柑皮症(かんぴしょう)が生じる原因と治療法

柑皮症(かんぴしょう:Carotenoderma)は、皮膚が橙黄色に変色してしまう色素異常症の一種です。

皮膚の色が黄色や橙(だいだい)色に変色している事に気付くと、「変な病気にかかったのではないか」と心配される方もいらっしゃいますが、柑皮症は人にうつるような疾患でもなく、また悪性の疾患でもありません。

基本的には予後良好な疾患です。

しかし、このような皮膚の色の変化はなぜ生じるのでしょうか。また皮膚の変色を治す方法はあるのでしょうか。

ここでは柑皮症について、その原因や治療法についてお話させていただきます。

1.柑皮症とは

柑皮症(かんぴしょう:Carotenoderma)は、通常は肌色であるはずの皮膚の色が、黄色~橙色に変色してしまう疾患です。

なぜこのような皮膚の色の変化が生じるのでしょうか。

柑皮症の皮膚色の変化は「カロチン」という色素が原因です。ちなみにカロチンは「カロテン」と呼ばれることもありますが、両者は同じ物質の事です。

カロチンは黄色~橙色をした色素です。主に緑黄色野菜に多く含まれており、摂取する事でビタミンAを作る原料となります。

何らかの原因で体内のカロチンの量が増えすぎると、余分なカロチンは皮膚に沈着するようになります。

これが柑皮症の正体です。

柑皮症は、体内で過剰になったカロチンが、皮膚に沈着する事で皮膚が変色してしまう疾患なのです。

通常、柑皮症は手のひら(手掌)や足の裏(足底)から始まる事が多く、次第に全身の皮膚に拡大していきます。

しかし何か困るような症状が生じるわけではなく、柑皮症は皮膚の色が変色するものの、それ以外に何か害となるような症状は生じません。

カロチン過剰が原因ですので、カロチンの量を適正にする方法が治療法になります。

では次に柑皮症の原因や治療法などについて、より詳しく見ていきましょう。

2.柑皮症の原因は?

柑皮症はどのような原因で生じるのでしょうか。

柑皮症は体内にカロチンという色素が過剰に蓄積されてしまう事が原因です。

カロチンは橙黄色の色素です。これが体内にたくさん溜まってしまうと、余分なカロチンは皮膚に沈着してしまうのです。すると、カロチンが沈着した皮膚は橙黄色に変色してしまうというわけです。

では身体の中にカロチンが溜まってしまう原因にはどのようなものがあるでしょうか。

柑皮症が生じる代表的な原因を紹介します。

Ⅰ.カロチンの過剰摂取

柑皮症が生じる原因の頻度として、もっとも多いのが「カロチンの過剰摂取」です。

カロチンは主に緑黄色野菜や海藻などに多く含まれます。特に黄色・橙色をした野菜はカロチンを多く含んでいる事が多いです。

具体的には、

  • ニンジン
  • トマト
  • みかん
  • さつまいも
  • 海苔

などはカロチンを豊富に含んでいる事が知られています。このような食べ物を過度に摂取し続ければ、体内のカロチン量も過剰になってしまいます。

例えばダイエットなどで極端な偏食をしていたり、野菜ばかり食べているような場合は、カロチンの摂取量が過剰になりやすくなり、柑皮症を発症してしまう可能性があります。

Ⅱ.肝機能障害

肝臓の機能が低下している方も柑皮症を生じやすくなります。

これはどうしてでしょうか。

私たちの身体においてカロチンはビタミンAを作る原料となります。そしてカロチンからビタミンAを合成する部位は「肝臓」です。

肝臓の機能が低下してしまうと、ビタミンAを合成する能力も低下してしまいます。すると原料であるカロチンがどんどんと溜まっていってしまうため、体内のカロチンの量は増えていきます。

するとビタミンAになれないカロチンは、皮膚に沈着してしまい、これによって柑皮症が生じてしまうのです。

Ⅲ.高脂血症

カロチンは脂溶性の色素になります。脂溶性とは「脂肪に溶けやすい物質」だという事です。

という事は身体の中に脂肪分がたくさんあると、その中にカロチンは入り込みやすいという事です。

健常の人よりも脂肪含有量が多い方は、その分カロチンを身体の中に溜め込みやすいため、柑皮症が生じやすくなります。

【柑皮症が生じる原因】

・カロチンが体内に過度に蓄積される事で発症する
・カロチンを豊富に含む食べ物を過度に摂取する事で生じる事がある
・肝臓機能の低下によって生じる事がある
・高脂血症や内臓脂肪蓄積によって生じる事がある

3.柑皮症に症状はあるのか

柑皮症にはどのような症状があるのでしょうか。何か困るような症状は認められるのでしょうか。

結論から言えば、柑皮症では特に問題となるような症状はきたしません。唯一の症状と言えば、「皮膚が橙黄色になってしまう」という美容的な症状です。

ちなみにこの皮膚の変色は、

  • 角質が厚い部位
  • 脂漏部位(皮脂の分泌が多い部位)

に生じやすいと言われており、発症初期では角質の厚い手のひらや足の裏が好発部位になります。

適切な治療が行われないと、皮膚の変色は次第に進行していき、全身の皮膚に至るようになりまう。

しかしこれによって皮膚に炎症が起きたり、癌化したりなどといった事はありませんし、当然、他者にうつるようなものでもありません。

【柑皮症の症状】

・皮膚の色が橙黄色に変色するが、そこに何らかの自覚的な症状が生じる事はない
・柑皮症は角質の厚い部位(手の平や足の裏など)や脂漏部位に生じやすい

4.柑皮症の治療法

柑皮症はどのように治療すれば良いのでしょうか。

まず、柑皮症に対する特効薬のようなものはありません。

柑皮症の治療で大切な事は、柑皮症が生じた原因を突き止め、その原因に応じた治療を行う事です。

例えばカロチンの過剰摂取が原因なのであれば治療は簡単です。食生活を改善し、カロチンの摂取量を適正に改善すればいいのです。

実際はこのカロチンの過剰摂取がもっとも多い原因になります。極端な食生活のかたよりや無理なダイエットが原因となっている事が多く、このような場合は食生活を適正にすることが大切です。

食生活が適正となり、摂取されるカロチンの量も適正となれば、柑皮症は数カ月もすれば改善します。

また肝臓の機能が低下している事によって柑皮症が生じているのであれば、治療は肝臓を保護したり肝機能を改善させることになります。肝臓を保護するようなお薬を使ったり、肝機能障害が生じている原因を突き止め、その原因に対する治療法を検討したりします。

高脂血症や内臓脂肪などの蓄積によって柑皮症が生じているのであれば、高脂血症の改善が治療になります。食事・運動療法を基本としつつ、場合によっては脂質を低下させる作用を持つお薬を服用する事も有効でしょう。

【柑皮症の治療法】

・原因によって治療法は異なり、原因を正確に突き止める事が最重要
・カロチンの過剰摂取が原因であれば、食生活を見直しカロチン摂取量を適正にする
・肝機能低下が原因であれば肝臓を保護するようなお薬を使ったり、原因となる肝疾患の治療を行う
・高脂血症が原因であれば食事・運動療法を行ったり、高脂血症の治療薬を服用する

5.黄疸と間違えないように注意!黄疸と柑皮症の見分け方

柑皮症と間違えやすい疾患に「黄疸」があります。

黄疸は「ビリルビン」という色素が皮膚に沈着する疾患で、柑皮症と同様に皮膚が黄色くなります。

ビリルビンは老化した赤血球が壊される時に出来る物質です。老化した赤血球は脾臓という臓器で壊されますが、この時、赤血球細胞内にあるヘモグロビンというたんぱく質が、ヘムという色素とグロビンというたんぱく質に分解されます。

その後、更にヘムからビリルビンに分解され、肝臓に運ばれます。肝臓に運ばれたビリルビンは胆汁と一緒に腸に分泌されます。

腸に分泌されたビリルビンは、そのまま便と一緒に排泄されたり、あるいは再吸収されてまた赤血球の材料となったりします。

黄疸は、この赤血球が壊されてビリルビンが排泄される流れのどこかに異常が起こると発症します。

多いのは、肝臓や胆道系が障害される事によって、ビリルビンが腸に分泌されなくなってしまうケースです。この場合、腸に行けないビリルビンは皮膚や眼球の細胞に沈着してしまい、皮膚や目が黄色くなります。

症例によっては柑皮症と黄疸の見分けが付きにくいケースもありますが、ほとんどの場合両者の鑑別は難しくありません。

まず原因としてみると、柑皮症の場合の多くはカロチンの過剰摂取となります。一方で黄疸の場合は肝機能や胆道系の障害がある場合に生じる事が多くなります。

また皮膚の変色が起こる部位ですが、柑皮症は角質が厚い部位や脂漏部に多く、特に初期には手のひらや足の裏に生じやすいのが特徴です。一方で黄疸は、まず眼球に生じやすい事が知られています。これはビリルビンが弾性繊維と親和性が高いためです。

ちなみに柑皮症では眼球の変色は生じないため、眼球の変色があるかどうかは両者を見分けるためには重要な所見です。

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