エボラ出血熱で生じる症状にはどのようなものがあるのか

エボラ出血熱(Ebola Hemorrhagic Fever)は、「エボラウイルス」という危険なウイルスに感染してしまう事で生じる疾患です。

エボラウイルスに感染すると、その致死率は40~90%と言われています。型に致死率に違いはあるものの、極めて危険性の高い感染症の1つなのです。

エボラウイルスでは様々な症状が生じますが、特に発症早期は他の疾患との見分けがつきにくく、見極めが困難だという特徴があります。また「出血熱」という名前がついているものの、必ず出血症状をきたすわけでもありません。

しかし一方でより早期にエボラウイルス感染症だと診断をつける事は、治療を早期にはじめ、また感染を拡大させないためにも極めて重要な事になります。

エボラ出血熱ではどのような症状が生じるのでしょうか。

ここではエボラ出血熱で生じる症状についてお話させていただきます。

1.エボラ出血熱とは

エボラ出血熱はウイルス感染症の1つです。出血症状を来たす事が多いため「出血熱」という名称がついていますが、出血症状を必ず伴うわけではありませんので「エボラウイルス病」と呼ばれる事もあります。

エボラは1976年にアフリカで初めて発見されました。中央アフリカのコンゴ民主共和国にあるエボラ川流域から流行が始まったため、「エボラ出血熱」と呼ばれるようになりました。その後も数年置きに同地域付近で流行しています。

エボラ出血熱の怖いところは、その致死率の高さにあります。同じウイルス感染症でも「風邪」や「胃腸炎」は、たとえ感染しても「死」まで至る事は稀です。しかしエボラウイルスに感染した場合の致死率は40~90%と報告されています。死の恐れもある極めて危険性の高いウイルスなのです。

例えば2014年の流行ではエボラ出血熱は中央アフリカの計3か国に猛威を振るい、総感染患者数は28,616名、総死亡数は11,310名と報告されています(WHOの報告より)。

ちなみにエボラウイルスには現在のところ5つの型が見つかっており、それぞれで致死率が異なります。最も致死率が高いのは「ザイールエボラウイルス」で致死率は90%にも達します。一方で「レストンエボラウイルス」はヒトには病原性を示さないと考えられています。

なぜ同じウイルスなのに「風邪ウイルス」などと異なってこんなにも危険なのでしょうか。

この致死率の高さはエボラウイルスが「免疫回避機構」を有しているためです。免疫回避機構とは「免疫から逃れてしまうシステム」の事です。

エボラウイルスは、私たちの身体が持っている免疫システムをうまくくぐりぬけ、逆に免疫を操作してしまうという恐ろしい特徴があるのです。

免疫というのは、私たちの身体に異物(細菌やウイルスなど)が侵入してきた時に、それを排除するシステムの事です。異物が体内に侵入してきた時、免疫細胞は速やかにそれを感知し、攻撃します。このような免疫システムによって私たちの身体は守られているのです。

例えば身体の中に細菌が侵入してきて肺炎になりかけたとします。この時、ある免疫細胞が「身体に細菌が侵入してきた!」とすぐに感知します。するとその情報を細菌を攻撃する能力を持った別の免疫細胞に伝えます。情報を受け取った免疫細胞は肺に向かい、侵入した細菌を攻撃します。これによって細菌は死滅し、細菌から身体を守る事が出来るのです。

しかしエボラウイルスではこの免疫が十分に機能しません。

エボラウイルスは身体に侵入する異物の側でありながら、免疫システムを回避し、逆に免疫システムを操作してしまうのです。

エボラウイルスの免疫回避機構の詳細な機序は解明されていませんが、エボラウイルスは体内に侵入すると、まずマクロファージ・樹状細胞といった免疫細胞に感染する事が分かっています。

エボラウイルスが感染したマクロファージ・樹状細胞は本来の機能を失ってしまい、サイトカインという物質を大量に放出するようになります。サイトカインとは本来は他の細胞に様々な指令を送るための物質です。本来であれば必要な分だけ分泌されるサイトカインがどんどんと分泌されるため、身体には様々な異常が生じます。

サイトカインには様々な作用があります。過剰に分泌されると、血液が固まりにくくなって出血しやすくなってしまったり、炎症が誘発されて身体の様々な臓器に障害を来たすようになってしまうのです。

これによって出血量が多くなったり、多臓器不全になれば死に至ります。

ウイルスは病原体の危険性によって「バイオセーフティレベル(BSL:Bio Safety Level)」が決められています。レベル1がもっとも感染力が低く、レベル4が最強の感染力になりますが、エボラウイルスはBSL4に設定されています。

【バイオセーフティレベル4】
ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こし、容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす。有効な治療法・予防法は確立されていない。多数存在する病原体の中でも毒性や感染性が最強クラスである。

