虫さされの原因になる虫と、正しい予防・治療法

虫さされは、日常でよく見かける皮膚疾患の1つです。虫が皮膚を刺すだけでなく、嚙む事え生じる事もあります。

虫さされは虫が多く出現するような夏場に多く、また虫がいるところに行く可能性の高い方に多く認められます。毒性のない虫であれば症状はかゆみ程度ですが、かゆみで皮膚をひっかき過ぎてしまえば二次的に皮膚が荒れてしまったりばい菌が感染して膿んでしまう事もあります。

また蜂(ハチ)などでは、稀にアナフィラキシーショックなどの死に至るような重篤な症状を引き起こすことがありますので「たかが虫刺され」と安易に考えてはいけません。

ここでは虫さされについて、原因となる虫についてや正しい対処法・治療法などを詳しく紹介させて頂きます。

1.虫さされとは

虫さされ(stasis dermatitis)は、虫に刺されたり噛まれたりする事で生じる皮膚の炎症です。

どのような虫に刺されたのかによって生じる症状は多少異なりますが、大きく見れば刺されたり噛まれる事で皮膚がダメージを受けるため「炎症」が生じます。

つまり虫さされというのは、虫が皮膚を傷つけ・また何らかの成分を皮膚に注入したことによって生じる皮膚炎だという事が出来ます。

炎症が生じるとその部位には、

  • 発赤(赤くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 熱感(熱くなる)
  • 疼痛(痛くなる)

という4つの症状が出現する事が知られています。虫さされも皮膚炎ですので、これらの症状が皮膚に生じます。

また虫によっては注入された成分によって、「かゆみ」が出現する事もあります。かゆみ自体は重篤な症状ではないものの、感覚的に不快な上、かゆみに任せて皮膚をひっかき過ぎると皮膚が荒れてしまったり、二次的にばい菌が感染してしまう事もあります。

頻度は稀ですが、注入された成分によって強いアレルギー反応(アナフィラキシーショックなど)が生じる事もあり、注意が必要です。

アナフィラキシーショックは、皮膚に限らず全身の組織・臓器にアレルギー反応が生じてしまう事で、

  • 気管が締まって呼吸が出来なくなる
  • 血圧が下がりすぎてしまう
  • 意識レベルが低下してしまう

などの状態が生じる可能性があり、最悪の場合は死に至る事もある恐ろしい症状です。虫さされの中では特に蜂(はち)に刺された時に稀に生じる事があります。

虫さされは、虫に刺されれば誰にでも生じるものですが、どのような人がなりやすいというものはありません。

強いて言えば虫がいるところに行く頻度が高い人で多いと言えます。例えば、

  • 子供(遊びで草むらに入ったりする機会が多い)
  • 仕事上、自然との触れ合いが多い方(農家など)

などです。また季節的には冬よりも夏の方が多くなります。これは夏の方が虫が多いからです。

2.虫さされの原因になる虫とは

虫さされの原因になる虫にはどのような種類があるのでしょうか。

代表的な虫と注意点を紹介します。

Ⅰ.蚊(か)

虫さされといってまず思い付くのが「蚊(か)」ではないでしょうか。

蚊は私たちを攻撃しようとして刺すのですはなく、その目的は吸血(血を吸う事)になります。ではなぜ吸血するのかというと、血を吸う事で栄養を摂取したいからです。

とは言っても蚊は生きていくための栄養をすべて吸血でまかなっているわけではありません。普段の栄養摂取に関しては植物(花の蜜など)から栄養摂取をしています。

ではどんな時に吸血をするのでしょうか。

実は蚊の中でも吸血を行うのはメスだけです。これは吸血は産卵の際に必要な栄養を取りたいからだそうです。そのためオスは人を刺すことはありませんし、メスも産卵前でなければ人を刺すことはありません。

蚊は針のようなくちばしを私たちの皮膚に刺すため、刺された皮膚には炎症が生じます。また吸血する際に唾液を流し込むため、この唾液によってかゆみが生じます。

なぜかゆくなるような唾液をわざわざ流し込むのかというと、この唾液は血液を固まりにくくするはたらきがあるのです。吸血中に血液が固まってしまうと血を吸えなくなるだけでなく、蚊のくちばしの中で血が詰まってしまうため、困るわけです。

