消毒剤のイソジン、アルコール、ヒビテンはどのような違いがあるのか

病院で何か処置をしてもらう時、処置の前に「消毒」が行われる事があります。

消毒に使われるお薬はいくつか種類がありますが、

  • イソジン(ポビドンヨード)
  • アルコール(エタノール)
  • ヒビテン(クロルヘキシジン)

などが代表的です。以前は茶色い消毒液であるイソジンが多かったのですが、最近は見かける事が少なくなってきました。その代わり、透明な消毒液であるヒビテンを見かける事が増えてきました。

また血液検査などでは、アルコール綿で消毒される事が一般的ですが、なぜイソジンではないのでしょうか。

このように消毒液にはいくつかの種類がありますが、それぞれどのように違うのかというのは、あまり知られていないように思います。

医師や看護師さんなど、普段からこの消毒液を使っているような方々でさえ、あまり分かっていない事もあるほどです。

ここではそれぞれの消毒液の特徴と違い、どのような時にどのような消毒液を使うのが良いのかについて紹介させていただきます。

1.持続性に優れる「イソジン」

イソジン(ポビドンヨード)は1959年にアメリカで開発された消毒液です。茶色い液体で、消毒液と言えば「イソジン」が有名ですので見た事がある方も多いでしょう。

イソジンを皮膚に塗ると、ヨウ素を遊離します。ヨウ素(I2)は水(H2O)と反応して殺菌作用のある物質を作ります。

H2O + I2 → H2OI+ + I-

これによって生成されたH2OI+が殺菌作用を有します。

H2OI+は細菌やウイルスの表面にある膜タンパクに作用する事で、細菌・真菌・ウイルスを殺菌すると考えられています。

イソジンの長所は、持続力と殺菌作用の強さになります。

イソジンは、塗布してから6時間ほどは殺菌作用が持続すると言われています。また同種の消毒液と比べても殺菌作用は強めです。

消毒液を塗る時、殺菌したい微生物というのは、

  • 細菌
  • 真菌(いわゆるカビ)
  • ウイルス
  • 芽胞形成菌

などが挙げられます。

このうち、特に殺菌が難しいのが芽胞形成菌です。芽胞形成菌は細菌なのですが、「芽胞」という硬い膜を張っているため、簡単に殺菌する事が出来ないのです。

イソジンは一般細菌、真菌はもちろんの事、一部のウイルス、一部の芽胞形成菌にも殺菌作用を発揮します。

イソジンの欠点として、即効性に乏しい事と消毒の際に色がついてしまう事が挙げられます。

イソジンを塗った後、1~2分ほどで殺菌作用が最大になるため、処置をするのは1~2分待ってからになります。塗ってすぐに処置を行う事は出来ません。

また茶色の液体ですので、消毒をした部位が茶色くなってしまいます。色消し用の消毒剤としてハイポアルコール(チオ硫酸ナトリウム)もありますが、色消しのためにもう一回塗らないといけないという手間がかかります。

イソジンは殺菌作用が長時間にわたって続くため、処置が長引き、またしっかりと消毒したい時に使われます。

具体的には手術を行う際によく用いられます。これは手術は短時間では終わらないためと、身体の中に菌が入り込まないようにしっかりと消毒する必要があるためです。

一方で血液検査や予防接種などの簡単な処置は、持続力は必要ないため、イソジンはあまり用いられません。

しかし中心静脈穿刺など、処置に時間を要する可能性が高い場合はイソジンが用いられる事があります。

【イソジンの特徴】
即効性は乏しい(塗ってから1~2分かかる)
・持続力に優れる
・殺菌効果は強い
・皮膚に色がついてしまうため、色消し用の消毒液(ハイポアルコール)が必要

