検査でアミラーゼが高い!マクロアミラーゼ血症とは

マクロアミラーゼ血症とは、人口の0.1%程度(1000人に1人の割合)の方に認められる、血中アミラーゼが高値になってしまう状態です。

本来は食べ物に含まれる炭水化物を分解する酵素であるアミラーゼが、「マクロ型アミラーゼ」というアミラーゼの巨大な固まりを形成してしまう事が原因です。

血液検査でアミラーゼが高値である時に一般的に疑う疾患としては、「膵炎」や「唾液腺疾患」などあります。これらは腹痛であったり唾液腺の腫脹・疼痛などが認められますが、マクロアミラーゼ血症はアミラーゼ値は驚くほど高いのに、特に膵炎や唾液腺疾患のような症状は何も認めません。

マクロアミラーゼ血症は一体どのような状態なのでしょうか。特に症状はないという事は、何も治療は必要ないのでしょうか。

ここではマクロアミラーゼ血症について紹介させていただきます。

1.アミラーゼとは

マクロアミラーゼ血症は、血液検査で「血清アミラーゼ値」の高値を指摘されて発見される事が多く、特に自覚症状は何もありません。

マクロアミラーゼ血症についてお話する前に、この「アミラーゼ」って一体どんなものなのかを簡単に説明させていただきます。

アミラーゼは私たちの身体の中で産生・分泌される酵素の1つです。そのはたらきは食べ物に含まれる炭水化物(デンプンなど)をより小さな分子に分解する事です。

アミラーゼが炭水化物を小さな栄養素に分解すると、腸はその栄養素を吸収しやすくなります。つまりアミラーゼのおかげで、私たちの身体は栄養を体内に吸収できているという事です。

アミラーゼには、

  • 膵臓から分泌されるP型アミラーゼ
  • 唾液腺から分泌されるS型アミラーゼ

の2種類があります。

実は私たちの唾液(つば)にもアミラーゼ(S型)が含まれており、炭水化物を分解する作用があります。また膵臓ではP型アミラーゼが産生され、これが腸に分泌される事によって、腸管内でも炭水化物が分解されます。

血液検査で測定される「血清アミラーゼ」は、このS型アミラーゼとP型アミラーゼを合わせた数値になります。

血清アミラーゼはP型とS型の合計値になりますが、それぞれの量を知りたい場合は「アミラーゼアイソザイム」を測定すれば割合も調べる事が出来ます。

一般的にはP型アミラーゼが30~60%程度、S型アミラーゼが40~70%となっており、唾液腺から分泌されるS型の方がやや多めです。

合計の血清アミラーゼ(AMY)値の正常値は、40~130lU/L程度になります。

ただしアミラーゼは腎臓から排出されるため、腎機能が悪い方はアミラーゼを排出する力が落ちますので血清アミラーゼは正常よりも高めになります。

2.血清アミラーゼが上昇する疾患は

血清アミラーゼが上昇する疾患はマクロアミラーゼ血症以外にもあります。

ではどのような疾患で上昇するのでしょうか。

代表的な疾患としては、

  • 膵炎(主に急性膵炎)
  • 胆道系疾患
  • 唾液腺疾患(唾石症など)
  • アミラーゼ産生腫瘍

などが挙げられます。

急性膵炎は主にアルコールや過食などによって膵臓がダメージを受けて発症します。膵臓に炎症が生じると、膵臓で産生されたアミラーゼが血液中に流れ出るため、血清アミラーゼは高値となります。P型アミラーゼ高値のみならず発熱や腹痛・背部痛なども認める事が一般的です。

またアミラーゼは胆道系の疾患でも上昇します。膵臓で作られたアミラーゼは膵管と通って胆道に合流したあと腸に分泌されるため、胆道炎や胆石などで胆道の通りが悪くなると、腸にいけないアミラーゼが血液中に流れ出ますので血清アミラーゼは高値となります。胆道系疾患でもP型アミラーゼ高値に加えて、発熱や腹痛・黄疸なども生じます。

唾石症などの唾液腺疾患が生じても同様で、流れが悪くなった唾液中のアミラーゼが血液に流れ出るためアミラーゼは高値となります。ちなみにこの場合はS型のアミラーゼが高値となります。

また頻度は多くありませんが、一部の腫瘍にはアミラーゼを産生するものがあります。このような腫瘍が体内に出来てしまった場合もアミラーゼは高値となります。アミラーゼ産生腫瘍は一部の肺がんや乳がんで認められ、S型が上昇します。

3.マクロアミラーゼとは

アミラーゼという酵素についてみてきました。では次に「マクロアミラーゼ」についてみていきましょう。

マクロアミラーゼとは一体なんのでしょうか。

マクロアミラーゼは通常は体内に存在しない物質です。何らかの原因によって複数のアミラーゼと抗体(IgGなど)がくっついて固まってしまう事で、分子量の大きなアミラーゼが形成されてしまうのが「マクロアミラーゼ血症」になります。

普通のアミラーゼは分泌された後、腎臓から尿と一緒に排出されます。しかし、このマクロアミラーゼは分子量が大きいため、腎臓でろ過できません。つまり腎臓から排出する事が出来ないという事です。

そのためマクロアミラーゼは身体の中に蓄積してしまいます。その結果、血清アミラーゼ値が高値になってしまうのです。

ただし他の疾患のように膵臓にダメージが生じたり、分泌されたアミラーゼの通り道がふさがったりしてアミラーゼが上昇しているわけではありません。正常に分泌されたアミラーゼがくっついて固まってしまっているため、排泄できなくなっているだけです。

アミラーゼ自体はもちろん身体に害のない物質であるため、マクロアミラーゼ血症ではアミラーゼ値は高値ですが、何か問題となるような症状が生じる事はありません。

4.マクロアミラーゼ血症かどうかを判別するには

マクロアミラーゼ血症は、血清アミラーゼは高値であるものの特に症状もなく、身体に害もない状態です。そのため、アミラーゼ高値の原因がマクロアミラーゼ血症だと分かればそのまま様子を見て問題ありません。

しかし他の疾患が原因でアミラーゼが上昇している場合は、早急な治療が必要な場合もありますので、原因を正確に見極める必要があります。

ではマクロアミラーゼ血症はどのように診断されるのでしょうか。

まず他の病態でアミラーゼが高値となる場合、何らかの症状が出ている事が多いため、何も症状が無い時点でマクロアミラーゼ血症の可能性は高くなります。

血清アミラーゼが上昇する、他の主要な疾患との鑑別点を紹介します。

【疾患名】 【原因】 【主な症状】 【異常所見を認める検査】
急性膵炎 アルコール過剰摂取、暴飲暴食 発熱、上腹部痛、背部痛、嘔吐 血清リパーゼ上昇、CT、腹部超音波検査
胆道系疾患 胆石・胆管炎など 発熱、黄疸、腹痛 肝酵素上昇、CT、腹部超音波検査
唾液腺疾患 唾石など 唾液腺の腫脹・疼痛 視診、触診、X線、CTなど
アミラーゼ産生腫瘍 肺がん・乳がんなど 原因による 腫瘍マーカー上昇、X線、CT、MRI

他の疾患では何らかの症状が現れる事が多く、アミラーゼが著明に高値であるにも関わらず全くの無症状であればマクロアミラーゼ血症の可能性は高いと考えられます。

ただしアミラーゼ産生腫瘍に関しては、腫瘍の進行度によっては無症状である事もありますので注意が必要です。アミラーゼ産生腫瘍を否定できない場合はCTやMRIなどの画像検査や各種腫瘍マーカーなどによって腫瘍がないかどうか確認しておいた方が良いでしょう。

また簡単に出来る鑑別点として、血清アミラーゼと尿中アミラーゼの比率を見るという方法があります。

マクロアミラーゼ血症は血液中のアミラーゼは上昇しますが、腎臓から排泄できないため尿中のアミラーゼは異常低値となります。

対して他の疾患によるアミラーゼ上昇は、アミラーゼ自体が増えているため、血液中も尿中もアミラーゼの量は高値となります。

5.マクロアミラーゼ血症の治療

マクロアミラーゼ血症は何か治療が必要なのでしょうか。

マクロアミラーゼ血症だと分かっても、血液検査で異常があるとなると「このまま放置しておくと膵臓が悪くなるのでは」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

しかしアミラーゼ高値の原因がマクロアミラーゼ血症によるものだと診断できていれば、これは様子をみて問題ありません。一応異常値ですので、定期的に血液検査で経過を見ておく事が望ましいのですが、積極的な治療は特に必要ありません。

アミラーゼは私たちの身体が産生する酵素であり、身体にとって無害なものです。他の疾患でアミラーゼ高値が認められた時というのは、問題はアミラーゼ自身ではありません。

アミラーゼが高いという事は、

  • 膵臓が破壊されている(膵炎など)
  • アミラーゼの通り道が詰まっている(胆道系疾患、唾液腺系疾患など)

といった状態が予測されるため、問題なのです。

マクロアミラーゼ血症は、このいずれにも当てはまりません。ただ正常な酵素が固まりを作ってしまい、腎臓から排泄できなくなっているだけです。

そのため、基本的にはそのまま放置しておいて問題はありません。

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