自分に合わないお薬が分かる!?DLST検査の有用性と仕組み

DLST検査(薬剤誘発性リンパ球刺激試験)は、病院で行われる血液検査の1つです。

難しい名称のためどのような検査なのかイメージしずらいのですが、簡単に言えば「あるお薬が自分に合わないかどうかを判定する検査」になります。

世の中にはたくさんのお薬があります。どのお薬も患者さんの役に立つために作られているものですが、どんなに良いお薬でも人によっては身体に合わずにアレルギー反応が出てしまう事はあります。

DLST検査はそのお薬によって身体がアレルギー反応を起こさないかを血液検査によって判定できます。

お薬を服用している方というのは非常に多くいらっしゃいます。特に高齢者の方などでは、毎日いくつものお薬を服用している事も珍しくありません。たくさんのお薬を服用していると、身体にお薬によるアレルギー反応(薬疹や肝機能障害など)が出てしまった時、「一体どのお薬が悪さをしているのか」を見分けるのが難しい時があります。

このような時に役立つのがDLST検査なのです。

ここではDLST検査について、どのような検査でどのような仕組みでお薬と身体の相性を判定しているのかを詳しく説明させていただきます。

1.DLST検査とは

DLST検査とはどのような検査なのでしょうか。

DLST検査(Drug-induced Lymphocyte Stimulation Test:薬剤誘発性リンパ球刺激試験)は、簡単に言えば「お薬が身体に合わないものではないかを判定する検査」になります。

より具体的に言うと、そのお薬を服用する事によって患者さんの身体にアレルギー反応が生じないかどうかを調べる検査です。

アレルギー反応は、日常で接する様々な物質が原因となりえます。お薬もその1つですが、他にも食べ物や自然にある物質(花粉、虫など)、化学的に合成された物質(化粧品やサプリメントなど)、ストレスなど多岐な原因がありえます。

様々なものが原因となって生じる反応であるため、時にその原因を特定する事に苦慮する事もあります。

例えアレルギー反応が生じても、それが身体に大きな支障を来たさないような軽度のものであればまだ良いのですが、全身の皮膚に炎症が生じたり、肝臓などの臓器が障害を受けたりといった強いアレルギー反応が生じる場合、その原因物質を正確に特定し、速やかに対処を行う事は非常に重要です。

しかしアレルギーの原因というのは多岐にわたるため、はっきりと「これが原因だ!」と特定するのはなかなか難しいのが現状です。

アレルギーが生じた時、

「お薬も服用しているけども、種類もいくつもあるからどれが原因か分からない」
「お薬ではなく、最近摂り始めたサプリメントが原因かもしれない」
「いや、最近環境が変わったからハウスダストやストレスで生じてるのかもしれない」

私たちは毎日生きている中で多くのものに接し、様々なものを摂取していますから、このように原因を特定するのはなかなか難しいのです。

アレルギー反応が生じていて、あるお薬が原因である可能性はあるんだけど、それ以外のものである可能性もある。何が原因なのかしっかりと確認しておきたい。

このような時に、疑われているお薬と患者さんの血液を混ぜる事でアレルギー反応が出るのかを確認し、そのお薬が本当にアレルギーを引き起こしているのかを特定するのがDLST検査になります。

世の中にはたくさんのお薬があります。今までにお薬を一回も服用した事がない方というのはいないのではないでしょうか。風邪薬や胃腸薬のような誰もが服用した事があるお薬をはじめ、降圧剤、脂質異常症治療薬、抗菌薬、鎮痛剤、抗うつ剤などなど、世の中には数えきれないほどのお薬が存在しています。

このお薬はどれもが適切に使えば身体にとって役立つものではありますが、人によってはそのお薬を服用する事でアレルギー反応が出てしまう事もあります。どんなに優れたお薬もアレルギーを引き起こす可能性はあり、どのお薬がどの人にアレルギーを引き起こすかのは事前に知る事は出来ません。

またアレルギー反応でもすぐに出るようなタイプ(即時型アレルギー)であれば分かりやすいのですが、ゆっくり出るタイプ(遅延型アレルギー)であったり、目に見えない部位(臓器など)に生じる場合では、アレルギーが生じている原因が何なのかを特定するのが難しい事があります。