2.即効性に優れる「アルコール」

アルコールも古くからある消毒液です。消毒目的だけでなく、飲用にも用いられていますね。消毒用に用いられるアルコールは60~80%と高濃度になります。

アルコールは菌の細胞壁を破壊したり、たんぱく質を変性させる事で殺菌作用を発揮します。

アルコールの長所は即効性にあります。塗ってすぐに殺菌されるため、すぐに処置を行いたい場合に適しています。

アルコールの弱点は、持続力がない事です。アルコールを塗ってもすぐにアルコールの成分は蒸発してしまいます。そのため、長時間の処置になる場合には途中で殺菌作用が切れてしまうのです。

またイソジンと比べると一般細菌や真菌、一部のウイルスには効果は認めるものの、芽胞にはほとんど殺菌効果は認めません。

そのため、アルコールは採血のように短時間で終わる処置をする際に向いている消毒液になります。

【アルコールの特徴】
即効性に優れる
・持続力は乏しい
・殺菌効果はイソジンと比べるとやや弱め

3.万能選手の「ヒビテン」

ヒビテン(クロルヘキシジン)は1962年に発売された消毒液で、万能型の消毒液です。

ヒビテンは、菌の細胞膜に障害を与え、細胞中の物質を漏出させる事で殺菌作用を発揮すると考えられています。

ヒビテンは即効性も持続性もあります。塗ってすぐに殺菌効果が得られ、かつその効果は長く続きます。イソジンとアルコールの良いところを取り出したような理想の消毒液と言えます。

短所としては、殺菌作用がやや弱い事と、値段が高い事が挙げられます。

一般細菌、真菌と一部のウイルスに殺菌作用を示しますが、芽胞形成菌にはほとんど効きません。またイソジンやアルコールと比べて、効くウイルスの種類も少なめになります。

【ヒビテンの特徴】
即効性に優れる
・持続力にも優れる
・殺菌効果はアルコールと比べてもやや弱め
・値段が高い

4.消毒液の使い分け

以上から、主要な3つの消毒液の使い分けについて考えてみます。

手術などで長時間、殺菌効果を持続させ、かつしっかりと殺菌したい場合にはイソジンが良いでしょう。イソジンが手術時の消毒に使われているのはこのためです。

殺菌効果が短時間で良い採血や注射などはアルコールが良いでしょう。アルコールは即効性があるため塗ってからすぐに処置が行えます。また針を刺す時と抜く時に殺菌されていればよいため短時間の殺菌で問題ありません。

処置にある程度の時間はかかるけども、イソジンほど強力に殺菌しなくても大丈夫である場合にはヒビテンも選択肢になります。ヒビテンはイソジンよりも即効性があるため、すぐに処置を始められる他、皮膚に色がつかないため、色消しをする手間は省けます。

このように医療者は消毒液を使い分けているのです。

5.それぞれの消毒液が効く菌と効かない菌

毎年、様々な病原体の感染が流行します。

それぞれの菌に対して、各消毒液は効くのでしょうか。

Ⅰ.インフルエンザウイルス

毎年冬になるとインフルエンザが流行します。

インフルエンザウイルスに対しては、

  • イソジン
  • アルコール
  • ヒビテン

のいずれも殺菌作用があります。

インフルエンザウイルスは「ウイルス」の一種ですが、ウイルスを消毒液で殺菌する際に重要なのは、ウイルスに「エンベロープ」が存在するかどうかです。

エンベロープはウイルスの外側にある膜状の構造物ですが、このエンベロープがある方が消毒液は効きやすいという特徴があります。

インフルエンザウイルスはエンベロープを持つため、上記の消毒液はすべて効果があります。

Ⅱ.ノロウイルス

ノロウイルスは急性胃腸炎を引き起こすウイルスです。

ノロウイルスには、

  • イソジン

が効果を発揮しますが、

  • アルコール
  • ヒビテン

では殺菌できません。

これはノロウイルスにはエンベロープがないためです。エンベロープのないウイルスは殺菌が難しくなり、上記の消毒液の中ではイソジンでないと消毒できません。

また上記以外に有効な消毒液としては、「次亜塩素酸ナトリウム」が挙げられ、臨床現場でもノロウイルスの除菌のために用いられています。

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