赤ちゃんに真っ赤なできものが!?乳児血管腫の原因と対処法

生れてから1カ月ほど経った赤ちゃんの皮膚に、真っ赤に盛り上がったできものが出来る事があります。

これは「乳児血管腫」と呼ばれるもので、良性腫瘍の1つです。

乳児血管腫は、最初は皮膚の小さな赤いアザですが、徐々に盛り上がって大きくなっていきます。良性の腫瘍であるため、成長とともに自然と消失してはいくのですが、乳児血管腫は放置せず、発見したら適切に治療を行う必要があります。

この乳児血管腫はなぜ生じるのでしょうか、またどのような問題が生じる可能性があり、治療法にはどのような方法があるのでしょうか。

ここでは乳児血管腫について詳しく紹介していきます。

1.乳児血管腫とは

まずは乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)について、その全体像を説明していきます。

乳児血管腫は赤ちゃんに認められる皮膚疾患の1つで、赤く盛り上がったできもの(腫瘍)です。「幼児血管腫」とも呼ばれる事があり、まるで苺(いちご)が皮膚に乗っかっているようにも見えるため「苺状血管腫」と呼ばれる事もあります。

乳児血管腫は赤ちゃんに生じる皮膚疾患ですが、生まれた時からあるわけではありません。生後1か月頃から徐々に出来てきます。最初は小さい赤いアザですが、徐々に盛り上がり大きくなっていき、次第に盛り上がりはデコボコを伴うようになります。

乳児血管腫は女児に多く、また低出生体重児に多い事が知られています。

部位としては皮膚であればどこにでも生じますが、特に

  • 顔面

に生じやすい傾向があります。

乳児血管腫の正体は「血管」が腫瘍性に増殖したものです。未熟な毛細血管が腫瘍性に増殖した「血管腫」がこの鮮やかな赤い皮膚疾患の正体です。血管芽細胞という血管を作るもととなる細胞が、何らかの理由で正常な血管組織に分化・成長できない事が原因だと考えられています。

乳児血管腫は真っ赤な色調を呈しますが、この赤みは血液の色です。毛細血管が異常に増殖し、その毛細血管内には血液が流れているため、乳児血管腫は赤くみえるのです。

その証拠として乳児血管腫は圧迫すると赤みが消えます。圧迫すると血管腫内の血液が押し出されるためです。

異常な増殖とは言え、乳児血管腫は血液が通っている血管ですので、身体にとって有害な組織ではありません。基本的には何の症状も来たしませんし、悪性腫瘍(癌)のように身体に害を与えるものではありません。

しかし鮮赤色の盛り上がったできものが皮膚にあると、これは目立ちます。乳児血管腫は顔に好発しやすいため、顔に出来るとかなり目立ってしまいます。そのため、実害はないとしても、美容的な問題で治療を希望される方がほとんどです。

更に乳児血管腫は成長とともに自然と消えていくのですが、その際にキレイに消えるわけではなく皮膚に瘢痕が残してしまう事が少なくありません。

この瘢痕を残さないためには、自然と消失する前に医療的に治療をする必要があり、このような理由から乳児血管腫は良性腫瘍ではあるものの、積極的な治療が行われるものになります。

2.乳児血管腫が生じる原因とは

乳児血管腫はどのような原因で生じるのでしょうか。

乳児血管腫は皮膚の毛細血管が異常に増殖してしまう事が原因です。毛細血管が増殖してしまった結果、赤いできものが出来上がってしまうのです。

ではなぜこのような事が起こってしまうのでしょうか。

通常、血管は血管芽細胞という血管組織のもとになる細胞が成長していく事で作られていきます。この血管芽細胞の成長が何らかの理由で障害されてしまうと、皮膚の一部で血管芽細胞は過剰に増殖するようになり、血管腫を形成してしまいます。これが乳児血管腫です。

血管芽細胞が正常に成長できない原因については、

  • GLUT1(グルコーストランスポーター1)
  • 6F-H2(wilms tumor 1 gene)

といった遺伝子の異常も指摘されています。

【乳児血管腫が生じる原因】

・皮膚の一部の毛細血管が異常に増殖する事で赤いできものが出来る
・皮膚の毛細血管が増殖するのは血管芽細胞が正常に成長できなかったためである
・GLUT1や6F-H2といった遺伝子異常が指摘されている

3.乳児血管腫の分類と症状・経過

乳児血管腫には、どのような種類があるのでしょうか。また何か困るような症状は認められるのでしょうか。

まず乳児血管腫には大きく分けて3つのタイプがあります。

  • 局面型
  • 腫瘤型
  • 深在型

ほとんどが「局面型」か「腫瘤型」になり、深在型は稀です。

局面型はもっとも多いタイプで、乳児血管腫が数mmほど盛り上がり、名前通り苺が皮膚についているような形状をきたします。

腫瘤型というのは局面型よりも血管腫が大きくなってしまい、半球状やドーム状を呈します。大きさも数cm~10cm以上と大きく、かなり目立つようになります。

深在型というのは皮膚の深い部位に出来たものです。深在型は盛り上がりが乏しく、皮膚の奥にあるため鮮赤色ではなく、青色調の色調に見えます。

いずれのタイプも毛細血管の異常な増殖というのは同じなのですが、出来る部位や大きさが異なるのです。

乳児血管腫の症状としては、特に自覚的な症状はありません。

前項でも説明したように乳児血管腫は皮膚の毛細血管が異常に増殖しているものです。毛細血管自体は身体のいたるところに存在している正常な組織であり、異常なものではありません。