例えば数カ月前に高血圧と診断され、降圧剤(血圧を下げるお薬)を飲み始めた方がいるとしましょう。

数日前に会社の健康診断をしたところ、肝機能が悪くなっている事が分かりました。何か思い当たる節がないかを考えてみると、

「そういえば最近、お酒の量が少し増えているなぁ」
「食生活も乱れている時があったから、それも原因かなぁ」

といくつか考えられる原因がありました。

しかし同時に「そういえば数カ月前から血圧を下げるお薬を飲み始めたんだった」という事にも気づきました。

内科で超音波検査などをして肝臓を見てもらいましたが、果たしてどれが原因で肝臓の数値が高くなっているのかをはっきりと特定する事は出来ませんでした。

このような場合、検査以外の方法で原因と特定するとなると、1つずつ地道に可能性を潰していく他ありません。

例えば、まずは降圧剤をやめてみて、それでしばらく経ってから血液検査をして肝機能が正常化しているのかを見ます。肝機能が改善していればお薬が原因である可能性が高いと言えますし、変わりなかったり悪化していればお薬が原因ではないと考えられます。

そうなると次はお酒をやめてみて、しばらくしてから血液検査をする・・・。

このように1個ずつ確認していく必要があるのです。更にそれで肝機能が改善したとしても、「確実にこれが原因だった」とまではなかなか言えません。しばらく様子をみている中で、他の要因が生じて肝機能が改善する事もありうるわけですから、「これが原因である可能性が高いかな」というところまでしか言う事は出来ないでしょう。

対してDLST検査は、お薬と患者さんの血液を混ぜる事でアレルギー反応が生じるのかを見る検査になり、効率的にそのお薬がアレルギーの原因なのかを確認する事が出来るのです。

2.アレルギーって何?

DLST検査は、お薬によってアレルギー反応が生じているのかどうかを確認する検査ですが、そもそもアレルギーって何でしょうか。

みなさんにとって「アレルギー」というと、

  • 花粉症(アレルギー性鼻炎)
  • アトピー
  • 蕁麻疹(じんましん)
  • 喘息

などが頭に浮かぶのではないでしょうか。

確かにこれらの疾患は代表的なアレルギー疾患であり、身体にアレルギー反応が生じる事で様々な症状を引き起こしています。

しかし、そもそもアレルギーとはどのような反応の事なのでしょうか。

アレルギーというのは「免疫が誤作動している状態」だと言う事ができます。

免疫(めんえき)というのは、身体が持っている防御システムの事です。私たちの身体は免疫と呼ばれる防御システムが備わっており、身体の中に有害な異物が侵入するとそれを攻撃して排除しようとする仕組みがあります。

例えば身体の中にウイルスや細菌が侵入すると、これらの病原体が感染してしまった細胞を免疫は攻撃します。ウイルスや細菌は体内で細胞に感染すると、そこからどんどん増殖し、身体に害を与えてしまいます。免疫が存在するおかげで私たちの身体は病原体が侵入してきても、何とかそれを撃退する事が出来るのです。

しかし、免疫によって病原体をやっつける際に、感染細胞に免疫が攻撃する事によって炎症が生じるため、身体が発熱したり痛みが出たりしたりと一時的に苦しい症状が出てしまう事もあります。

ちなみにこの免疫はとても精巧にできており、身体にとって害となる異物のみを認識して攻撃し、一方で身体にとって害とならないものや自分の身体の細胞などは攻撃しません。

しかしこの免疫システムが誤作動してしまう事があります。

本来であれば身体にとって無害なものや自分の細胞などを「これは敵だ!」と免疫が感知して攻撃してしまう事、これが「アレルギー反応」になります。

例えば花粉症は、本来であれば私たちの身体にとって無害な「花粉」に対して免疫が「これは排除すべき敵だ!」と認識してしまう事で生じます。この結果、免疫は身体に花粉が入ってくると、本来攻撃する必要のないものであるにも関わらず激しく攻撃をします。

