稗粒腫が自然に治癒する事はあるのか?

稗粒腫(はいりゅうしゅ、ひりゅうしゅ)は、主に目の周りなどに生じやすい皮膚の小さなできものです。

できものと言っても癌のような悪性の腫瘍ではありません。身体に害をきたす事のない良性のできものになります。

稗粒腫は1~2mm程度と小さく、特に何らかの症状を来たすものでもないため、日常生活で大きな苦痛が生じる疾患ではありません。しかし顔という目立つ部位に出来やすいため、「治せるものであれば治したい」という方も多いのです。

稗粒腫について患者さんから相談を受けた時、一般的な回答として「良性のできものですから放っておいても問題ありません。でもどうしても気になるようであれば除去する事も出来ます」とお答えします。

すると患者さんから「これって自然と治癒する事はないのですか」と質問を受ける事があります。

果たして稗粒腫は自然治癒する事がある疾患なのでしょうか。ここでは稗粒腫が自然に治る事はあるのかについて説明させて頂きます。

1.稗粒腫とは

まずは稗粒腫がどのような疾患なのか、その全体像を簡単に説明させていただきます。

稗粒腫は、皮膚に生じる良性腫瘍(できもの)の一種です。「腫瘍」と聞くと驚かれるかもしれませんが、腫瘍といっても癌のような悪性腫瘍ではありません。いわゆる「できもの」という言葉が一般的なイメージとしては合っているでしょう。

稗粒腫の多くは1~2mmと小さく、色も白~黄色で光沢があります。遠目から見れば目立つものではありません。ただし多発する事、顔に出来やすい事、成人女性に認められる事などから気にされて治療を望まれるケースも少なくありません。

稗粒腫は、名前からも分かる通り「稗(ヒエ)」の粒が皮膚についているような外観をしています。

稗、といってもこれがどのようなものなのかイメージが沸かない方も多いでしょう。稗(ヒエ)は昭和の初め頃までは平民の主食として、米の変わりに食べられていた穀物です。現在ではよりカロリーの高い米に取って変わられましたが、今でも稗は鳥のエサなどとして使われています。

稗の粒は黄色っぽい小さな丸い粒で、確かに稗粒腫と似ています。

とは言っても稗粒腫はもちろん稗の粒ではありません。その正体は角質の塊になります。

ではこの角質とは何でしょうか。角質について知るために皮膚の正常の構造について少し勉強しましょう。

私たちの皮膚は外側から、

  • 表皮
  • 真皮
  • 皮下組織

と層をなしています(皮下組織の下には筋肉や臓器などがあります)。

そして皮膚の一番外側にある表皮は更に細かく、

  • 角質層(もっとも外側)
  • 顆粒層
  • 有棘層
  • 基底層(もっとも内側)

と4つの層に分かれています。

表皮を構成する細胞である「角化細胞」は、表皮の一番奥にある基底層で作られ、成長とともに有棘層⇒顆粒層⇒角質層と上がっていき、最後は「垢(アカ)」となって皮膚から剥がれ落ちていきます。

これを皮膚の「ターンオーバー」と呼び、このターンオーバーはおおよそ1か月のサイクルで行われています。

このように本来であれば垢として剥がれ落ちるはずの角質が皮膚内に溜まってしまい、嚢(ふくろ)状にくるまれてしまったのが稗粒腫です。

稗粒腫は表皮下に生じますが、何らかの原因によって表皮下に嚢ができてしまい、その嚢を構成する細胞が基底層の細胞のように角化細胞を作ってしまうと、角質がどんどんと嚢の中に溜まってしまいます。

こうして生じるのが稗粒腫です。

2.稗粒腫が自然治癒する事はあるのか

稗粒腫は自然に治る事はあるのでしょうか。

稗粒腫を持っている方は、「これが自然に治ったらいいのにな・・・」と感じていると思います。良性のできものなのであれば自然と治る可能性もありそうなものですが、実際はどうなのでしょうか。

結論から言うと稗粒腫は自然と治る事もありますが、一時的に治ったとしてもまた再発してしまう事が多く、自然と完治させる事はなかなか難しいのが現状です。

稗粒腫の中にたまっているものは、本来であれば表皮の基底層で作られた角化細胞と同じものです。正常の角化細胞は、有棘層⇒顆粒層⇒角質層と上がっていくにつれて成長し、最後は垢(アカ)となって身体から剥がれ落ちていきます。