正常な組織によって生じている皮膚の変化ですから、乳児血管腫の部位に痛みやかゆみといった症状が生じる事はありません。

ただし大きい腫瘤型の場合は、部位によっては血管腫が他の組織を押しつぶしてしまう事があり、

  • 眼の周りに出来て、視野が障害される
  • 口の周りに出来て、経口摂取が障害される
  • 耳の周りに出来て、聴力を障害する
  • 気道の周辺に出来て、気道を狭窄させる

などの症状を来たす事があります。

部位としては身体のどこにでも生じますが、特に多いのが「顔面」と「腕」になります。また男女ともに生じますが、女児に多く、また低体重で出生した児に多くみられます。特に1000g以下で出生した児には25%の確率で発症するという報告もあります。

乳児血管腫は生後すぐには認められず、1カ月ほどして現れ始めます。まずは盛り上がりの乏しい小さな赤いアザとして認められますが、その後徐々に大きくなっていき、また盛り上がりも伴うようになります。

生後6カ月以降は徐々に小さくなっていく事が多く、10歳になるまでにはほとんどの症例で血管腫は消失していきます。

しかし全くキレイになくなるわけでなく、血管腫があった部位には瘢痕が残る事が少なくありません。

【乳児血管腫の分類と症状・経過】

・局面型(多い)、腫瘤型、深在型(まれ)がある
・痛みやかゆみといった自覚症状は認めない
・全身に生じる可能性があるが、特に顔面や腕に多い
・女児に多く、低出生児に生じやすい
・生後1カ月頃から生じ、徐々に増大・盛り上がり、6カ月ほどでピークとなる
・6か月目以降は徐々に小さくなっていく事が多い
・10歳になればほとんどの例で消失するが、瘢痕が残ってしまう事もある

4.乳児血管腫の治療法

乳児血管腫がある事に気付いたら、どうすればよいのでしょうか。

乳児血管腫は良性の疾患であるため、身体に何か実質的な害を来たす事はありません。

しかし問題点が2つあります。

それは、

  • 美容的な問題(見た目の問題)で不利益を被る可能性がある
  • 自然に消えていくが、瘢痕が残ってしまう事がある

です。

乳児血管腫は真っ赤な腫瘍が皮膚に張り付いたような形状であるため、目立ちます。特に顔に出来てしまうと、これはかなり目立ちます。

乳児期の頃ならまだしも、お友達と遊ぶようになる幼児期・学童期は、乳児血管腫が原因で周囲から誤解や偏見といった不利益を受けたり、いじめに遭ってしまう事もありえます。

また乳児血管腫が消失してからも、傷跡のように瘢痕が残ってしまう事が少なくありません。これも女性の顔などに残ってしまうと、本人様はとても気にされる事があります。

このように、乳児血管腫は良性の腫瘍ではあるのですが問題も多く、このような理由から積極的に治療が行われます。

乳児血管腫の治療としては「レーザー治療」が行われるのが一般的です。レーザー治療とはレーザー光を当てることで、特定の色調の細胞を破壊する治療法です。

レーザー光は様々な波長のものがあり、波長によって吸収されやすい色調が異なります。

赤血球中のヘモグロビンに吸収されやすい波長のレーザー光を乳児血管腫に当てると、レーザー光はヘモグロビンが存在する赤血球に吸収されます。そしてヘモグロビンに吸収されたレーザー光の光エネルギーはそこで熱変換され、毛細血管を破壊します。

このようにレーザー治療はレーザーがあたった部位の細胞すべてを破壊するのではなく、レーザーがあたった部位のうち、そのレーザーの波長を吸収しやすい細胞だけを破壊する事が出来ます。

これによって毛細血管の増殖からなる乳児血管腫を消す事が出来るのです。

実際はターゲットとする毛細血管が皮膚のどのくらいの深さに存在しているのか、大きさはどのくらいなのかによって、用いる波長やレーザーを当てる時間は異なってきます。

またいくら局所を狙って照射するとは言っても、多少正常の皮膚にもダメージを与えてしまうため、治療の際には痛みを伴う事もあります。

レーザーは効果の高い治療法ですが、

  • 何回か通う必要がある事
  • 正常皮膚にも多少のダメージを与えるため、軽い痛みを伴う事がある

がデメリットとして挙げられます。

また局面型では液体窒素による凍結療法によって退縮が早まる事が報告されており、液体窒素による凍結療法も検討される事があります。

液体窒素は-196℃という極めて低温な液体であるため、これを病変部にスプレー噴射したり、綿球に液体窒素を付けて病変部にあてたりする事で乳児血管腫を構成している毛細血管を凍結させ、壊死させる事が出来ます。

液体窒素による凍結療法は通常、1~2週間間隔で行われます。

液体窒素による凍結療法は、液体窒素を当てる時に多少の痛みを伴う可能性があります。また治療周辺の皮膚にもダメージを与えてしまい、皮膚の色素沈着などを引き起こしてしまうリスクもあります。

また腫瘤型でかなり大きく、目や口・鼻などをふさいでしまう場合には実害があるため、より積極的に治療を行う必要があり、

  • 持続圧迫療法
  • ステロイド療法

などが行われる事もあります。

また以前より乳児血管腫に「プロプラノロール」というお薬が有効である事が報告されていました。プロプラノロールはβ遮断薬と呼ばれ、血圧を下げたり脈拍数を下げたりするはたらきがあるため、主に高血圧や心臓疾患の方に用いられていましたが、これを乳児用にした、「ヘマンジオルシロップ」が2016年に発売され、最近では乳児血管腫の治療に用いられています。

【乳児血管腫の治療法】

・乳児血管腫は良性腫瘍だが見た目の問題や瘢痕が残る事から積極的に治療される
・基本的にはレーザー照射を行う
・局面型には液体窒素による凍結療法が用いられる事もある
・腫瘤型には持続圧迫療法やステロイド療法が用いられる事もある
・ヘマンジオルシロップ(プロプラノロール)が最近では用いられている

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