すると花粉が侵入した部位(目や鼻など)で炎症が起こり、充血や流涙、鼻水、くしゃみ、鼻閉といった症状が生じるわけです。

お薬でも同様の事が生じる可能性があります。

お薬の成分は、本来身体にとって無害なもので作られています。そのため通常の免疫であれば、お薬が身体の中に侵入してきても、これを攻撃する事はありません。

しかし何らかの原因で免疫が誤作動を起こしてしまうと、お薬の成分に対して「これは敵だ!」と認識するようになってしまい、お薬に攻撃を始めてしまいます。

お薬の成分は血液にのって全身をめぐるため、皮膚の毛細血管内で免疫がお薬の成分を攻撃すれば蕁麻疹が生じます。またお薬は肝臓で代謝されますが、そこで免疫がお薬の成分を攻撃すれば肝炎が生じます。

3.DLST検査の仕組み

DLST検査はどのようなメカニズムで、お薬によって身体にアレルギー反応が起きないかを調べているのでしょうか。

簡単に言えばDLST検査は、あるお薬の成分とある人の免疫細胞を混ぜる事によって、その免疫細胞がお薬の成分に対して攻撃をしないかを見る検査になります。

DLST検査がどのようにしてアレルギー反応を判定しているのかをここでは見ていきましょう。

DLST検査は、正確には「薬剤誘発性リンパ球刺激試験」と言います。

この名称からわかるように薬剤によってリンパ球が刺激されるかどうかを見る試験です。リンパ球というのは、免疫細胞の一種になります

本来、お薬は身体にとって無害なものですから、お薬を感知してもリンパ球は攻撃を開始しない(刺激されない)はずです。しかしお薬の成分に対してリンパ球が「この物質は敵だ!」と認識すれば、リンパ球は増殖を開始し、このお薬の成分を攻撃しようとします。

この時、リンパ球がもし増殖を始めるとなると、新しいリンパ球細胞のDNAを作るために、チミジンという物質がたくさん使われます。

これを利用し、リンパ球とお薬を混ぜたところにチミジンも入れ、チミジンがどれくらい減ったのかを測定する事で、リンパ球の増殖の程度を推測するのがDLST検査の仕組みです。

チミジンが減っていれば減っているほど、リンパ球が活発に増殖している、つまりお薬の成分によってアレルギー反応を引き起こされている、と考えるのです。

DLST検査の最大のメリットは、患者さんの身体に負担をかけずに行える点になります。

患者さんの血液を採取するという点では患者さんに若干の苦痛を与えますが、アレルギー反応が生じるかどうかの判定は、患者さんの身体の外で行われるため、患者さんに苦痛を与えません。

DLST検査と同様にアレルギー反応を見る検査に、

  • パッチテスト
  • チャレンジテスト(内服誘発試験)

などがあります。

パッチテストは、そのお薬の成分を身体に貼る事で、皮膚にアレルギー反応が生じるかをみる検査です。チャレンジテストも、実際にお薬を服用してもらう事で、身体にアレルギー反応が生じるかをみる検査です(安全性を考え、服用する量は可能な限り少量になります)。

いずれもアレルギーの判定には有用な検査ですが、患者さんの身体を使って検査をするため、アレルギー反応が生じた場合には患者さんに苦痛を与えてしまう検査になります。

DLST検査はこのような負担を患者さんに与えないという点では非常に優れた検査になります。

一方でDLSTのデメリットとしては、

  • 感度がそこまで高くない事
  • 検査代がやや高い事
  • 判定まで時間がかかる事

が挙げられます。

感度というのは、アレルギーがあった際に検査で陽性となる割合の事です。当然、感度が高い方が精度の高い検査になるわけですが、DLSTの感度は40~60%程度と決して高くはありません(理由と対策については後述します)。

またDLST検査は、

リンパ球刺激試験(検査代) 345点
免疫学的検査判断料(検査結果を医師が判定する料金) 144点

 の、計489点(4890円)がかかります(平成29年6月現在)。実際に患者さんが負担するのは全額ではなく、1割負担であれば489円、3割負担であれば1467円とすごく高いわけではありませんが、他の検査と比べれば料金は高めです。

また

感度というのは、アレルギーがあった際に検査で陽性となる割合の事です。当然、感度が高い方が精度の高い検査になるわけですが、DLSTの感度は40~60%程度と決して高くはありません(理由と対策については後述します)。