ちなみに蚊に刺された時、あまり痛みは感じないのは何故でしょうか。実は蚊は刺した時に麻酔作用のある成分を同時に注入しています。そのため、痛みはそこまで感じないのです。

蚊はこのように皮膚に、

  • 炎症
  • かゆみ

を起こしますが、それ以外にも大きな問題があります。

日本ではあまり関係がないのですが、蚊は病原菌を媒介してしまう事があります。実際、熱帯地方ではマラリアやデング熱などは蚊が媒介する事で人から蚊を通じて人へ感染していく事が知られています。

Ⅱ.ダニ・ノミ

ダニの中でもマダニやイエダニは、ヒトを刺します。その目的は蚊と同じく吸血になります。

ダニは自然の中にも存在しますが、ハウスダストの中にも存在しますので屋内でも刺される事があります。

ノミは主に犬や猫などのペットの体表に寄生して生息しており、時にヒトの皮膚にも移って吸血します。

ダニやノミに刺された時の症状も、皮膚の炎症やにアレルギー反応によるかゆみが生じます。

また蚊と同じくダニも病原菌を媒介するものがあります。頻度は稀ですが、ツツガムシ病や日本紅斑熱などはダニが媒介する事で人に感染すると考えられています。

Ⅲ.ブヨ(ブユ・ブト)

ブヨもヒトを刺しますが、蚊と同じく吸血目的であり、吸血するのはメスのみとなります。

蚊は針のようなくちばしで刺し、また刺す際に麻酔成分を注入するため痛みはほとんど生じませんが、ブヨは皮膚を切り裂くように吸血するため、蚊よりも痛みが強くなります。

また吸血と同時に毒素を注入するため、蚊よりも炎症は強く・長引く事が多いです。

Ⅳ.アブ

アブも吸血目的でヒトを刺し、同じくメスのみが吸血します。

アブに刺されると、チクッとした痛みを感じる事が多く、またその後の炎症やかゆみも一般的に強めです。時に全身症状として熱が出たりすることもあります。

Ⅴ.毛虫

一部の毛虫は毛に毒があり、刺されると炎症が生じます。

これは吸血ではなく、毛虫が自分の身体を守るための防御になります。

刺された指先などに、炎症やかゆみが生じるほか、しびれが生じる事もあります。

Ⅵ.蜂(ハチ)

蜂は尻尾に針を持っており、敵と認識した相手を攻撃する際にこの尻尾の針を刺します。

針先にはハチ毒が含まれているため、強い痛みが生じます。

また頻度は稀ですが、ハチ毒によってアナフィラキシーショックが生じる事もあります。

アナフィラキシーショックは重篤な全身性のアレルギー反応であり、皮膚だけではなく身体の臓器にアレルギー反応が生じる事があります。

アナフィラキシーショックでは、

  • 血圧が下がる
  • 呼吸がしずらくなる
  • 意識を失う

などといった重篤な症状が出現し、最悪の場合死に至る事もあります。

蜂に刺されてからアナフィラキシーショックが出現した場合、平均すると15分前後そのまま放置していると心臓が止まってしまうと言われています。実際、ハチ毒による死亡者は毎年10例程度報告されています。

蜂に刺されて、不調を感じたらすぐに救急車と呼んだり最寄りの病院を受診する必要があります。

Ⅶ.ムカデ

ムカデは攻撃性が高い昆虫であり、不意に触ったりしてしまうと噛まれます。

ムカデも強い痛みを生じ、その後に皮膚の腫れや熱感などの炎症が生じます。また蜂と同じく稀ですがアナフィラキシーショックが生じる事もあります。

3.虫さされの症状

虫さされでは、どのような症状が認められるのでしょうか。

虫さされで生じる症状はいくつかありますが、まず生じるのが「炎症」です。

炎症は、身体が何らかのダメージを受ける事で生じる反応の事で、

  • 発赤(赤くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 熱感(熱くなる)
  • 疼痛(痛む)

という症状が生じます。虫に刺されれば皮膚が大なり小なりダメージを受けますので、炎症が生じるのです。

皮膚に生じる炎症は皮膚炎と呼ばれますが、どの虫に刺されても皮膚炎が生じます。

ただし吸血目的の虫は、目的はあくまでも血を吸って栄養を摂取する事であり皮膚を傷付けることではありませんので、炎症はそこまで強く生じません。更に蚊は、麻酔成分のある物質を注入するため炎症の症状のうち疼痛(痛み)はあまり生じません。

反対にヒトを攻撃する目的で刺したり噛んだりする虫では、炎症は強く生じます。蜂やムカデ、毛虫などでは皮膚の炎症の程度が強い事が多いのです。

また虫に刺される事で、身体の中に何らかの成分が注入されてしまった場合、かゆみも生じます。これはアレルギー反応になります。

虫さされでもっとも注意すべき症状は「アナフィラキシーショック」です。アナフィラキシーショックもアレルギー反応の1つなのですが、皮膚のみに生じるアレルギー反応ではなく、全身の臓器に生じるため、時に重篤な症状を引き起こします。

気管が腫れて狭くなることで呼吸困難が生じたり、血管が拡張して血圧が極端に低下したり、意識レベルが低下したりし、最悪の場合は心停止(心臓が止まってしまう事)が生じる事もあります。

アナフィラキシーショックは滅多に生じる症状ではありませんが、虫さされの中でも蜂やムカデでは稀に生じる事があります。

特に蜂は、ハチ毒によってアナフィラキシーショックが生じる事があり、毎年10例ほどの死亡例が報告されています。

4.虫さされの治療法

虫さされが生じてしまったら、どのように治療すれば良いでしょうか。

まず何よりも大切なのは「予防」になります。虫にさされてから慌てるのではなく、そもそも刺されないように気を付けるという事です。

蚊などは時期的にはどう工夫しても完璧には避けられない事もありますが、

  • なるべく皮膚が隠れるような服を着る
  • 虫よけスプレーを使ってから外出する
  • 蚊取り線香などを利用する

など、一般的な予防を行うだけでも虫さされの機会を大きく減らすことができます。

また蜂・ムカデなどに関しては、

  • 近づいてきても振り払ったり刺激するような事をしない
  • 地面を掘ったりする際は手袋を使う

という事も大切です。

虫に刺されてしまったら治療としては、

  • 炎症を抑える治療
  • かゆみなどのアレルギー反応を抑える治療

の2つに分けられます。

炎症を抑える治療としては、「ステロイド外用剤」が用いられます。ステロイドは炎症を抑える作用があるため、炎症を鎮め、炎症に伴って生じる発赤・腫脹・熱感・疼痛を和らげてくれます。

ステロイドは強さによって様々なものがありますので、刺された皮膚の部位や炎症の強さに応じて適切なステロイドを選ぶことが大切です。

注意点としてステロイドは炎症は抑えてくれるのですが、ばい菌などの感染に対する抵抗力を下げてしまうというデメリットもあります。そのため、毒素を注入されたりばい菌が入ってしまっている可能性の高い傷に対して使う際には注意が必要です。

このような場合は抗生剤も含有しているステロイドを用いるか、ステロイド以外の塗り薬(NSAIDs外用剤など)などが検討されます。

かゆみに対しては、アレルギー症状を抑える「抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)」が用いられます。

抗ヒスタミン薬には塗り薬(外用剤)と塗り薬があります。かゆみが局所にとどまる場合は塗り薬で十分な事もありますが、広い範囲にかゆみが生じる場合は飲み薬を用います。

虫さされで注意すべきなのは「アナフィラキシーショック」です。アナフィラキシーショックは蚊やダニ・ノミなどの吸血目的の虫で生じる事はまずありませんが、蜂やムカデなどの攻撃目的の虫で稀に生じます。

特にハチ毒によるアナフィラキシーショックは毎年少数ながら報告されており注意が必要です。

アナフィラキシーショックは蜂にさされてから約10分ほどで致命的になります。虫に刺されてから体調がおかしい(息が苦しい、めまいがするなど)と感じたらすぐに救急車と呼ぶか最寄りの病院を受診しましょう。

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