チェーンストークス呼吸が生じる機序と認められる疾患

呼吸は外界の酸素を身体に取り込み、身体の二酸化炭素を外界に排出する行為です。

酸素は生体活動を効率的に行なうためには欠かす事は出来ません。私たちは酸素を利用する事で栄養素から効率的にエネルギーを取り出し、そのエネルギーを使って日々活動をしています。

そのため呼吸は私たちが生きるために必須の行為だと言っても良いでしょう。

通常、呼吸は一定のリズム・一定の深さで行われています。もし呼吸の回数・深さに異常が生じてしまうと、生命維持に必要な酸素の取り込みが十分に出来なくなってしまう可能性があり、これは大きな問題となります。

そのため呼吸の異常というのは発見したら、早急に適切な対策を取らないといけません。

呼吸の異常の1つに「チェーンストークス呼吸」という呼吸があります。

この呼吸はどのような状態で見られるのでしょうか。またチェーンストークス呼吸が認められたらどのような状態を考え、どのような対処を取るべきなのでしょうか。

ここではチェーンストークス呼吸について詳しく説明させていただきます。

1.チェーンストークス呼吸とは

チェーンストークス呼吸(CSR:Cheyne Stokes Respiration)は異常な呼吸の1つです。

チェーンストークス呼吸は、イギリスの医師であるジョン・チェーンとアイルランドの医師であるウイリアム・ストークスが発見した事から、両者の名前を取ってこのように命名されています。

ではチェーンストークス呼吸はどのような呼吸なのでしょうか。

チェーンストークス呼吸は、段々と深くなり、また段々と浅くなり、最後には無呼吸になる。そしてまた浅い呼吸が始まり段々と深くなり・・・、という周期を繰り返す呼吸です。

この1周期はだいたい1~2分くらいで、無呼吸と漸増・漸減の呼吸を繰り返すため「交代性無呼吸」とも呼ばれています。

主に睡眠時など覚醒レベルが低下している時に出現する呼吸になります。

2.チェーンストークス呼吸が生じる機序

チェーンストークス呼吸はどうして生じるのでしょうか。

チェーンストークス呼吸は、身体に二酸化炭素が溜まりやすい方に生じる呼吸です。

私たちは普段、意識しなくても呼吸をする事ができていますが、これは脳幹にある「呼吸中枢」が適切に呼吸をコントロールしているからです。

呼吸中枢がどのように呼吸をコントロールしているのかというと、呼吸中枢は血液中の二酸化炭素(CO2)の量を感知し、二酸化炭素の量に応じて呼吸を調整しています。

具体的には、

  • 二酸化炭素が多いと「二酸化炭素を吐き出さないと!」と判断して呼吸を増やす
  • 二酸化炭素が少ないと「二酸化炭素を排出する必要はない」と判断して呼吸を減らす

という調整が行われます。呼吸の回数・量は二酸化炭素を基準として調整されるのです。

通常の場合だとこれで呼吸は問題なく機能するのですが、普段から二酸化炭素が溜まりやすい病態の方は、呼吸中枢が二酸化炭素が高い状態に慣れてしまうため、問題が生じます。

このような状態が続くと呼吸中枢は「二酸化炭素濃度が高い状態が普通」と判断するようになってしまうのです。

通常であれば、二酸化炭素が溜まり過ぎて「もっと呼吸を増やさないと!」と判断すべき状態であっても、「このくらいの二酸化炭素濃度ならいつも通りだし問題ないだろう」とそのまま呼吸数を増やさずに様子をみてしまうようになってしまうのです。

呼吸というのは無意識で行われる事もありますが、自分で意識的に行う事も出来ます。意識がある日中は、呼吸中枢がこのような状態であっても自らの意識で呼吸を行えるため、まだ問題は少ないのですが、問題は意識が低下している夜間(睡眠時)です。