有効な治療法も存在しないため、エボラウイルスに感染してしまったら、他の人に移さないように注意した上で対症療法(解熱剤や止血剤投与、輸液など)を行ない、自分の力でエボラウイルスをやっつけるしかありません。

もっとも効果があるのが「エボラ出血熱に感染して回復した人の血を輸血する事」だと言われています。一度エボラ出血熱に感染した人は血液中にエボラウイルスの抗体があるためです。

治療薬の開発も進められていますが、今のところまだ確立されているものはありません。インフルエンザ治療薬の一部がエボラウイルスにも効果がある事が調査にて確認されており、研究が進められています。

しかし現時点で有効な治療法は乏しく、かつ致死率も高い疾患であるためエボラウイルスは何よりも予防する事が重要になります。

2.エボラ出血熱で生じる症状の特徴

エボラ出血熱ではどのような症状が生じるのでしょうか。またどのような症状からエボラ出血熱を疑えばよいのでしょうか。

エボラ出血熱の症状発現の怖いところに、

  • 潜伏期が長い
  • 初期は他のウイルス感染と見分けが付かない

という特徴があります。

体内にエボラウイルスが侵入してから症状が発症するまでの期間を「潜伏期(せんぷくき)」と呼びます。エボラ出血熱の潜伏期は通常は1~2週間ほどと言われていますが、2日~3週間という例もあり、症例によって幅があります。

エボラウイルスは今までのところは日本で確認されていないウイルスですが、感染してから2~3週間経たないと発症しないという事もあるわけです。つまり、流行地域の中央アフリカに行った人が日本に帰国してしばらくしてから症状が出るという事は十分にあり得ます。

遠いアフリカで流行しうる感染症であるため、日本人の多くが関心を持っていませんが、日本に持ち込まれる可能性がないわけではないのです。

またもう1つの特徴として、「初期症状は他のウイルス感染と見分けがつかない」という点が挙げられます。

エボラ出血熱の代表的な初期症状は、

  • 発熱
  • 倦怠感、筋肉痛
  • 頭痛、喉の痛み

などであり、これらは風邪症候群やインフルエンザなどでも認められるありふれた症状です。

この初期症状が出た時点では「ただの風邪かな」と考えてしまいやすく、安易に感染者と接触してしまうと、どんどんと感染が広がっていってしまいます。

もし日本にエボラウイルスが持ち込まれた場合、最初にこのような初期症状が出現して「これはエボラ出血熱だ!」と気付く事はなかなか難しいでしょう。

普通の風邪として治療される可能性が圧倒的に高く、感染者への接触も行われる可能性が非常に高いのです。

初期症状からエボラ出血熱と診断する事は極めて困難です。

「エボラの流行地域から帰国したばかり」で「風邪症状が認められた」としたら、「もしかしたらエボラかもしれない」という目を持つ事が重要です。

3.エボラ出血熱の症状

エボラ出血熱ではどのような症状が生じるのでしょうか。

エボラ出血熱の典型的な経過と代表的な症状について紹介します。

Ⅰ.初期症状

エボラウイルスは中央アフリカのコウモリに寄生しているのではないかと考えられています。そのコウモリに触れてしまったり、あるいはコウモリを触れた動物(サルやヤマアラシなど)やコウモリが触れた場所(木や岩など)を触れてしまう事でヒトに感染します。

エボラウイルスに感染すると、1~2週間ほどで症状が現れはじめます。

初期症状として多いのは、

  • 発熱
  • 倦怠感、筋肉痛
  • 頭痛、喉の痛み

などの全身症状、上気道症状です。

これは風邪などの一般的な感染症でも生じる症状であり、この時点でエボラ出血熱と気付くのはなかなか難しいところがあります(エボラが流行している地域・時期であれば気付けるとは思います)。

エボラ出血熱は症状が現れていない間(潜伏期)は感染力がありませんが、初期症状が現れはじめると感染力を持ち始めます。この初期症状しか出ていない時期はエボラ出血熱だと気付かれにくいため、もっとも感染が広がりやすい時期になります。

Ⅱ.その後の症状

初期症状をきたしてから更に症状が進行すると、

  • 胃痛、嘔吐、下痢
  • 発疹

といった症状が出現するようになります。

ただの風邪だと思っていたら、胃腸の症状も出てきて皮膚症状も出てきます。この時点では「どうもただの風邪ではなさそうだ」と気付き始めます。

更に、

  • 肝機能の異常
  • 出血(口、耳、鼻、目や皮膚、消化管などから)

が生じるようになると「エボラ出血熱ではないか」とほとんどの人が気付くようになります。

肝機能の異常は採血でも確認できますが、身体所見としては「黄疸(皮膚が黄色くなる事)」から疑う事が出来ます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする