稗粒腫にピーリングは効果があるのか

稗粒腫(はいりゅうしゅ、ひりゅうしゅ)は、角質が表皮下に嚢状に溜まってしまう事で生じるできものです。

1~2mmと小さいできものであり、そこまで目立つものではありませんが、目の周りなどに出来やすいため、「治せるものなら治したいんだけど・・・」と考えていらっしゃる方も多いと思われます。

稗粒腫は角質が表皮下に溜まってしまっている疾患だという事を聞くと、「皮膚のピーリングをすれば稗粒腫は治るのではないか」と考え、ピーリング作用のある美容液や薬剤を使用する方もいらっしゃいます。

確かにピーリングには古い角質をはがす作用がありますが、果たして本当にピーリングが稗粒腫に効くのでしょうか。

ここでは稗粒腫にピーリングは効果があるのかという事について考えてみましょう。

1.稗粒腫とは

稗粒腫にピーリングは効果があるのかという事を考える前に、まずは稗粒腫がどのような疾患なのかを簡単に説明させていただきます。

稗粒腫という疾患の正体が分かっていないと、この疾患にピーリングが効果的なのかも正しく理解できないためです。

稗粒腫は、皮膚に生じる良性腫瘍(できもの)の一種です。「腫瘍」と聞くと驚かれるかもしれませんが、癌のような悪性の腫瘍ではありません。いわゆる「できもの」という言葉が一般的なイメージとしては合っているでしょう。

稗粒腫の多くは1~2mmと小さく、色も白~黄色で光沢があります。遠目から見れば目立つものではありません。ただし多発する事、顔に出来やすい事、成人女性に認められる事などから、美容的な理由で気にされて治療を望まれる方もいらっしゃいます。

稗粒腫は、名前からも分かる通り「稗(ヒエ)」の粒が皮膚についているような外観をしています。

稗、といってもこれがどのようなものなのかイメージが沸かない方も多いでしょう。稗(ヒエ)は昭和の初め頃までは平民の主食として、米の変わりに食べられていた穀物です。現在ではよりカロリーの高い米に取って変わられましたが、稗は今でも鳥などのエサに使われています。

稗の粒は米粒よりも小さく黄色っぽい色をしており、確かに稗粒腫は稗が皮膚にくっついているような外観をしていると言えます。

しかし稗粒腫は、もちろん稗の粒ではありません。その正体は角質の塊になります。

ではこの角質とは何でしょう。角質について知るために皮膚の正常の構造について少し勉強しましょう。

私たちの皮膚は外側から、

  • 表皮
  • 真皮
  • 皮下組織

と層をなしています(皮下組織の下には筋肉や臓器などがあります)。

そして皮膚の一番外側にある表皮は更に細かく、

  • 角質層
  • 顆粒層
  • 有棘層
  • 基底層

と4つの層に分かれています。

表皮を構成する細胞である「角化細胞」は、一番奥にある基底層で作られ、成長とともに有棘層⇒顆粒層⇒角質層と上がっていき、最後に角質層から「垢(アカ)」として剥がれ落ちていきます。

これを皮膚の「ターンオーバー」と呼びます。表皮はこのターンオーバーを繰り返す事によって常に新しい細胞に生まれ変わっているのです。

このように本来であれば垢として剥がれ落ちるはずの角質が皮膚内に溜まってしまい、嚢(ふくろ)状にくるまれてしまったのが稗粒腫になります。

稗粒腫は表皮下に生じますが、何らかの原因によって表皮下に嚢ができてしまい、その嚢を構成する細胞が基底層細胞のように角化細胞を作ってしまうと、角質がどんどんと嚢の中に溜まってしまいます。そしてこれが稗粒腫となります。

稗粒腫は元々身体の一部である角質から成っていますので、何か身体に害を来たすようなできものではありません。当然、何か問題となるような症状が現れる事もありません。

その多くはどんどんと増大していくような事もありません。多くが1~2mm程度にとどまり、どんなに大きくても5mmを超える事は稀です。

稗粒腫は表皮の下に出来てしまうため、ターンオーバーによって上層に押し上げられていく事もなく、角質をくるんだままその部位にとどまってしまいます。

時に正常の角質と同じようにターンオーバーに加わり、自然と皮膚から剥がれ落ちていく事もありますが、そうなってもその後にまた新しい稗粒腫が出来てしまう事も多く、完全に稗粒腫を除去するのはなかなか難しいところがあります。

2.ピーリングとは

では次に「ピーリング」という治療法について、これがどのような治療法なのかを見ていきましょう。

ピーリング(Peeling)というのは、「皮を剥く」という意味になります。果物や野菜の皮を剥く器具を「ピーラー(Peeler)」と呼びますが、これと同じ意味です。