睡眠時に「意識的に呼吸をしている」という方はいないと思います。つまり睡眠中の呼吸は100%、呼吸中枢に任されています。

普段から二酸化炭素濃度の高い方の呼吸中枢は、二酸化炭素が多い状態に慣れてしまっていますから、二酸化炭素が高くて呼吸を増やさないとまずい状態になってもなかなか呼吸を増やしません。

それどころか、二酸化炭素が正常だと、「二酸化炭素が低くなりすぎたから呼吸を減らそう」と判断してしまいます。

これによって生じるのがチェーンストークス呼吸です。

チェーンストークス呼吸は、二酸化炭素が高い状態に慣れてしまった呼吸中枢が行ってしまう呼吸です。

二酸化炭素濃度が正常な時には、「いつもより二酸化炭素が低い」と判断して呼吸を停止してしまいます(無呼吸)。その結果少しずつ二酸化炭素濃度が高まってくると、「少し二酸化炭素が溜まってきたかな」と判断して少しずつ呼吸を始めます。

しかし二酸化炭素が十分に下がりきらないところで、「もう二酸化炭素は十分に下がった」と判断してしまい、再び呼吸を浅くして、最後はまた無呼吸に戻ってしまうのです。

このサイクルを繰り返すのがチェーンストークス呼吸の機序になります。

3.チェーンストークス呼吸はどのような時に現れるのか

チェーンストークス呼吸は、身体に二酸化炭素が溜まりやすい状態になっている方に認められる呼吸です。

通常、呼吸中枢は血液中の二酸化炭素の量に応じて呼吸を調整していますが、長期間身体に二酸化炭素が溜まっていると、二酸化炭素に対して呼吸中枢が鈍感になってしまい、その結果チェーンストークス呼吸が生じてしまうのです。

つまりチェーンストークス呼吸が認めらえるのは「身体に二酸化炭素が溜まりやすい状態」だという事です。この状態は、具体的にどのような疾患が該当するのでしょうか。

チェーンストークス呼吸が生じる代表的な疾患を紹介します。

Ⅰ.心不全

心不全は心臓の機能が低下してしまっている状態です。

心臓は血液を全身に送るはたらきがあります。血液は肺が取り込んだ酸素を全身に運んでくれるわけですので、心不全が生じると酸素が効率的に全身の細胞に送れないという事態が生じます。

また心不全が進行して肺に水が漏れ出してしまうと、呼吸自体も浅くなってしまい、余計に酸素を全身に送れなくなります。

そして身体の酸素が足りなくなるという事は、二酸化炭素が溜まってしまうという事です。そのため心不全の方ではチェーンストークス呼吸を認める事があります。

またチェーンストークス呼吸を認める心不全患者さんは、そうでない患者さんと比べると、予後が悪いという事も報告されています。

Ⅱ.脳血管障害(脳出血・脳梗塞)

脳梗塞や脳出血によって、呼吸中枢への血流が悪化し、呼吸中枢が低酸素状態になるとチェーンストークス呼吸を認める事があります。

脳梗塞とは脳の血管が詰まってしまい、その先の部位に血液を送れなくなってしまう事です。また脳出血とは脳の血管が破裂してしまい、破裂した周囲の脳に障害を与えてしまう疾患です。

いずれも脳のあらゆる部位に生じる可能性があり、呼吸中枢にも障害が生じる可能性もあります。

このような脳血管障害によって呼吸中枢が低酸素状態になると、呼吸中枢は二酸化炭素に対する感度が上がってしまい、チェーンストークス呼吸が出現しやすくなります。

Ⅲ.重篤な肺炎

重篤な肺炎が生じると、肺の本来の機能である「身体に酸素を取り込んで、二酸化炭素を排出する」という行為が行いにくくなります。

すると身体に二酸化炭素が溜まりやすくなりますので、呼吸中枢が過敏になりチェーンストークス呼吸が生じやすくなります。

Ⅳ.瀕死状態

命の危険にさらされているような瀕死状態の時は、呼吸機能も低下している事が多く、このような状態では身体の中の酸素が少なく、二酸化炭素が多くなってしまっています。

そのためこのような状態の時にもチェーンストークス呼吸は生じやすくなります。

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