しかし嚢にくるまれてる稗粒腫では、角質は垢になって剥がれ落ちる事が出来ず、嚢の中に溜まってしまうのです。

何らかのきっかけでこれが正常の角化細胞のサイクルに合流すれば、そのまま垢として皮膚から剥がれ落ちていく事もあります。実際、このような機序で稗粒腫が自然と剥がれ落ちていく事はあります。

しかし稗粒腫が発生するもっとも大きい要因には「体質」が挙げられています。つまり稗粒腫が出来やすい人というのは、たとえ自然と稗粒腫が剥がれ落ちても、また新たな稗粒腫が出来てしまいやすいのです。

つまり、個々の稗粒腫に関しては自然ととれる事もあるのですが、仮に自然と取れても稗粒腫が出来やすい体質の人にはまた新しい稗粒腫が出来てしまう事が多いため、全体としてみれば自然治癒する可能性は低いという事になります。

3.自然治癒が難しいのであればどうすればいいの?

稗粒腫は自然治癒する可能性がゼロではありませんが、それを期待するのはなかなか難しいというお話をしました。

では稗粒腫が発症してしまったらどのように対応したら良いのでしょうか。

基本的に稗粒腫は良性のできものであるため、放置しておいて何か身体に問題が生じる事はありません。「見た目的に気になる」という問題を除けば、何も問題はないものなのです。

そのため見た目的な問題としてそこまで困っていないのであれば、たとえ稗粒腫があったとしてもそのまま様子をみていて構いません。

稗粒腫の多くは1~2mm程度と小さく、徐々に大きくなるケースもありますが5mmを超える事は稀です。そのため放置したからといって何か困った事態が生じる事はまずありません。

しかしどうしても「見た目的に気になる」という事であれば、皮膚科で取り除く事も可能です。

一般的に皮膚科で行われている稗粒腫の治療法としては、

  • 針で刺して角質を取り出す
  • 炭酸ガスレーザー治療

といった方法があります。それぞれの方法について詳しく説明します。

Ⅰ.針で刺して角質を取り出す

稗粒腫のもっとも一般的な治療法は、角質を取り出してしまう事です。

稗粒腫は本来とは違う部位に表皮の細胞が出来てしまう事が原因です。正常な部位に出来ればそのまま垢(アカ)となって皮膚から剥がれ落ちていくものなのに、表皮の下に出来てしまうために皮膚に溜まってしまい、盛り上がって稗粒腫となってしまうのです。

この場合、稗粒腫の中にたまっている角質を取り出してあげれば膨らみは消えます。この時、上手に嚢まで取り出せると再発リスクは低くなります。

具体的には注射などに使う針(注射針)で稗粒腫を浅く刺し、その中に溜まっている角質を押し出してあげると稗粒腫のふくらみを治す事が出来ます。

このような除去法は保険診療で行う事ができ、診療報酬(≒治療費)としては、

【稗粒腫摘除】

・10箇所未満 74点
・10箇所以上 148点  (1点=10円)

となっています(実際はこれに診察料なども加わります)。

この方法は外来で簡便に行えますが、

  • あまりに小さい稗粒腫には行えない
  • ちょっと痛い
  • 刺し方によっては傷跡が残ってしまう事がある

というリスクもあります。

また根本の嚢を完全に取り除けていなかった場合は、一時的に治ってもまた同部に角質が溜まっていき稗粒腫が再発してしまう事もあります。

Ⅱ.炭酸ガスレーザー治療

稗粒腫には「炭酸ガスレーザー治療」も有効です。

炭酸ガスレーザー治療とは炭酸ガスを媒質に赤外光を照射する治療法の事で、レーザー光によって皮膚の表面をそぎ落とすような治療になります。

稗粒腫は表皮周辺という比較的浅い部位に生じているため、炭酸ガスレーザーで皮膚表面を稗粒腫ごと削り取ってしまうということです。

根本から削り取ってしまうため、針で押し出す治療法と異なり、再発リスクも低くなります。

炭酸ガスレーザーは病変部を狙って照射する治療法ではありますが、多少正常の皮膚にもダメージを与えてしまうため、治療の際には痛みを伴う事もあります。

炭酸ガスレーザーは効果の高い治療法ですが、

  • 正常皮膚にも多少のダメージを与えるため、軽い痛みを伴う事がある事
  • 保険が効かない事

がデメリットとして挙げられます。

また炭酸ガスレーザー機器は、一般的な皮膚科では置いていない事もあるため、美容皮膚科などを受診した方が確実でしょう。皮膚科を受診する際も事前に炭酸ガスレーザー機器を取り扱っているか確認しておく必要があります。

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