医療におけるピーリングは、皮膚の表面を薄く削り取るという意味になります。皮膚の表面には古い角質や、本来剥がれ落ちるべき垢(アカ)が残ってしまっている事があります。

これを人工的に取り除く事で、皮膚を綺麗にし、また皮膚の新陳代謝を正常化させるのがピーリングです。

ピーリングは、大きく分けて、

  • 化学的ピーリング(ケミカルピーリング)
  • 物理的ピーリング

の2つがあります。

化学的ピーリング(ケミカルピーリング)は、ピーリング作用のあるお薬を皮膚に塗る事で古い角質をはがす治療になります。

一方で物理的ピーリングは、レーザーを当てたり、皮膚を薄く削る機器を使って皮膚の古い角質をはがす治療になります。

ピーリングは、どの程度の深度まで皮膚をはがすかで4段階に分かれており、それぞれで用いるお薬が異なります。

深度による名称 深さ
1 最浅層ピーリング 角質層 グリコール酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸(低濃度)
2 浅層ピーリング 基底層まで グリコール酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸(高濃度)
3 中間層ピーリング 真皮乳頭層まで ベーカーゴードン液、フェノール(低濃度)
4 深層ピーリング 真皮網状層まで ベーカーゴードン液、フェノール(高濃度)

ピーリングは、

  • ざ瘡(いわゆるニキビ)
  • 皮膚の色素異常、シミ
  • 皮膚の老化

などの疾患・状態に効果が期待できます。

ざ瘡(ニキビ)は毛穴でアクネ菌が増殖してしまう状態です。皮脂や古い角質が毛孔の出口をふさいでしまうと毛孔内でアクネ菌が繁殖しやすくなります。ピーリングで古い角質をはがす事で、毛孔の出口がふさがりにくくなるため、ざ瘡を改善させやすくする事が期待できます。

また表皮にメラニンが過剰に沈着してしまうと色素異常やシミが生じます。ピーリングは古い角質をはがす事で表皮のターンオーバーを正常化させるため、メラニンが沈着している表皮がターンオーバーによって剥がれやすくなります。

ピーリングによって皮膚のターンオーバーが正常化すれば古い角化細胞は剥がれ落ちていくため、皮膚の老化に対しても効果が期待できます。

また、現時点でまだデーターは不十分ではありますが、

  • 脂漏性角化症
  • 日光角化症
  • 魚鱗癬
  • 疣贅
  • 伝染性軟属腫(水イボ)
  • アクロコルドン
  • 稗粒腫
  • しわ
  • 脂漏

などといった疾患・状態も、表皮およびその周辺の細胞に異常が生じているため、ピーリングによる治療効果が期待できる可能性が指摘されています。

3.稗粒腫にピーリングは効くのか

では稗粒腫にピーリングは効果はあるのでしょうか。

この答えとしては、

「効果がある可能性はあるが、現時点では根拠は乏しい」

という回答になります。

機序的に考えればピーリングによって稗粒腫が治りやすくなる可能性は十分に考えられます。

ピーリングによって表皮のターンオーバーが正常化すれば、表皮下に存在する稗粒腫もターンオーバーによって押し上げられ、垢(アカ)と一緒に皮膚から剥がれ落ちていく可能性が高まります。

また深度の深いピーリング(表皮より下までピーリングできるもの)を用いれば、稗粒腫がある層まで皮膚をはがしてくれるため、これによって稗粒腫を除去する事が可能になります。

しかし現時点では、その有効性に関する根拠が乏しいため、ピーリングによる治療は積極的には行われていません。

稗粒腫の治療法としては、

  • 稗粒圧出法
  • 炭酸ガスレーザー治療

といった方法が一般的です。

稗粒圧出法とは、注射などに使う針(注射針)で稗粒腫を刺し、中に溜まっている角質を押し出してあげる治療法です。

また、炭酸ガスレーザー治療は炭酸ガスを媒質に赤外光を照射する治療法の事で、レーザー光によって皮膚の表面をそぎ落とすような治療になります。物理的ピーリングの一種と考えてもいいかもしれません。

稗粒腫は表皮周辺という比較的浅い部位に生じているため、炭酸ガスレーザーで皮膚表面を稗粒腫ごと削り取ってしまうということです。

現時点ではこのような治療法が稗粒腫の主流の治療法であり、ピーリングは積極的に用いられる治療法ではありません。

ただしピーリングは稗粒腫の「予防」として行う分には十分有効だと考えられます。そのため上記の方法で治療した後、体質的に稗粒腫が再発しやすいという方はピーリングを定期的に行う事で稗粒腫の再発予防を行っても良いかもしれません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする