手足の指のふくらみ「粘液嚢腫」が生じる原因と治療法

粘液嚢腫(Myxoid Cyst)は、主に中高年の方の手足の指に生じる皮膚疾患で、ドーム状(半球状)の皮膚の盛り上がりが生じます。

指の背に生じやすく、また先の方(爪の近く)に生じやすい傾向があり、痛みなどの自覚症状は特にありません。

痛くもかゆくもないため、「なんか最近指にしこりがあるなぁ」と心配しつつも、病院受診せずに放置してしまっているケースも少なくありません。

この粘液嚢腫は、放置しておいても問題ないものなのでしょうか。どうして皮膚に盛り上がりが生じるのでしょうか。また治療法にはどのような方法があるのでしょうか。

ここでは粘液嚢腫の原因や経過、治療法などについて紹介させて頂きます。

1.粘液嚢腫とは

粘液嚢腫とはどのような疾患なのでしょうか。

粘液嚢腫は、その名の通り嚢腫(液体成分が袋の中に溜まってしまっている状態)の一種です。嚢(ふくろ)の中には粘液(ヒアルロン酸など)が貯留していき、粘液でパンパンになると皮膚表面から見てドーム状(半球状)に盛り上がって見えます。

一見すると皮膚が腫れているようにも見えますが、これはばい菌が感染して炎症が生じたり、悪性の細胞が増殖したりしているわけではありません。嚢(ふくろ)の中に粘液が溜まって球形になっているだけですので、粘液嚢腫は悪性の疾患ではありません。

嚢の中は、本来身体にも存在する粘液ですので、粘液嚢腫によって何か不快な症状が出ることもありません。

ただ、粘液嚢腫は手足の指の背に出来やすい傾向があり、特に足の指の背に出来てしまうと、靴を履いた時に靴と粘液嚢腫が擦れてしまい、同部に炎症が生じる事があります。

このような機械的な刺激が生じれば炎症によって痛みが生じる事はあります。

粘液嚢腫の経過としては、ある程度の大きさになってその後はそのままというケースもありますし、少しずつ大きくなっていくケースもあります。

悪性の疾患ではありませんので、粘液嚢腫があっても気にならないという事であれば、そのまま放置しておいても問題ありません。

しかし靴が擦れてその部位が痛んだり、美容的に気になる場合は治療が行われる事があります。

治療の原則は手術になります。

手術というと大袈裟に聞こえますが、1cmほどの袋を摘出するだけですので、大病院でしか行えないという事はなく、街中の皮膚科クリニックでも対応してくれるところもあります。

また、「何とか治したいけど、手術はちょっと抵抗があるなぁ」という場合は、

  • 注射針で粘液嚢腫内の液体を抜く
  • 液体窒素

などの治療法が取られる事もあります。

2.粘液嚢腫の原因

粘液嚢腫はどのような原因によって発症するのでしょうか。

粘液嚢腫の原因については、またはっきりと特定されていないところはありますが、近年ではウイルス感染が原因なのではないかと考えられています。

このように考えられるようになったのは、粘液嚢腫内からヒトパピローマウイルス(HPV)の60型が検出されたという報告があったためです。

ヒトパピローマウイルスは「ウイルス性疣贅(尋常性疣贅など)」の原因になるウイルスです。

このヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、HPV60型が皮下の汗腺に感染する事によって、汗腺が変性してしまい、粘液を異常に分泌する事で、粘液嚢腫が形成されるという機序が考えられています。

またそれだけでなく、粘液嚢腫は中高年に好発するという事から、細胞の老化も一因である可能性も指摘されています。

【粘液嚢腫が生じる原因】

・ヒトパピローマウイルス(HPV)60型が原因である可能性がある
・HPV60が皮下の汗腺に感染し、汗腺が粘液を異常に分泌してしまう事で生じる
・細胞の老化も一因となっている可能性がある

