進行性指掌角皮症の原因と治療法

進行性指掌角皮症(keratodermia tylodes palmaris progressiva)は「主婦手湿疹」とも呼ばれ、主婦や飲食業のお仕事をされている方・美容師さんなど、手をよく使う仕事をされている方に好発する皮膚炎です。

難しい病名がついていますが、平たく言えば「手荒れ」の事になります。

しかし、「たかが手荒れ」とあなどってはいけません。手は毎日使う重要な部位ですので、皮膚が荒れることによって痛みが生じると、生活に大きな支障を来たすようになります。お仕事で手をよく使う方であれば仕事にも大きな支障を来たすでしょう。

ここでは、進行性指掌角皮症という疾患について詳しく紹介させて頂きます。

1.進行性指掌角皮症とは

進行性指掌角皮症(keratodermia tylodes palmaris progressiva)は、いわゆる「手荒れ」の事です。

手を良く使ったり、手に刺激がかかりやすい方に発症しやすく、例えば、

  • 炊事・洗濯などを毎日している主婦の方
  • 食器を毎日たくさん洗っている飲食業の方
  • お客さんの髪を毎日洗っている美容師の方
  • 指先を使う仕事をしている職人の方

などで多く認められます。

特に水仕事が多い方は要注意です。1日に何回も手を水で流す事により、手の表面を覆っている皮脂が少なくなってしまいます。皮脂は皮膚を保湿したり皮膚を守るバリアのような役割をしているため、皮脂がなくなると皮膚は乾燥し、傷付きやすくなってしまうのです。

進行性指掌角皮症は若い方よりも高齢者に多く、また夏よりも冬に生じやすいという特徴があります。これは若い方よりも高齢者の方が皮膚が乾燥しやすく、また夏よりも冬の方が皮膚が乾燥しやすいからです。

また元々皮膚のバリア機能が低下するような疾患(アトピー性皮膚炎など)をお持ちの方も、生じやすい傾向があります。

「手荒れ」というと大した事のないものだと考える方も多いと思いますが、決してあなどってはいけません。

進行性指掌角皮症は、「進行性」という名前からも分かる通り、適切な治療を行わないと徐々に進行していきます。

通常はよく使う手の指先に発症しますが、放置していると次第に手の掌にまで進行していくようになります。また片方の手が痛むようになると、それをかばって反対の手を多く使うようになるため、そのうち反対側の手も同様の状態になっていきます。

ひどい状態になると、痛くて水仕事や手を使った作業が全くできなくなってしまう事もあります。そうなってしまう前に適切な予防や治療を行う事が大切です。

2.進行性指掌角皮症の原因

進行性指掌角皮症はどのような原因で生じるのでしょうか。

進行性指掌角皮症は、

  • 手の皮脂が失われる事
  • 皮膚に繰り返し刺激が加わる事

という2つの原因によって手の皮膚に炎症が生じる事で発症します。

通常、手に限らず私たちの皮膚には「皮脂腺」という腺があり、ここから皮脂(あぶら)を分泌しています。

この皮脂、何かと邪魔者扱いされる事が多いのですが、実は私たちの皮膚を守る大切な役割を果たしています。

皮脂の役割の中で特に重要なのは「皮膚の保湿」と「バリア機能」です。

脂は水とはじく性質を持っていますので皮膚表面に脂の膜が出来ると水分が皮膚から蒸発しにくくなり皮膚表面にとどまるようになります。

皮膚は保湿される事で弾力を持ち、血流が良くなり、強度を持つようになります。乾燥すると皮膚は固くなって割れやすくなってしまいますが、保湿されていると適度な弾力を持つため、簡単には壊れません。

また脂は、外部から皮膚を通って体内に異物が侵入してこないようにする「バリア」としての役割もあります。

このように皮脂は皮膚を守るために大切なものなのですが、何度も手洗いを繰り返していたり、洗剤などを何度も使って皮脂を洗い落とし過ぎると、手の皮脂が欠乏してしまいます。

こうなると皮膚が乾燥しやすくなってしまうし、外部から異物(ウイルスや細菌など)が侵入しやすくなってしまいます。

また何度も手を使っていると、手の皮膚が繰り返し刺激を受けます。何度も刺激を受けると、その部位の皮膚は「刺激に耐えられる皮膚を作らなければいけない」と反応し、皮膚を肥厚させます。

皮膚が肥厚すると固くなるため刺激には耐えられるようになるのですが、肥厚した部位には水分が入りにくいため乾燥しやすくなってしまい、ひび割れが起こりやすくなってしまいます。その結果、皮膚が荒れやすくなってしまいます。

このような機序により進行性指掌角皮症は生じるのです。

3.進行性指掌角皮症の症状

進行性指掌角皮症では、どのような症状が認められるのでしょうか。

進行性指掌角皮症は皮脂による皮膚のバリア機能が失われた状態の手に、繰り返しの刺激が加わる事で生じる皮膚の炎症です。

炎症というのは、身体が有害な刺激を受ける事で生じる反応で、

  • 発赤(赤くなる)
  • 熱感(熱を持つ)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みが出る)

という症状が生じます。進行性指掌角皮症も皮膚の炎症反応(皮膚炎)であるため、これらの症状が生じます。

つまり手や指先が赤くなり、熱を持ち、腫れて、痛くなるという事です。

症状は通常、指先から始まります。親指や人差し指などのよく使う指から発症する事が多く、次第に手の掌に進行していきます。中指~小指にも徐々に進行してくる事もあります。

また片方の手だけに生じる事もありますが、水仕事などの作業は両手で行う事も多いため、最初から症状が両側に生じる事もあります。

4.進行性指掌角皮症の診断

進行性指掌角皮症の診断は難しくありません。皮膚科を受診すれば、経験ある皮膚科医であれば一目で診断できるでしょう。

皮膚科医ならずとも、一般的な医師でも診断は比較的容易です。また医療者ではない一般の方であっても「これは手荒れだな」と自己診断して病院を受診される事は多いです。

進行性指掌角皮症の診断のポイントとしては、皮膚に炎症が生じていて発赤・熱感・腫脹・疼痛といった症状が認められる事、そしてその皮膚炎が、

  • 水仕事などが多く手の皮脂が失われている
  • 手を頻回に使う事により皮膚の肥厚が見られる

事が原因で生じているといった点が診断のポイントとなります。

また皮脂が失われているため、手の乾燥が著明である事も診断の重要なポイントです。

5.進行性指掌角皮症の治療法

進行性指掌角皮症が生じてしまったら、どのように対処すれば良いでしょうか。

進行性指掌角皮症は発症してしまうとなかなか治らないため、発症してから慌てるのではなく予防をする事が何より大切です。

進行性指掌角皮症は水仕事をしている方で多く生じるのですが、発症したからといって水仕事を一切しないようにするという事はなかなかできません。そのため一旦発症してしまうとなかなか治らないのです。

例えば主婦の方に進行性指掌角皮症が生じたからといって、「今日から一カ月家事を一切しないでください」というわけにはいきません。あるいは飲食業や美容師の方に「今日から水仕事を一切しないで下さい」と言えば、仕事をクビになってしまうでしょう。

もし水仕事から離れられるのであれば進行性指掌角皮症は治っていきますが、現実的にそれは困難であるケースが多いのです。

では進行性指掌角皮症を発症させないようにする予防法にはどのような方法があるでしょうか。

有効な予防法としては、

  • 保湿する
  • 手に刺激を加えすぎない

事が重要になってきます。進行性指掌角皮症は皮膚の乾燥と皮膚への刺激によって生じますから、これを避ければいいわけです。

保湿は保湿作用の高い軟膏を用いると良いでしょう。

市販の保湿剤でも構いませんが、病院で処方出来る保湿剤を挙げると、

などが用いられます。

また手に刺激を加えすぎない方法としては、手袋を使用して水仕事を行うといった方法があります。

進行性指掌角皮症が生じてしまった時の治療法も予防法に準じ、保湿剤で保湿をしたり、手袋を使って水仕事をする事が基本になります。

ただし皮膚症状が強い場合には、

  • ステロイド外用剤

を用いる事もあります。ステロイドには炎症を抑える作用があるため、炎症で生じている症状(発赤、熱感、腫脹、疼痛)を抑える事が出来ますので、皮膚の腫れや痛みを抑える事が期待できます。

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