またDLST検査は、結果を得るまでに1~2週間ほどかかります。

4.DLST検査をするに当たっての注意事項

最後にDLST検査を検討している方に知っておいて頂きたい注意事項をいくつか紹介します。

Ⅰ.偽陰性と偽陽性

どんな検査でも、

  • 偽陰性(本当はその疾患がある(陽性)のに、「陰性」と出てしまう事)
  • 偽陽性(本当はその疾患はない(陰性)のに、「陽性」と出てしまう事)

が生じる可能性があります。

検査の精度を上げるため、偽陰性や偽陽性が生じやすい状況を知っておく必要があります。

例えば、偽陰性になりやすい状態としては、ステロイド剤、抗腫瘍剤、免疫抑制剤などを服用している場合です。

反対に偽陽性となりやすい状態としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)やSH基を持つお薬(リマチル、チオラなど)が挙げられます。

NSAIDsはいわゆる「痛み止め」「熱さまし」の事であり、服用している方は少なくありませんので、服用している場合は事前に医師に申告する必要があります。

Ⅱ.感度は高くない

DLSTは感度が低いという欠点があります。感度は40~60%ほどという報告が多く、ここからDLST検査が陰性(マイナス)であるからといって、「このお薬が原因ではない!」と確実には言えないところがあります。

この理由として、お薬の成分そのものではなく、お薬の成分が身体で代謝されて産生される成分に対して身体がアレルギー反応を来たす場合は、DLST検査では判定できないという事が挙げられます。

感度だけを見れば、パッチテストやチャレンジテストの方が高いとも言えますが、これらの検査は患者さんの身体を使って行う検査であり、DLSTと比べると安全性に劣るため一概にどちらが良いという事は言えません。

ただしDLST検査は検査する時期を適切にする事で精度は上記よりも高まるとする意見もあります(詳細は次項で説明します)。

Ⅲ.疾患によって検査をすべき最適な時期がある

DLST検査は、検査する時期を適切にする事で感度を上げる事ができると考えられています。

例えば、DIHS(薬剤性過敏症症候群)と呼ばれる薬疹では発症から2~6週間後など時間が経過してDLSTが陽性となる事が多く、TEN(中毒性表皮壊死症)やSJS(Stevens-Johnson症候群)と呼ばれる薬疹は早期から陽性になりやすい傾向があります。

Ⅳ.採取する血液量が多い

DLST検査は、患者さんのリンパ球とお薬を反応させる検査になります。

そのためある程度のリンパ球を採取する必要があります。具体的には500万個ほどのリンパ球が必要と考えられており、血液量にすると約5ml前後になります。

血液中の白血球数が少ない方は更に必要な血液量が多くなります。リンパ球は白血球の1つですので、白血球数が少ない方は5mlでは500万個のリンパ球が入っていないためです。

更にこの5mlは、お薬毎に必要です。

つまり、疑わしい薬剤が2つあるような場合は10ml、3つあるような場合は15ml必要になるという事です。

Ⅴ.即時型アレルギー反応には向かない

アレルギーにもいくつかのタイプがあります。

代表的なものとしては、

・Ⅰ型アレルギー:即時型アレルギー。アレルゲンに接してからすぐに症状が出る
・Ⅳ型アレルギー:遅延型アレルギー。アレルゲンに接してからしばらく経ってから症状が出る
(アレルゲン:アレルギーを引き起こす物質の事)

などがあります。

より具体的にいうと、即時型アレルギー(Ⅰ型アレルギー)は免疫細胞のうち主にB細胞のはたらきによって引き起こされます。花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息などの代表的なアレルギー疾患は、主にこのⅠ型アレルギーによって引き起こされます。

これに対して遅延型アレルギー(Ⅳ型アレルギー)は免疫細胞のうち主にT細胞のはたらきによって引き起こされます。接触性皮膚炎や薬疹などは、主にⅣ型アレルギーによって引き起こされます。

このうち、DLST検査はT細胞の反応をみる検査ですので、Ⅳ型アレルギーの特定に向き、Ⅰ型アレルギーの判定にはあまり向きません。

ただしⅠ型アレルギーはすぐに症状が出るため、検査をせずとも原因と特定しやすい事が多いため、困る事は多くはありません。

Ⅳ型アレルギーは数日~数週間経ってから症状が出るため、原因を特定できない事も多く、このような時にDLST検査は役立ちます。

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