようにしましょう。

ステロイド外用剤には多数のお薬がありますが、一例をあげると、

  • アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル):非常に強い
  • ボアラ(デキサメタゾン吉草酸エステル):強い
  • ロコイド(ヒドロコルチゾン酪酸エステル):中等度

などがあります。

活性型ビタミンD3製剤は、表皮の角化細胞のビタミンD受容体にくっつくことで、細胞の増殖を抑える作用があります。

角化異常が生じている角化細胞は、細胞増殖のスピートが正常より早まっており、これによって皮膚がどんどんと厚くなってしまいます。活性化ビタミンD3はこれを抑えるはたらきをし、これによって角化細胞の増殖が抑制されるため、角化異常の改善が得られるというわけです。

代表的な活性型ビタミンD3製剤には、

  • ドボネックス(カルシポトリオール)
  • ボンアルファ(タカルシトール)
  • オキサロール(マキサカルシトール)

などがあります。

サリチル酸ワセリンは角質内に浸透し、角質を軟化(柔らかくする)し、溶解する(溶かす)作用があります。そのため角質が増殖している毛孔性紅色粃糠疹に効果が期待できます。

レチノイドはビタミンA製剤です。前述した通り、毛孔性紅色粃糠疹はビタミンAの代謝異常が原因として提唱されています。ビタミンAは、皮膚のケラチン形成を抑制することで角質を柔らかくする作用があるため、ビタミンAを投与すれば毛孔性紅色粃糠疹の改善が期待できます。

代表的なレチノイド製剤としては、

  • チガソン(エトレチナート)

があります。

【毛孔性紅色粃糠疹の治療法】

・症状が軽微であったり目立たない部位であれば経過観察する事もある
・角化を改善させるお薬(ステロイド外用剤、活性型ビタミンD3製剤、サリチル酸ワセリン、レチノイドなど)を用いる

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