3.粘液嚢腫の症状と経過

粘液嚢腫ではどのような症状が認められるのでしょうか。

粘液嚢腫では、特に本人にとって苦痛となるような症状は生じません。

皮膚が盛り上がってくるものの、これは炎症による腫れではなく、粘液がたまった嚢(ふくろ)が皮下に出来た事で盛り上がっているだけです。

粘液自体は身体にも存在する物質であるため、これによって身体が害を受ける事はなく、痛みやかゆみといった症状はまず生じません。

ただし皮膚の一部が盛り上がるため、それが擦れてしまって痛みを感じる事があります。特に多いのは足指に生じた粘液嚢腫です。

粘液嚢腫は指の背に生じやすく、また爪に近い部位に生じます。足指に生じてしまい、先端の細い靴を履いていると、粘液嚢腫と靴が擦れてしまい、これにより粘液嚢腫の部位の皮膚が炎症を起こし痛みを感じる事があります。

粘液嚢腫は、中高年に多く、手足の指の背に生じやすい傾向があります。更に指の先端(爪の近く)が好発部位です。

通常は緩徐に大きくなっていき、ある程度の大きさ(1cmほど)になったらそれ以上は大きくなりません。

【粘液嚢腫の症状】

・中高年に好発する
・手足の指の背に好発し、また指の先端(爪の近く)に好発する
・通常は緩徐に大きくなっていき、1cmほどの大きさになる
・痛みはかゆみといった不快な症状は生じない
・皮膚が盛り上がるため、靴と擦れて痛みを生じる事はある

4.粘液嚢腫の治療法

粘液嚢腫は、治療する必要があるのでしょうか。また、その場合はどのように治療すれば良いのでしょうか。

粘液嚢腫は悪性の疾患ではなく、また通常はどんどんと際限なく大きくなっていくものではないため、積極的に治療をする必要はありません。

何だか皮膚が盛り上がっているけど、別に何も困ってはいないなぁ、という方はそのまま様子をみていて問題ありません。

ただし、これはその盛り上がりは「粘液嚢腫であれば」の場合です。自己診断は危険ですので本当にそれが粘液嚢腫なのかを、一度は皮膚科医に診察してもらう方が良いでしょう。

粘液嚢腫は悪性の疾患ではありませんが、それでも何とか治したいという場合は治療法もあります。

一番標準的な治療は「手術」になります。手術で嚢腫を摘出してしまうという事です。

手術というと大袈裟に聞こえますが、粘液嚢腫は1cmほどのできものですので、手術は決して大がかりではありません。街中の皮膚科クリニックでも対応してくれるところはたくさんあります。

手術は、

  • 局所麻酔をして
  • 嚢腫を取り出して
  • 皮膚を縫合する

という手順になり、順調にいけば30分もかかりません。

術後は感染予防のため抗生剤を服用する必要があります。麻酔が切れれば痛みも生じますので、痛みが強い場合は一時は鎮痛剤を服用する事もあります。

「粘液嚢腫は治したいけど手術はちょっと・・・」という場合は、代わりに「注射針を刺して粘液を吸い出す」「液体窒素による凍結療法」といった治療法も検討されます。

粘液嚢腫の中には「粘液」が入っています。これは液体ですので、針を刺せば吸い出す事が出来ます。ただ、粘性のある液体ですので、あまりに細い針だと吸い出す事が難しくなるため、通常は18G(ゲージ)のやや太い針を刺して吸い出します。

この方法は簡単に粘液嚢腫の盛り上がりを治せますが、嚢(ふくろ)はそのまま残っているため、しばらくするとまた粘液が嚢の中に溜まってきてしまうのが欠点です。つまり「一時しのぎの治療」に過ぎないという事です。

液体窒素による凍結療法は、-196℃という極めて低温な液体である液体窒素を病変部にスプレー噴射したり、綿球に液体窒素を付けて病変部にあてたりする事でHPV感染細胞を凍結させ、壊死させてしまう治療法です。

液体窒素による凍結療法は、通常、1~2週間間隔で行われます。HPVの感染は表皮ではなくその奥であるため、治療には時間がかかるのが一般的です。

液体窒素による凍結療法は、ウイルスおよびウイルス感染細胞を「凍らせて殺してしまう」という治療のため、液体窒素を当てる時に多少の痛みを伴う可能性があり、また病変部周辺の皮膚にもダメージを与えて色素沈着などを引き起こしてしまうリスクがあります。

【粘液嚢腫の治療法】

・特に困っていなければ放置していても問題はない
・治療の原則は手術による摘出である
・針を刺して粘液を抜く治療法もあるが、時間が経てばまた粘液は溜まってくる
・液体窒素によってHPVおよびHPV感染細胞を凍結・壊死させてしまう治療法もある

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